八甲田山のレビュー・感想・評価
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天は我々を見放した!
と指揮官が叫ぶと、部下が絶望してバタバタ倒れてしまう。
指揮権や信望の大切さについて改めて気づきました。
雪崩のシーンがありますが、撮影ではダイナマイト爆破で実際に雪崩を起こし、事故になりかけたそう。
冬の八甲田山で撮影し、吹雪に襲われる雪の恐怖を見せてくれます。
道案内の村人役で秋吉久美子さんが出ますが、軍人さんより元気に雪山を越え、映画の中で数少ない、和むシーンでした。笑顔も美しい。
調べてみたら、web現代に「出演者が驚愕した、映画『八甲田山』…その「ヤバすぎる」ロケ現場の一部始終」(2022.2.11)という対談記事がありました。出席者が出演者の前田吟さん、チーフ助監督の神山征二郎さん、登山家の野口健さん。
前田吟さんのお話で、「観客は北大路欣也さんに現実の自分を、高倉健さんに憧れを重ねた」とあり。なるほど。
神山さんは「森谷司郎監督と木村大作カメラマンがめちゃくちゃをするので、もしこの人たちが死んだら私が引き継いで撮影するしかない」と自然に思うようになったとか。
野口健さんは「登山をする人間はまず八甲田に学べと教わる、映画の中に遭難の典型例が勢揃いしている、極地の「あるある」が満載」と感想をおっしゃていました。
雪の進軍
あっという間の3時間
雪山を思い出させてくれる映画
自分も何度か雪山に登ってました。
水は7割とか初めて聞きました。
GW前後でも標高2000メートル未満の山でも条件が揃えば、
夜間氷点下10度以下とかいきます。
自分は天気図を確認し、少しでも荒れそうならその日は行くのをやめてました。
一度吹雪に遭遇したこともありましたが、数分で保温カバーなしの水飲み用チューブが凍ったり、フルフェイスの保温マスク、ゴーグル無しでは全く歩けませんでした。
冬山装備を整えても、数10キロになるザックを抱えて、汗をかかないように気を付けたりと、ほんと大変でした。
そんな状態で一番恐怖を感じたのは、都会では経験することのない静けさと、この世界に自分1人しかいないのではと言う感覚でした。
描写があからさまな部分もありますが、個人的にその時の記憶を呼び覚ましてくれるには充分な映画でした。
製作陣も俳優も命を掛けて製作した名作
映画館で観るのは初めてだったかもしれません。
原作は何度も読んでいるけれど、映画も非常に面白いです。
以前は、三國連太郎さんが演じる大隊長の横暴がとにかく理不尽に思えたけれど、改めて観ると、悲惨なエピローグも含めて陸軍全体の理不尽さが強く描かれていることを感じました。
高倉健さんと北大路欣也さんが実質的なダブル主演。若き北大路さんの熱演が特に輝いています。
加山雄三さんは、前半は台詞もほとんどないけれど、後半から美味しいところを持っていく渋い役。
しかし、この映画は物語がどうこうよりも、50年近く前の山岳でのロケが凄い。
それこそ、撮影で大きな事故が起きなくて良かったと思います。
製作陣も、俳優も、命を掛けて製作した名作です。
過酷なロケの連続だったことはスクリーン越しからでもヒシヒシと感じ、現場の空気や極限の緊張感を共感、体感ができます。
「午前十時の映画祭15」ゴールデンウィーク期間中はサバイバル巨篇『八甲田山』4Kデジタルリマスター版を上映中。TOHOシネマズ新宿さんにて鑑賞。
『八甲田山』(1977年/169分)
監督は黒澤明映画で5作品チーフ助監督を務め『日本沈没』(1973)で記録的な大ヒットを飛ばした森谷司郎氏。脚本は『羅生門』『生きる』『七人の侍』をはじめとした黒澤作品や『切腹』『仇討ち』『侍』『砂の器』などの名作を生み出した橋本忍氏。撮影は木村大作氏、製作にも名匠・野村芳太郎監督が参画した豪華な布陣。
キャスト陣も弘前側の雪中行軍中隊長に高倉健氏、青森側の中隊長に北大路欣也氏。
弘前側の上官に丹波哲郎氏、藤岡琢也氏、青森側の上官に小林桂樹氏、三國連太郎氏、加山雄三氏、神山繁氏。
雪中行軍にも緒形拳氏、森田健作氏、前田吟氏、東野英心、さらに女優陣も栗原小巻氏、加賀まりこ氏、秋吉久美子氏と当時の一流スター、ベテラン勢が一堂に会する豪華なキャストだけで圧倒されます。
