劇場公開日 1951年10月3日

「様々な人間模様と円環の物語。リアルサザエさん。」麦秋 コバヤシマルさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5様々な人間模様と円環の物語。リアルサザエさん。

2022年6月11日
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鑑賞方法:VOD

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内容は、小津安二郎監督の紀子3部作の2作品目の映画。原節子演じる紀子を中心に家族の繋がりと周りの環境などに左右されながら自分自身を見つめ直し人生の初夏を考えさせられる結婚観と家族観の物語。好きな言葉は『大和は、まほろばぢゃ』『若い者の邪魔したら悪い』の言葉の対比が奈良の山奥は大和と生老病死の円環から具体的に映像にした所が凄い。『灯台元暗しって言うぢゃない』結婚を決めたこの言葉の裏に、戦争で帰らず終いの紀子の兄の省二の面影を補完するかの様に、その省二の友達に嫁ぐ決心をした所が戦争の色恋し呪われた時代だなぁと感じた。『カナリヤの餌買ってくる』も南方戦線で帰って来ない子供の省二を何時迄も思っている親心が胸を締め付ける。好きなシーンでは、紀子1人お茶漬けのシーンと砂浜のカメラを垂直に上げるシーンが印象的でした。フィックスで撮る事が多い小津安二郎作品ですが、ツケパンやカメラが動く所は特にアクセントが効いて楽しかったです。物憂げそれぞれの心に空いた穴を表している様な余韻のあるシーンは味があって非常に好きです。終始家族円満家庭の中に戦争🪖で、埋められない穴があき、それぞれが手を取り合いながら必死に生きていこうとすると同時に、虚無感や厭世感が覗かれ老人といわれる人生の終焉にあたる人は、人生を振り返り纏める様な寂しくもあり嬉しくもあり作家性のある台詞には名作と言われる所以かと思いました。

コバヤシマル