花いちもんめ(1985)

劇場公開日:

解説

ボケた祖父の世話がもとで亀裂を埋め、絆を深めていく一家族を描く。脚本は「序の舞」の松田寛夫、監督は「白蛇抄」の伊藤俊也、撮影は「燃える勇者」の井口勇がそれぞれ担当。

1985年製作/122分/日本
原題または英題:Gray Sunset
配給:東映
劇場公開日:1985年10月10日

ストーリー

もと大学教授の鷹野冬吉は、めまいがもとで、勤務先の松江歴史史料館で大事な縄文土器を床に落として破損してしまいやがて勇退を勧告された。その事を老妻・菊代に言いそびれたまま、毎朝弁当を手にあてのない出勤を繰り返している。冬吉には三人の子供がいた。奥出雲に嫁いだ長女の信恵。大手スーパーストアの店長となった長男の治雄。彼には同じ店に勤める友子という愛人かおり、この間題で妻の桂子とは喧嘩が絶えず仲は冷えきっていた。そして、独身で温泉町にバーを営む次女の光恵。ある日、夏休みで遊びに来ていた孫の豊を連れて、山陰の洞穴遺跡を訪れた冬吉は、帰り道を失念してしまう。彼は大学病院で“アルツハイマー型老年痴呆症”と診断された。ある夜、冬吉は日本海へ身を躍らせる。その後姿を追った菊代は、心臓発作で倒れ入院した。病院に付き添った桂子は、ドア越しに自分がアルツハイマーだと聞いてしまった冬吉の、自らの無残な老後を引き受けようとする姿に感勤。桂子の希望で、冬吉は大阪の治雄一家に引き取られることになった。冬吉の痴呆は、徘徊、幻覚と進行していく。自分が義母になりかわるしかないと覚悟を決めた桂子の顔は生き生きとしてきた。かつてのアルコール依存症も消えた。治雄も単身赴任先の神戸からよく顔を見せるようになり、孫の里美も豊も冬吉の徘徊に同行する。冬吉のボケがこの家族の亀裂を埋めていった。すっかり桂子を妻と思い込む冬吉は、散歩に出た公園でキスをねだる。そして、お礼にと預金通帳を桂子に無理やり手渡す。退院した菊代が冬吉を引き取りに来たが、冬吉は菊代の顔を見ても誰なのかわからない。衝撃を受けた菊代は、再度発作を起こし亡くなってしまう。苦悩の末、治雄は冬吉を精神病院に入院させることを決心する。数日後、そこを見舞った時、彼が目にしたのはベッドに縛りつけられた冬吉の無惨な姿だった。治雄は車で冬吉を家に連れ戻す。今度こそ、皆で冬吉を守ろうと堅い絆で結ばれたこの家族がやがて見たものは、壊れたゆきひらを土器の修復でも試みようとするように様々に重ね合わす冬吉の無心な姿だった。彼の口から呟きがもれる。それはかつて菊代が口ずさんでいた「花いちもんめ」のメロディだった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第9回 日本アカデミー賞(1986年)

受賞

作品賞  
脚本賞 松田寛夫
主演男優賞 千秋実

ノミネート

監督賞 伊藤俊也
主演女優賞 十朱幸代
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映画レビュー

5.0ラストシーンはハッピーエンドなのでしょうか?

2022年5月24日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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あき240

4.0西郷輝彦さんを偲んで

2022年2月27日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

楽しい

幸せ

初鑑賞

監督は『女囚701号さそり』『白蛇抄 』『風の又三郎 ガラスのマント』『ルパン三世 くたばれノストラダムス』『プライド・運命の瞬間 』『日本独立』の伊藤俊也
脚本は『柳生一族の陰謀』『社葬』『プライド・運命の瞬間』の松田寛夫

憎まれてながらふる人冬の蠅

ボケてなお人は生きるのか
生きるなり

80年代日本映画の名作

黒沢映画でお馴染みの千秋実がボケ老人の役を務めた傑作
受賞歴無しの老俳優がこの年の日本の映画賞を総ナメにする快挙

ボケ老人の世話で壊れかけた夫婦の絆が深まる感動作

考古学の元大学教授で地元松江の歴史資料館を勤めた鷹野冬吉に千秋実
心臓が弱い冬吉の妻・菊代に加藤治子
単身赴任で神戸でスーパーの店長を務める冬吉の息子・鷹野治雄に西郷輝彦
大阪に住み花屋のパートで働く治雄の嫁・桂子に十朱幸代
治雄の姉で冬吉の長女・金子伸恵に野川由美子
スナックを営む治雄の妹で冬吉の次女・鷹野光恵に二宮さよ子
豊の姉で治雄の娘・里美に長谷川真弓
治雄の愛人・飯塚友子に中田喜子
光恵のオトコ石本義和に岸部一徳
勇退を迫った歴史資料館館長に内藤武敏
アルツハイマーを宣告する神経内科の医者に神山繁
松山の鷹野家にやってきた米屋に田山涼成

この頃はまだ岸部一徳と田山涼成の髪がフサフサだった

中田喜子が愛人役という意外な配役
台詞で「一億万円」を2度も言うがそれがちょっと気になった
別れを告げられ動揺し興奮する心理状態を表現したものなのだろうか

TBSの連ドラ『予備校ブギ』にレギュラー出演していた長谷川真弓が大阪の鷹野夫妻の長女として出演
僕ら世代としては懐かしい

ちなみにこの年あたりからボケ老人が熱心に社会問題として取り上げられたようだ
その影響でこの作品が誕生したのだろう
この年この作品が公開された1ヶ月前に台詞覚えが悪くなったことをボケと思い込み悲観して飛び降り自殺した剣戟大スター大犮柳太朗を思い出す


エンドクレジットなし

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野川新栄

3.5アルツハイマー

2021年9月4日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

松江に住む考古学者(千秋実)がアルツハイマーになり、妻(加藤治子)も倒れたので、大阪に住む長男夫婦(西郷輝彦、十朱幸代)が引き取ることに。
徘徊、暴力などすさまじい描写で展開されるが、他人事ではなかっただけに観ているのが辛くなる。

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いやよセブン

3.5切ねえ作品

2019年11月4日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

何年前に見たか覚えていないが、千秋実のボケが進んでからベッドに拘束されて…いや、日本の老人医療って今では少しマシになったはずだが。まるで監獄だなと思わされた作品。

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さすまー