そして何と言っても本作の驚異的なところは、ずば抜けて世界一の積雪をほこる八甲田山で実際に撮影を敢行した点。
キャストの顔が判別もできないほどの猛烈な吹雪のなかや、実際の雪崩のシーンなど過酷なロケの連続だったことはスクリーン越しからでもヒシヒシと感じ、現場の空気や極限の緊張感を共感、体感ができます。
制作環境が大幅に改善された現在では本作のようなロケは難しいでしょうが、本物の大自然の迫力、特に現地の空気感はCGでは伝えきれないでしょう。
さらに当時の歴代配収新記録を打ち立てた誘因は橋本忍氏の脚本力によるところも大きいですね。
高倉健氏の弘前隊と北大路氏の青森隊の成否をわけた二隊のストーリーを同時で進めつつ、失敗した青森隊には不遜で独断、現場の部下の助言を無視して過誤な判断を下す愚かな上官(演:三國連太郎氏)を濃密に描くことで、明治時代の戦争モノにも関わらず、現代社会にも通じる身近な中間管理職サラリーマンの悲哀と共感を得られる作品に仕上げて、実に巧み。
橋本作品は社会派作品を多く手掛けておりますが、実際は世間の耳目が集まる題材を選定、きちんと娯楽作として昇華、世間の空気を敏感に察して、多くの作品がハッピーエンドにならないのが特徴。本作に続く『幻の湖』(1982)の失敗がなければ、さらに多くの名作、傑作に出会えたかもしれませんね。
絶望の淵に立たされた北大路氏が発する「天は我々を見放した」も当時幼稚園でもブームで、宣伝面も実に上手かったですね。
撮影、キャスト、脚本、音楽、宣伝…と様々な面で際立って成功した日本映画の代表作ですね。
日本人とは何か
「天は...天は我々を見放したッ!」
日露戦争開戦前夜の1902年1月、来るべきロシアとの戦いと、津軽海峡および陸奥湾封鎖に備え雪中行軍訓練が行われる。徳島大尉(演:高倉健)以下精鋭26名の弘前第三十一連隊は弘前から十和田湖を迂回し、八甲田山を抜けて青森に至る10泊11日のルートを計画、対して青森第五連隊は神田大尉(演:北大路欣也)以下小隊編成によって青森〜八甲田山〜八戸に至る2泊3日のルートを計画し、両名は八甲田山近辺での交差を誓う。しかし青森第五連隊・山田少佐(演:三國連太郎)は事前演習での好結果とメンツの問題から、大隊本部付総勢210名での雪中行軍を神田大尉に指示。当初は神田大尉の指揮に介入しないと明言したものの、行軍開始早々に介入するようになり、やがて史上最悪の雪山遭難事故「八甲田山雪中行軍遭難事件」が幕を開けるのだった...。
午前十時の映画祭15にて鑑賞。
よくぞここまでの画をフィルムに収めてくれた。良くも悪くも日本人というものの姿がこの約3時間に凝縮されている。興味深いのは、「日本の男」を体現してきた高倉健が本作では珍しく日本人らしからぬ厳格さと合理性を兼ねた存在を演じている点である。その代わり、悪い意味での日本人らしさによって北大路欣也が大ババを引くことになった。三國連太郎が終始行軍をかき乱し、青森第五連隊の指揮系統は複数に分岐、加えて命令は朝令暮改であるにも関わらず、神田大尉も真面目すぎてなかなか直言が出来ない...日本型組織の典型的な負けパターンである「現場に無知な上層部の介入による混乱」が嫌というほど描かれており、いち会社員である自分としても色々なことを思い出して頭が痛くなった。自分が神田大尉の立場だったら、恐らく山田少佐は止められなかっただろう。
製作にあたっては青森県が全面協力しているが、現地の人々に本作はどう映ったであろうか?両連隊の対比を明確にするために、描かれなかった負の側面がひとつある。劇中、徳島大尉が現地の道案内の村民(演:秋吉久美子)に対して、行程完了後に敬礼で見送る場面がある。しかし実際の福島大尉(映画では徳島大尉に改名)はほとんど村民を顧みなかったことが後の関係者の証言で明らかになっている。村民もまた、今回の訓練で凍傷となった者が多数いたが、軍からはほとんど金銭的な手当もなく、むしろその事実は伏せられた。現実には両連隊ともそれほどキレイな話ではなかったのである。そこに蓋をしたのは、いくら話の進行上やむを得なかったとはいえ罪作りに思えた。
劇中あまりに雪山の風景が続くので、時折津軽の四季の風景が挟まれる。雪国の四季といえば、例えば「ドクトル・ジバゴ」などでもフィルムに収められているが、比較にならないほど本作の映像詩は琴線に触れる。悲しい事故の裏に日本人の根底を垣間見た。
重厚な作品!
