白蛇伝

劇場公開日:

解説

東映動画スタジオが製作した、天然色・長篇漫画映画。白蛇の化身と、その恋人許仙の愛を綴る中国の民話「白蛇伝」を骨子としたもので、構成・美術は岡部一彦・橋本潔、脚本・演出は薮下泰司、撮影・塚原孝吉である。森繁久彌と宮城まり子が声の出演をする。

1958年製作/78分/日本
原題または英題:The White Snake Enchantress
配給:東映
劇場公開日:1958年10月22日

ストーリー

宗の時代の中国--西湖の畔に住む少年・許仙は、可愛がっていた小蛇を大人たちに叱られて泣く泣く捨てた。何年か後、成人した許仙は、ある朝、自分の吹く笛の音につれて鳴る不思議な胡弓の音を聞いた。彼の子分、パンダ(白黒熊)とミミ(猫熊)は、妖しい少女に誘われて古寺から胡弓を見つけ持ち帰った。翌朝、許仙は、道で昨日の少女・少青に会ったが、彼女の導きで立派な御殿に連れてゆかれ、胡弓の持主という美しい白娘に引会わされた。許仙は一目で恋におちたが、白娘は昔、許仙が可愛がっていた白蛇の精、少青は青魚の精だった。許仙が白蛇の精と恋におちたことを法力で知った高僧・法海は、彼を何とか救おうと考えた。一方、許仙と白娘が結ばれたのを喜んだパンダとミミ、それに少青は、御殿の中の木彫りの竜で遊んでいるうちに、竜は、みんなを乗せたまま空へ舞上り、宝物殿へ落ちた。そこにあった二つの宝石を国宝とも知らず少青は二人のために持帰ったがこれを政府の役人に発見され、許仙は遠く蘇州へ流され、労役につかされた。パンダとミミも蘇州へ来て許仙を探すが、一方の白娘と少青も蘇州の街外れの古塔で許仙の現れるのを待っていた。白娘の妖気が、夜な夜な許仙の体にとりつき白蛇の幻となって現れたため許仙は労働者仲間から追放されたがやがて彼は古塔に白娘とめぐり会うことができた。が、これを見た法海が許仙を救おうと白娘と術を競い、白娘が敗れて逃げるのを追いかけた許仙は崖下に落ちて絶命した。法海は島のお寺に許仙を葬ってやろうとした。しかし白娘は許仙を救おうと命の花を貰いに竜王星の竜王のもとへ飛び、自分が術の使えない人間となることを条件に命の花をもらって島へかけつけた。が、白娘をあくまで妖怪と信ずる法海に追返された。そこで少青は海底の大なまずに頼み、島を水攻めにし、許仙を取戻そうとした。海は大荒れとなり島の寺に襲いかかった。舟に乗って命の花を届けようとする白娘は、今は術をもたぬ身、大波に溺れようとしている。そのころ少青の力で命の花は許仙のところに着き、許仙は生き返った。溺れようとしている白娘めがけて許仙は海へ飛びこんだ。これを見た法海は、今こそ白娘が人間に返り、許仙との恋の固さを知って舟を差のべてやった。二人は舟に乗って幸せの国へと旅立った。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.0【中国に古くから伝わる「白蛇伝」を基にした邦画初の総天然色長編劇場用アニメーション映画。青を基調にした色彩が美しい恋物語。この作品を劇場で鑑賞した人は驚いただろうなあ。】

2024年1月14日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

幸せ

寝られる

■「白蛇伝」は、余りに有名な中国の説話であるので詳細内容は割愛するが、少年・許仙(シュウセン)のことが忘れられない白蛇の化身白娘(パイニャン)との恋物語をアニメーションで描いた作品。

◆感想

ー 資料によると、昭和33年公開とある。驚きである。何故かと言えば少年・許仙(シュウセン)と白蛇の化身白娘(パイニャン)の品性漂う絵姿と、許仙(シュウセン)を慕うパンダや猫熊ミミィや、白娘(パイニャン)を想う青魚の精、少青(シュウセン)の滑らかな動き。
 そして、高僧法界が許仙(シュウセン)を思って白蛇の化身白娘(パイニャン)と法力で戦うシーンや、白蛇の化身白娘(パイニャン)の真なる恋心を知って二人を助ける姿が中国風の音楽を背景に描かれている点が、魅力なのである。
  良く、東映は昭和33年当時に、このクオリティの作品を作ったモノである。
  そして、この作品により影響された多くの人々が、その後のジャパニーズアニメを世界のアニメに昇華させていった事を考えても、この作品の価値は計り知れないと、私は思うのである。-

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NOBU

2.0なんか、道徳の教科書みたいなアニメだったんですね。ガキの頃、何回か...

2022年8月13日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

なんか、道徳の教科書みたいなアニメだったんですね。ガキの頃、何回か白黒テレビで見て。また、学校で見せられたような気がする。あまり面白くない。
しかし、ホッカイともののけ姫のそじ坊は同じキャラクターじゃないかなぁ?と思った。
アニメの方は、遠近法はキチンと取っているし、動きも滑らかで悪くないが、一方で、脚本が今一なので、大団円迄の緊迫感が持続しない。つまり、一部脚本が破綻している。

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マサシ

4.0日本アニメの黎明

2021年8月27日
Androidアプリから投稿

技術の高さは世界のトップクラス…いったい何がその源流にあるのか・・・?キャラクターの魅力度は素晴らしい。
森康二はもっと高く評価されるべきだ。

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mark108hello

5.0当時の東映の気概をみよ!

