「ピーキーすぎて…」爆裂都市 バースト・シティ 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
ピーキーすぎて…
ただでさえ異常な『狂い咲きサンダーロード』をさらに魔改造したような映画だった。『狂い咲き』ではところどころに綻びがあるとはいえ映画全体を貫いていた物語性が、恐ろしいことに本作においては完全に消散してしまっている。その空白を埋めるかのように激流のようなカメラワークとパンクロックのギターノイズとギャングの雄叫びがひっきりなしに視聴覚を刺激し続けるのだ。「これは暴動の映画ではなく、映画の暴動だ」というキャッチコピーに恥じない、徹頭徹尾カオスでアナーキーなパンク映画だった。
とはいえ独特のテンションにチューニングを合わせられないと、最初から最後まで置いてけぼりを喰らうハメになる。映画冒頭、ライブハウス「20000V」でひたすら踊り狂う若者たちの姿は、この映画に対する我々のあるべき臨み方をオリエントしてくれている。
これは寓意や示唆といった裏側ばかりを見つめたがるインテリ的な視聴態度に対して立てられた中指ということなのだろう。目の前のできごとをテメーの身体で感じんかい!まずはひたすら踊り狂え!という。思考に対する身体の先行は初期の石井聰亙作品に通底したマインドセットだといえる。
けれどここまでピーキーなテンションについていくのは実際問題そう簡単ではない。そもそも物語が存在しないという時点で我々は遠く突き放されているわけなのだから。私の場合「それでもついてったる!」という根気よりも受け手への無配慮な展開・演出に対する落胆のほうが大きくなってしまい、あまり没入することができなかった。
私はやっぱりおざなりながらも物語性があるという点において受け手の存在を考慮していた『狂い咲き』のほうが好きだ。石井監督が本作のような作風を捨てて『ユメノ銀河』『生きてるものはいないのか』といったコミュニケーション主体の作風に転じたのも、彼が本作のようなスタイルに限界を感じていたからなのではないかと思う。