一種の歴史改竄ともいえるかもしれない
1977年の公開時には多分観たはずなのだが記憶がはっきりしない。
一時期、DVDが絶版となり、再上映も配信もない時代があり「午前十時の映画祭」で久しぶりにスクリーンで観ることができた。
橋本忍の脚本であるが、ほぼ新田次郎の原作本「八甲田山死の彷徨」通りの筋書きである。新田は人物名を全て仮名に置き換えているのだが(神成大尉→神田大尉、福島大尉→徳島大尉)映画はそのまま仮名を引き継いでいる。そもそも新田の作品はノンフィクションではなく小説である。
青森の第五連隊と、弘前の第三十一連隊からの選抜部隊が同時期に八甲田山系に入ったのは史実通りであり、第五連隊が大きな遭難事故を起こしたのも史実通りである。しかしながらその行動の目的は全く異なっており、第五連隊が、映画でも触れられたように、ロシアが日本海沿岸と陸奥湾を艦砲射撃の圏内に入れた場合の物資輸送ルートを確保する実験が目的であったのに対して、第三十一連隊は、大陸における対ロシア戦を想定し、冬季の索敵ないし掃討戦の装備や気象条件などの情報整備を目的としていた。だから、かたや中隊規模で日程が短く、貨物をそりに乗せて運び、かたや小隊単位で日程は長く、服装装備に万全の注意を払っているのはそれなりに意味がある。
だから新田が原作で書いている(そして映画が踏襲した)師団幹部が連隊幹部を呼んで競わせるようにしたというくだりはフィクションである。実際は両連隊は相手のことを知らず、だから当然、八甲田山中で出会う約束も存在しなかった。
さて、映画だが、原作以上に第三十一連隊に焦点を当てている。特に、後半部分は両連隊の行路が交互に登場する。(そして合間合間に、冬季以外の津軽の美しい風景が挟まる。さすが叙情派 森谷司郎の真骨頂というところだが少しうるさい)
つまり第五連隊の悲劇と第三十一連隊の成功が対比されているわけだ。わざわざ徳島大尉を高倉健に演じさせているのも優秀で善良な軍人もいたことを強調するためともいえる。
これって結局、この悲劇は特定個人や特定組織の怠慢や不見識、不勉強によるものだと言っていないか?そして、結局、そうやってトカゲの尻尾切り、本質の覆い隠しを続けたことが、日本の近現代史において次々続く失敗につながったのではないのだろうか。そして軍の持っていたメンタリティは日本人全体として継承されており、それがこの映画で無意識に歴史の改竄を行ってしまうことにつながっているという構造なのでは?
悲劇は悲劇としてきちんと描き、変な逃げ道みたいな表現は避けるべきだと思うんだけどね。
そうそう三国連太郎が演じている大隊長さんですが最後、拳銃で自殺するが、あれも新田次郎の創作です。どうしても罰を与えたかったんでしょうね。実際のモデルの軍人は八甲田で亡くなったようだけど。
天は我々を見放したぁぁ‼️
日露戦争を控え、青森連隊と弘前連隊による雪中行軍が同時期に行われるが、冬山の天候は変わりやすく、200人以上の犠牲者を出すことになる・・・‼️これは冬山の恐怖を描いた迫真のパニック映画ですね‼️幻覚による錯乱、裸で凍死する隊員‼️恐ろしい‼️案内人を務める秋吉久美子さんの可愛らしさ‼️型通りの健さん‼️「案内人に敬礼!!」‼️やはり今作は「天は我々を見放した」という台詞を流行語にまでしてしまった北大路欣也さんの映画ですね‼️自然の大きさの中では弱くて小さい人間のエゴ‼️そして雪また雪の凄まじい風景の中で描かれる男の戦い、優しさ、人間らしい心が素直に伝わってくる作品だと思います‼️
真のリーダーシップとは?