2020年6月17日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

興奮

萌える

本編の感動はもちろん、初めて見た予告に感動して身震いがしてきた。
 日本でも、日本独自のアニメを創ろうというその気概。その第一作に、なんで日本民話でなく中国の民話なんだというつっこみはとにかく、文化を創ろうというその思いに打たれた。(*1)

そして、そんな熱い思いに応えた本作。
 ワヤンクリを思わせる影絵のような導入から、アニメーションに入る演出が際立つ。
 今の目で見ると、冗長で長いと思える部分もあるが、幼児にも受けるように(動物のドタバタ)、大人の鑑賞にも耐えるように(ロマンス)、と様々な気配りが、かえって何が何でもこのプロジェクトを成功させるんだという意気込みを感じて胸が熱くなる。

そして作画。
 作画用に作られたのであろう登場人物のフィギュア(予告の社長の机の上に飾られている(≧▽≦))。
 かつ、ライブアクションという手法。
 水木襄氏(『忍者部隊月光』!)が許仙を、入社したての佐久間良子さんが白娘を、当時子役として定評のある松島さんが小青を演じていらっしゃることは有名。
 小青がかわいらしくって元気で、小気味いい活躍するのも、松島さんがモデルかと思えば納得。
 しかし、佐久間さん、もとい、白娘のなまめかしいこと。文部省(今の文科省)・東京都教育委員会選定、日本PTA全国協議会特選他なのにいいのか?と思うほど。

役者の動きをCGに取り込んでの加工なんて作業はできない頃。
一枚、一枚丁寧にセル画を起こし、紡いでいく作業。
それでこんな動きの滑らかな作品、発色の良い作品が出来上がるなんて!!!

しかも、薮下氏(脚本・演出≒監督)の話によると、経験あるスタッフはごくわずか、新人を採用し、訓練しながら、作成していったとか。企画も活発ではあるが、初の企画で慎重にならざるを得ない上に、アニメ専門の企画陣もなかった中で、決定的な脚本に至らないうちに、現場作業に入ったとか。
     (『東映動画長編アニメ大全集 上巻』(東映動画㈱・徳間書店児童少年編集部:編、㈱徳間書店・昭和58年発行)より)

まさに、社運をかけての作業(こけたらどうなるんだ!)。

それだけでなく、服装・建物・小道具等の考証を、国立博物館中国美術の杉村先生、宇宙や星は東京天文台の地球物理学・畑中武博士にお願いしているという。(上述の本の中の岡部一彦氏(美術)の話より)

背景もうっとりする。

サントラも、胡弓?の異国情緒あふれる調べ、怪獣映画か?と思わされるような迫力ある音等楽しませてくれる。

声優はお二人だけなのに、時にコメディチックな、主筋は情感あふれる語り口。
 影絵からの導入も、宮城さんの語りならでは、物語に誘われる。
 かなり、森繁氏・宮城さんお二人のアドリブーー時に、脚本に書いてないので、その場での作詞作曲ーーが入っているそうだ(上述の本での宮城さんの話より)。
 役者の底力を知る。

アニメ好きなら、アニメの世界に関わりたいと思うなら、必ず触れておかなければいけない逸品。

それだけでなく、
 京劇等の演目にもあり、日本で、アジアで、幾つもの映画の題材にもなっているメジャーな物語。
 超有名な異類婚姻譚。一種のロミオとジュリエット。蛇・魚の精と人間の関係を、自分とは異質な人・受け入れがたい人との関係に置き換えてみると、なんとも…。その異質さをものともせず心を交わす人々。受け入れられぬ人々との抗争。
 シャーマン・スピリット・霊性、自然と人間との関係を語る人もいる。
 このアニメの展開だと、少年・少女が、”大人”になるイニシエーションとしても興味深く、いろいろと語りたくなる。自然の精霊に親和性がある幼い心が、相手のための試練を乗り越えて、現実的な関係を築き上げる。幼い心の死と大人としての心への再生。
 そんな、幾様にも語れる奥深い物語が、ロマンティックに、時にコミカルに展開する。
 奇抜さを求める人には物足りないかもしれないが、
 せひ、子どもから大人まで、たくさんの人に見てもらいたい不朽の映画。

(*1):上述の本の中で、
岡部一彦氏(美術)の「…製作費の半分を香港の映画会社が出してくれる必要上…」という話(*2)もあるが、一方で、今田東映動画社長(本出版当時)のインタビューには「…これは創業のときからですが、世界市場に輸出できる日本の映像作品というのは、私はアニメにつきると思っているんです。…」や「東映動画の歴史」の章では「…東映がアニメーションを手がけるにあたってのもくろみは、輸出することが大きなテーマとなっていた…」とある。
 海外市場を見据えたうえでの選択だったのかな?。

(*2)Wikiによると、はじめは「香港の映画界から持ち込まれたが、…香港の下請けとしてでなく、独自の本格的なアニメ映画をつくることを考え始めた」とある。
 香港の映画会社が出資するというのは岡部氏の聞き違い?

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とみいじょん

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