馬鹿まるだし
劇場公開日:1964年1月15日
解説
藤原審爾原作『庭にひともと白木蓮』を加藤泰と「あの橋の畔で」の山田洋次が共同で脚色「下町の太陽」の山田洋次が監督した人情もの。撮影は新人の高羽哲夫。
1964年製作/87分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1964年1月15日
ストーリー
シベリヤ帰りの松本安五郎は、外地に抑留される和尚をもつ浄念寺にころがりこんだ。若くて美しい住職の妻の夏子に安五郎は秘に恋慕していた。堂々たる風貌と腕ぷしの強さで安五郎は、早くも町の人気者となった。そのきっかけは、町の劇場に出演中の怪力スーパーマンを負かした事件が、町中に広まったからだ。以来、安五郎には乾分も出来、又一軒の家を構えて、町のボスとなった。インフレの波がこの瀬戸内海の小さな町にも押しよせて来た。町の工場にも労働争議が起きた。おだてられた安五郎は、赤木会長に面談し、工員の要求を貫撤させた。ただ夏子に一言ほめてもらいたい、それが安五郎の行動の全ての動機なのだ。英雄となった安五郎の日々も、町の勢力を革新派が握ったことから急変した。何となく冷くなった町の人達の眼、そして夏子との間が噂となり浄閑寺への出入り禁止と痛手は大きかった。がある日ダイナマイトを持った脱獄囚の三人組が辰巳屋の静子を誘拐して裏山ににげた。この時人の口にのぼったのが、大力をもつ安五郎だ。人の好い安五郎は名誉挽回と裏山にゆき静子を救ったが、その足元でダイナマイトが爆発し、両眼を失った。それから二年後、唯一筋に愛しぬいた夏子の、再婚の花嫁姿を見守る、杖にすがった盲目の老人。あの気風のいい、安五郎の変り果てた姿が白木蓮の匂う浄念寺にあった。夏子の涙にぬれた眼が安五郎に優しくそそがれているのも知らぬまま……。