実際にあった八甲田山雪中行軍遭難事件をベースにした小説を映画化した映画。
Wikiによる八甲田山雪中行軍遭難事件と比べると、かなり脚色をしている。
例えば、Wikiを読むと、方位磁石を頼りに案内を断るという愚行は同じだが、天候急変となってすぐに青森歩兵第5連隊の将校たちは帰営を検討しているが、下士官たちの反対にあい帰営しなかったとのこと。次に帰営を決定した時には、すでにどちらに進めばよいのかわからず、迷走とある。また、上官による「八甲田山ですれ違わせる」と言う約束も、フィクションだそうだ。
原作となった小説は、組織論の教科書として、管理職研修に使われていたとか。
原作未読の為、Wikiに記載されている事件と、映画との比較しかできないが、上官の「机上の安易な口約束「八甲田山ですれ違わせる」等、組織の問題が強調されている作りになっている。
とはいえ、実際の遭難もなぜ順延できなかったのか。山の天気は変わりやすいとはいうものの、事件当日の天気は未だ観測史上破られていないほどの最低気温を記録するほどの寒気団が日本列島を覆っていたと言う。当時の気象予報では、その状況を把握できなかったのか?数年前の高校生が巻き込まれた雪崩事件のように、予定がぎっしりで順延できなかったのか。決められたことは決行しなければならないという日本人の真面目気質が仇になったのだろうか?映画では「八甲田山ですれ違わせる」という約束のために、順延できないことになっていたが。
予行練習が仇になった。
もし、天候が逆だったら、青森歩兵第5連隊も、もう少し慎重になっていただろう。「まるで、遠足みたいだ」。それが、気のゆるみ、弘前歩兵第31連隊との競争・名誉欲を掻き立てた。一つの成功例ですべてを判った気になってしまった。山田少佐もねじ込んでは来なかったのではないか。山田少佐に振り回される神田大尉だが、本当に雪の怖さを知っていたら、徳島大尉のように上官に逆らうような感じになっていても、もう少し粘ったのではなかろうか。津村中佐は計画に懸念を抱いていたのだから。だが、雪の恐ろしさを徳島大尉や村の村長から聞いてはいても、やはり、組織の流れにまかれるしかなかった。倉田大尉が美味しい立ち位置にいるが、山田少佐の暴走を止められなかった点では神田大尉と同じように組織の流れにまかれるしかなかった一員でもある。
他の山だが雪中行軍の実績がある徳島大尉の方が慎重だった。体験から来る提案を、机上の気軽な約束をした児島大佐への怒りをこめて説得。全滅も含めたあらゆる事態に備えて、準備する。
そんな二つの隊の在り方が、強調されて描かれる。
組織に必要な命令系統。
最近、政治や教育も含めて、様々なところで「リーダーシップ」が強調される。
けれど、真のリーダーシップとはどういうものなのだろうか。
様々な意見に振り回されて、リーダーが決定権を行使できないのも問題であろう。
”慣習”と言う名に阻まれて、必要な改革ができないのも問題であろう。
だが、周りの意見をきかないで、置かれている状況を鑑みないで、己の権限を押し付けるのは、真のリーダーシップなのだろうか?最近、そういうリーダーシップをリーダーシップと勘違いしている人が多くなっている。派手なパフォーマンスを、リーダーシップと勘違いしている人も多くなっている。
でも、と思う。
餅は餅屋。その土地で暮らすために必要な慣習や、専門家としての見地、経験に基づく知恵。そして、一人一人の持ち味。それらを活かせるかどうかもリーダーシップのあり方だと思うのだが。
そういう調整役はたいてい縁の下の力持ち。パフォーマンスとしては目立たない。特に仕事がうまく回るようなメンテナンスが主な仕事になると、うまく回っていることが当たり前になってありがたみが無くなる(主婦/主夫の仕事がこれに当たる)。
いろいろな人の意見を聞きながら調整していくと、とても回り道。成果が出るのに時間がかかる(徳島大尉が急ごしらえの小隊でリーダーシップを発揮できたのも、それまでの繋がり・評判等があったからであろう。志願者も徳島大尉の指揮下ならと言う人もいたであろう)。
成果主義を台頭すると、成功の業績に囚われ、山田少佐のような人物が暗躍する。
何か問題があれば、責任を取らされるのは管理職とはいえ、友田少将、中林大佐のあり方もムカついてしまう。計画の無謀さに対して後手後手。対ロシアへの訓練とするならば、上官がもっと”雪””寒冷地”に対して情報を集めてから下に投げればよいものを。しかも、成否に関しての評価も…。一見、部下の兵士を想う行動もあるが、その後の言葉に怒りを覚えてしまう。
そして、最後のテロップに流れる措置を誰が決めたのかはわからないが、理不尽の嵐が吹きすさぶ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
映画としては、とにかく映像がすごい。
このアングルはどうやって撮ったのかというシーンが目白押し。
実際に八甲田山が吹雪いているときに撮ったと聞く。俳優・エキストラ・スタッフに遭難者は出なかったのかと思ってしまう。水際のシーン。崖を登るシーンを上から撮っているシーン、下から、真横で撮っているシーン。脱落者がいてもすぐにわかるようにか、お互いの体を綱で繋げているシーンも。空撮から部隊に寄っていくシーン…。etc.
