「吉永小百合、松田優作の映画は全て観たい そういう人の為の映画だと思います」華の乱 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
吉永小百合、松田優作の映画は全て観たい そういう人の為の映画だと思います
1988年公開
深作欣二監督作品
まずそれに驚かされます
あの仁義なき戦いの監督がこのような映画を撮るんだと
吉永小百合主演映画なら撮ってみたい、深作欣二監督にすらそう思わせる程なのでしょうか?
しかも松田優作が相手役ならどうしても撮りたいとなるのは当然でしょう
しかし、そもそもなんで製作側がこのアクション要素皆無の文芸映画に深作監督を指名したのでしょうか?
もしかして吉永小百合の指名だったのでしょうか?
浅学でその辺のことは分かりません
もうこのように映画の冒頭から疑問符だらけです
吉永小百合は与謝野晶子役です
与謝野鉄幹と不倫の末に結婚して12人もの子供を産み、鉄幹が書けなくなったので彼女の執筆で孤軍奮闘して一家を支えていた1920年頃から、1923年9月の関東大震災までの彼女の日々を描いています
主題はそのような状況にありながら、有島武郎との不倫まで踏み込んでしまいそうなスレスレまでいく物語です
大正時代の社会運動、芸術運動の群像は背景としてありますが、それは全く主題では有りません
むしろ本当の主題は松田優作が演じる有島武郎の女性編集者との心中にあるように思います
吉永小百合が演じるファムファタルに出会ったことで、結局別の女性と心中してしまう男の物語です
1984年の「天国の駅」と同じく本作の企画としてクレジットされている岡田裕介氏の願望が反映された映画であるという気がしてなりませんでした
吉永小百合は有島武郎から贈られたお洒落な洋装を纏って彼の待つ北海道羊蹄山の麓の牧場に向かい一夜を過ごそうとするシーンの美しさぐらいしか見所は大してありません
松田優作はその死の1年前の出演で既に病魔に苦しんでいた中だそうです
サイドカーで群集の中を走り回るシーンは印象に残ります
それ以外の演技は1985年の森田監督の「それから」での抑制された演技が再演されているに過ぎません
風間杜夫の大杉栄は印象に残るものの、本作の一年前の1987年公開の五社英雄監督の「吉原炎上」で竹中直人がバイオリン弾きで強い印象を残した役イメージをまるまる踏襲しています
ハッキリいって二番煎じです
これなら竹中直人を使った方がずっと良かったのではないかと思うぐらいです
このような映画なので観終わってみても、最初の疑問符は無くならずかえって増えて大きくなってしまうのでした
吉永小百合、松田優作の映画は全て観たい
そういう人の為の映画だと思います