劇場公開日 1987年8月1日

「言うならあんならは、オメメの汁でメシ喰うとるんど!「犬よちぎれるほど尾をふつてくれる」(by 尾崎放哉)」ハチ公物語 野球十兵衛、さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0言うならあんならは、オメメの汁でメシ喰うとるんど!「犬よちぎれるほど尾をふつてくれる」(by 尾崎放哉)

2024年6月2日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

幸せ

オープニングロゴで「ちょw」と吹いてしまいました。
何しろ
東京都知事推奨
日本PTA全国協議会推薦
東京都教職員組合推薦
大阪府教育委員会推薦
の作品です。ポーカーで例えればエースのフォーカードみたいな。優等生ここに極まれりみたいな。
もちろん、アマプラのコンテンツレーティングにも但し書きは一切ありません。「暴力」とか「性的なコンテンツ」だとか、これっぽちも書かれていません。
つい先日鑑賞した『SISU・不死身の男』みたく「殺ったれ!殺ったれ!ヒャッハー!ヽ(^o^)丿」系映画が好みの私とは最も縁遠い作品です。
何故かそんな作品をチョイスです。本当に何故なんでしょう?
ひょっとすると、涙で心の汚れが洗い流されるかも…と思って?知らんけど。

オープニングから“秋田犬の子”であることが、やたら強調されすぎでした。あたかも「雑種は犬にあらず」みたいな。そんな選民思想に通じる違和感を覚えました。親ガチャでたまたま当たり引いただけですやん。上級国民クソ喰らえ。犬相手にそんな僻みを感じました。
案の定、飼い主は上級国民様の大学教授様であらせられるじゃないですか。
「人間に人格というものがあるように、犬にも“犬格”というものがある」とか眠いこと仰せられるような。←やっぱり心が汚れまくってるし…

いつものようにWikipedia先生にぷち師事してみました。
すると!何と!この作品も制作のクレジットに奥山和由のお名前が挙がっているじゃないですか!
『その男、凶暴につき』の制作・原案の方でしょ?節操がなさすぎじゃね?と思って、携わっていらっしゃる作品群に、ざっと目を通してみました。本当に多岐にわたるジャンルの作品でご活躍の方なのですね。
本作はWikiの解説を読むと、ストーリーがどうのこうのよりも、制作に至った裏話がメインで紹介されていました。それによると、かなり不純な動機で創られた作品のようです。大人って汚い。
そもそも、物語の舞台背景がいつなのかすら書かれていないんですよ。画面の絵から察するに戦前っぽいくらいしかわかりません。ハチ自身のWikipediaを見てみると、昭和一桁代のお話のようです。
かなり力の入った昔の渋谷駅を再現したセットに、並々ならぬ趣を感じました。

撮影にあたって、ハチがお芝居をしなくて困ったらしいですが(当たり前です)が、作品を観るかぎり、しっかりと演技をしているように見えました。特に亡き主人のお葬式のシーンでは、不覚にも涙が零れそうになってしまいました。
遺されて霊柩車を追うハチかわいそう。・゚・(ノД`)・゚・。
住む家も飼い主も変わって雨に打たれるハチかわいそう。・゚・(ノД`)・゚・。
亡きご主人さまを探して夜の街を駆けずり回るハチかわいそう。・゚・(ノД`)・゚・。
音楽も思いっきり泣かせにきています。こんなん卑怯です。
とうとう野良犬にまで身をやつしてしまうハチが哀れすぎます。愁いを帯びた瞳がいじらしすぎます。

降雪の夜に、ハチが今わの際に見た夢のシーンでは本当に泣かされてました。
満開の桜の下、愛するご主人さまの腕に抱かれる夢を見て人知れず逝ったハチの姿に泣きました。
涙で心が浄化されました。
だからこそ制作のいきさつの裏話が大人の事情過ぎて白けてしまいます。
「なにが映画人なら!こんなが描いとる映画は何を売っちょるの?お涙頂戴じゃないの。言うならあんならは、オメメの汁でメシ喰うとるんど!」

ところで、渋谷駅前で待ち合わせをするカップルさんが、ハチ公前をしばしば利用されるじゃないですか。
あれって、不吉じゃね?会いたい人に二度と合えないことを象徴する場所ですよ。そんなんでいいの?私は別に構わんけど。

野球十兵衛、
ノーキッキングさんのコメント
2024年11月16日

掲載句のイメージとは全く違い、放哉は東大法科卒を鼻にかけ、人をバカにするいやーなアル中オヤジ。まぁ大好きだけど。

ノーキッキング
りかさんのコメント
2024年6月2日

おはようございます😃
共感、オモロいレビューをありがとうございました。
いろいろ詳しく調べられていますね。大学教授で秋田犬ブランド。
フツーの会社員でミックス犬だとどうなるか、脚本良ければ泣けますよ。庶民にひれ伏させる為に上級にしたのでしょうか。時は、大正ではなく昭和初めでしたか?
90年以上前ながら教授のように
とことん可愛がる方がおられたのですね。

りか