裸になって雪の中を転げまわるシーンやうまく服が脱げずに失禁してしまったシーンもある。崖を登り切れずに滑落していく兵士たち。それを演じられた役者さんがご存命かと確かめたくなる。雪に埋もれている北大路氏や新氏、佐久間氏は大丈夫だったのだろうかとも。棺桶に横たわっている土色の顔を出すために、寒い部屋にある棺桶に5時間横たわっていたというエピソードも…。
デジタル修復されたDVDを我が家で見たのだが、誰が誰やら。声や台詞で、今誰が映っていて誰が話しているのかを判断せざるを得ないシーンも続々と。軍人は皆同じ装いで、つららを垂らした雪だるまになっているので見分けがつかない。映像の良い映画館で見るべきであった。
それでも、力尽きた青森歩兵第5連隊の面々が地蔵かストーンサークルのように集まっているシーンや、進もうとしているのに風に押し戻されるシーンなど、雪と行軍だけの世界ではあるが、メリハリがついている。
その雪の行軍の合間に、青森の四季、子どもの日常が挟み込まれる。
DVDについていた橋本氏と若者の座談会によると、白黒の単調な映像にメリハリをつけたかったとのこと。美しい。そのシーンの主人公になっている少年は徳島大尉の子ども時代と言う設定らしいが、顔つきが神田大尉を演じられた北大路氏に似ているので、どちらの夢想か混乱もしつつも、それはそれで青森の豊かさ・力強さを見せてくれる。
だが、『砂の器』の演出を思い出させて、二匹目のどじょうを狙ったようにも見えてしまう。音楽も同じ芥川氏なのもその思いに輪をかけているのであろう。
役者は皆実力者が目白押しで安定の演技。
神田大尉を北大路氏が演じられているのは狙ったか。紅顔の美青年という趣で、悲劇さが倍増する。
秋吉さんは聞き取りやすい方言のイントネーション。緒形氏は見事な方言で聞き取りづらいが、東北感を出してくれる。『砂の器』でも事件のキーポイントであった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
映画として見ごたえはある。
でも、上にも記したような組織の在り方をはっきりと見せてくれるだけに、見ると、私の中のささくれが蘇ってしまう。
クライエントの命・人生・生活に関わる案件。
クライエント自身の意思や気持ちを、なんの根拠もなく、上司の都合で踏みにじる方針。長年そのクライエントと関わった人や専門家の意見も無視して、振り回す権限。
そんな理不尽な過去の仕事を思い出してしまう。
どうしたらよかったかと再考すると同時に、悶々として後を引いてしまう。
再鑑賞をついためらってしまう。
撮影がすごいよなー。
冬になると観たくなる
2回目の視聴。私は小説版やこの事件の解説動画を見たことがあります。
最初の遠足気分な予行演習から、本番の行軍では食料が凍ったり天候がどんどん悪くなったりと、音楽も相まって、ジワジワと不安が募ってゆく描写が恐ろしかったです。
出演者の鼻や顔が赤らんでいて本当に寒そう。
あと崖を掴む手に血がにじんでいるのが痛々しかった。
雪中行軍は、構想時点でふわっとしたもので、それが歴史的な死者数を出したという結果を考えるとやるせないです。
徳島大尉の部隊と神田大尉の部隊とではかなり対象的に描かれてると思いました。部隊編成や指揮系統、持ち物の管理や案内人の有無など…。
「何か」起こったら、大惨事になりかねない状況であった為、実際に「何か」(天候不順など)が起こったことで、この事故は起きてしまったんだと思いました。
人為的なミスが目立つので事故と言っていいかわからないですが…。現に同時期に行軍を始めた徳島大尉の部隊は生還しているから。
上手く纏めるのは難しいですが、自然の恐ろしさを、人間は十分理解していないといけないということでしょうか。
本編で度々流れる美しい自然の映像とのギャップが、余計恐ろしく感じさせます。
歴史に残る山岳事故の実話を映画化した、壮絶なストーリーと映像に圧倒される169分
明治35年(西暦1902年)にあった登山史における世界最大級の山岳遭難事故の実話を映画化
