花と龍 青雲篇 愛憎篇 怒涛篇

劇場公開日:

解説

かつて六度映画化された火野葦平原作・同名小説の五度目の映画化で、初めての完全映画化である。若松の港を舞台に、一介のゴンゾ(沖仲仕)から一家をなした玉井金五郎と妻マンとの夫婦愛と、ゴンゾ同志の激しい抗争を描く。脚本は「人生劇場 青春・愛欲・残侠篇」の三村晴彦、野村芳太郎、監督は脚本も執筆している加藤泰、撮影は「快感旅行」の丸山恵司がそれぞれ担当。

1973年製作/168分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1973年3月17日

ストーリー

青雲の志に燃える無頼の青年・玉井金五郎は、恋女房のマンと一人息子の勝則を連れて、若松の港のゴンゾの親方・永田杢次のもとに身を寄せた。二人は真黒になって働いた。そんなある日、幼い勝則が筏で流された。それを救ったのは、中国大陸の流れ者、銀五だった。駈けつけて来たマンを見て銀五は身ぶるいした。感謝の気持を表わすマンに死んだお袋のおもかげを見たのである。それからの生涯、銀五はマンを心ひそかにあこがれつづけていった。翌年の春。急に勢力を増した友田組が、永田たち連合組の荷役奪回を策し始めた。連合組の総師大庭春吉は受けて立つことを宣言。金五郎も、友田組を向こうに回して敵対の意を表した。ある日、金五郎は大庭に、永田組の後釜として「玉井組」の看板をあげるよう懇願されるが、永田の手前もあり辞退した。その夜、大庭に連れられて賭場に行った金五郎は、顔見知りの蝶々牡丹のお京と逢った。お京は、唐獅子の五郎と二人でイカサマをして稼いでいたのである。久しぶりに逢った金五郎とお京は、痛飲し共に同じ部屋に泊った。翌朝、お京が寝ずに描いた二頭の龍の彫り絵が金五郎の肌に舞っていた。金五郎はお京の自分によせる心情にうたれ、刺青を承諾した。そして六日間。金五郎の肌には彼の依頼で、二頭の龍の肢が菊の花を掴んでいる見事な刺青が彫り上げられた。宝玉を菊にかえたのは金五郎のマンに対する愛情だった。その夜、お京と金五郎は結ばれた……。帰って来た金五郎の腕に彫られてある刺青を見たマンは「ゴンゾの親分が刺青を」と嫉妬をまじえて金五郎をののしり、勝則を連れて家を飛び出した。しかし、小倉駅で、盲腸で困っている唐獅子の五郎の息子十郎を救ったマンは、やはり夫の許に戻ろうと思うのだった。やがて金五郎は「玉井組」の看板をかかげた。その夏の終り頃、金五郎は友田組の角助に刺された。止どめを刺そうとする角助を止めたのは友田組に草鞋をぬいでいた銀五だった。銀五は血みどろの金五郎をかついで、マンの許に運んできた。マンの必死の看病が続き金五郎は九死に一生を得るのだった。十数年後--早稲田大学を卒業して、文学の道を志そうとしている勝則と、勝則を自分の仕事の後へと継がせようとする金五郎は、事あるたびに対立していた。そんな気持を勝則は、娼婦・光子への純愛に向けていた。が、光子の楼主は友田の息のかかっている男で、光子はマニラに売り飛ばされてしまった。今では石炭荷役請負業の組長として初老の心境となっている金五郎は争いを好まなかった。しかし、光子を失った勝則は、逆に自分のやり方で港の仕事を始めようと決心した。丁度その頃、十数年ぶりに銀五が若松に帰って来た。運命の糸は再び、二人を敵対に向って織りなそうとしていた。港を牛耳る三菱が、炭積機を港に設置する計画を発表した。金五郎はゴンゾの失業を恐れて設置に反対し、三菱にかけ合うために上京した。そして、東京で金五郎は、お京にうり二つの女スリ・お葉に逢った。このお葉こそ、かつての金五郎とお京との一夜の契りでできた娘だったのだ。そして、お葉は金五郎を母の仇として狙っていたのである。一方、勝則はストライキに突入した。友田組はあらゆる手段を駆使してスト破りを計った。やがて、玉井組と友田組との抗争にまで進展してしまった。金五郎たちは、大庭等の加勢もあり、友田組に殴り込みをかけた。その中には親娘と認めあったお葉の姿もある。血みどろの乱戦が始まった。やがて、銀五は傷つき死んでいった。敵と味方に別れながらもマンを慕いつづけた銀五だった。突然、一人の男が、玉井組に加勢し始めた。かつてマンに救けられた五郎の息子・十郎だった……。金五郎親子は勝った。親と子の深い信頼と情愛は見事に結実した。戦い終え、始めて我に帰った勝則は、やはり自分は文学を志ざすべきだと思うのだった。もう一度、光子に逢いたかった。そして、勝則はマニラに光子を捜しに出かけた。「俺の若い時そっくりだ」金五郎の感慨であった。夕陽の沈むマニラ。すでに光子は死んでいた。勝則の新たな決意がそこにあった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

2.5加藤版『ゴッドファーザー』…になれず

2021年1月16日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

興奮

加藤泰監督1973年の作品。

原作は映画にTVドラマと何度も映像化されている名作小説。
明治末期~昭和初期。北九州は若松の港を舞台に、一介のヤクザ者の沖仲士から九州一帯を治めた大親分にのし上がった金五郎と妻マン。
両親をモデルにした原作者の自伝的物語。
調べてみたら、エピソードや事件も史実通りが多いとか。凄まじ過ぎる…!

スタッフ/キャストはこの前作の『人生劇場』とほとんど同じ。
渡哲也、香山美子、竹脇無我、田宮二郎、倍賞美津子らのほとばしる熱演。
愛憎、情念、情感たっぷり、お馴染みの職人ぶりも含め、加藤イズム。
『人生劇場』に続く、加藤監督の松竹任侠大作。

昨年から時間があったら大分前にWOWOWで撮り溜めしていた加藤監督作品をちょいちょい見ていて、なかなかその虜に。
勿論本作も悪くなく見応えはあったが、でもこれまでの中ではあまり今一つだったかなぁ…。
加藤監督は任侠映画の名匠だが、今回はかなりのド直球コテコテ。
それが全てではなく、大河ドラマであり、壮大な家族のドラマ。ちょっと趣旨が違うかもしれないが、例えるなら、近代日本もしくは加藤版『ゴッドファーザー』のような。

しかしながら、『人生劇場』の時のようにエピソードや登場人物の多さでこんがらがり。
いや、もっと正直言うと、自分がただこの手の世界が時々不得意なだけ。悪しからず。

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近大

3.0人生劇場と出演者は同じ

2016年9月1日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

楽しい

大映と日活の男優に松竹の女優を配した、松竹任侠映画第二弾で、監督は加藤泰。
玉井金五郎は渡哲也、妻のマンは香山美子、栗田の銀五は田宮二郎、蝶々牡丹のお京は倍賞美津子、その他豪華俳優が名前を連ねる。
前半は快調だが後半、金五郎の息子(竹脇無我)が登場してからは軽くなった。
それにしても香山美子は吉永小百合に似ているなぁ。

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