登山ファンでなくても日本人なら知っておくべき負の歴史であると共に人として大いに学びにもなる名作です
八甲田雪中行軍遭難事件は日本陸軍が行った雪中行軍での出来事
北大路欣也さん演じる神田大尉率いる青森5連隊210人中199人が同行した三國連太郎さん演じる山田少佐のつまらないプライドと無知をベースにした判断ミスにより死亡
一方で高倉健さん演じる徳島大尉率いる弘前31連隊27人は周到な準備により全員生還
この事件による学びは
・自然をナメるな
・知らない事は軽視せず、経験者や知見者の協力を得よ
・間違っている事は例え目上の人にでも訴えよ
等々、普遍的な教えであり見応えがあります
監督の森谷司郎さんは巨匠 黒澤明監督の助監督をしていた人で黒澤組の人らしく、本作は実際に八甲田山での撮影を敢行し、マイナス数十℃の中で吹雪を待ったり、ダイナマイトを使って雪崩を起こしたり等とことんリアルな極寒雪中撮影にこだわり抜き、あまりの過酷さに脱走した出演者もいたそうです
そんな素晴らしい映像を収めた撮影は森谷監督同様、巨匠 黒澤明監督から一級のカメラマンと認められていた『劔岳 点の記』(2009)で自身でも山岳映画を監督している木村大作さん、映画というエンタメを超え、歴史的価値のある貴重な映像作品として後世に語り継がれる偉業を残されたと思います
そして健さんや北大路さんの脇を固める役者さん達もすごく良い
丹波哲郎さん、小林桂樹さん、藤岡琢也さん、大滝秀治さん、加山雄三さん等々、言い出したらきりがないほどの豪華キャスト
しかも北大路さんの奥さんを演じる栗原小巻さんがメチャクチャ綺麗だし、現地のガイドを演じた秋吉久美子さんもすごく可愛いくて印象的でした
いやぁ、久しぶりに超・超・見応えのある邦画を観ました、本当に昔の邦画は力強くて面白い!こういうのもっと作ってほしいですね
ハッコー💡だサン☀️
時代が生んだ壮絶な人間ドラマだ。
日本の冬季軍事訓練で最多の死傷者を出し、近代以降の世界最大の山岳遭難事故でもある、1902年(明治35年)の「八甲田雪中行軍遭難事件」を映画化した人間ドラマ。
高倉健と北大路欣也が、別々の連隊で、八甲田山の雪中行軍を命ぜられる。厳冬の過酷な気象状況、認識不足、指揮系統の混乱、装備不足、低体温症などに直面し、悲劇を招く。
1977年の日本映画配給収入第1位を獲得した大ヒット作。3時間近い上映時間の中で、明るい要素や救いとなる点がほぼ無い。全体を通じて狂気に満ちており、観客に歴史的事件の現実を、強烈に見せつけている。
どれだけ理屈に合わなくても、上司の指示が絶対だという理不尽さが、組織自体の暴走につながるというストーリーが、終身雇用と年功序列が今より支配的だった当時の日本社会において、広く受け入れられたのだと思う。
主役級役者がずらり
第1回アカデミー賞の主演男優賞が高倉健とは知らなかったし、想像を絶する過酷なロケにこんな超豪華俳優が出そろううとはスタッフも含めたエネルギーを感じる。
ほとんど豪雪の中でのシーン、監督、助監督だけで無くカメラマンや現場スタッフは大変やったやろなあ。
事故無く最後まで撮影できたんやろか?
敵と戦わずして死ぬというのは兵隊さんにとって本望で無く、そう思うとこの訓練は何だったのか?
訓練に参加して無事帰ってきた者も、「じゃあ、次は極寒のロシアへ」と言われても「もう勘弁してよ」とならないか?
「神田大尉、死ぬ時を間違ってるよ」と言ってあげたかった。
それにしても過酷なロケやなあ、誰が誰かわからん。
雪上車で現場近くまで毎回行ってたんやろか?
この頃ってカイロあったんやろか?
飯はどうしてたんやろ?
年取った俳優はトイレも近かったやろから大変やったろなあ。
撮影後の風呂は最高やったやろなあ。
加藤嘉、秋吉久美子 良かったなあ~
次か次へと思いが馳せる。
全71件中、1~20件目を表示
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