「これが世界を揺るがした傑作」PERFECT BLUE パーフェクトブルー マスゾーさんの映画レビュー(感想・評価)
これが世界を揺るがした傑作
今敏(こん さとし)
北海道は釧路生まれの
漫画家・アニメ監督
漫画家としてヤングマガジンの
ちばてつや賞を受賞し
大友克洋のアシスタントを担当
やがて大友克洋が脚本等を担当した
「老人Z」「MEMORIES」
などからアニメ方面へ進出
数々の作品で評価を得たことで
監督として機会を得たのが
今作となる
どちらかと言えば国内より
海外で評価される機会が多く
「千年女優」「パプリカ」等
2010年に惜しまれながら癌で死去
するが存命ならば日本の
アニメーションを牽引する存在で
あったであろうと言われる
才能である
1997年に発表された今作は
当時まだ一般に触れられる機会が
まだ早かった「インターネット」
「ストーカー」と言った要素を
取り込みながら
アイドルが次のキャリアを
女優に定めるにあたって抱える
葛藤を今敏監督特有の
現実と空想の境目を曖昧にする
演出を駆使して観る者の感覚を
狂わせる様は何度観ても
衝撃を受ける
その表現方法にしても
アイドルユニットの
センターだった霧越未麻(きりごえみま)
が女優に転身するにあたっての
本人の内面的な葛藤や迷いを
憂うマネージャーや倒錯的なファンに
転嫁しながら進むことで
未麻に女優としての濡れ場や
ヘアヌードに差し向けた連中が
惨殺されていく展開にもっていく
流れは何度観ても予想しづらく
ストーリーとして最後までわからなく
する展開には改めて感服するところ
女優として転身するために
濡れ場でもなんでも受け入れていく自分
アイドルとしての未麻を応援してきた
マネージャーのルミやファン
それぞれの想いを「鏡」として
投影してもう一人の「理想の未麻」
として画面に出す手法
これが海外に影響を非常に産んでいたと
思います
こないだのエドガー・ライト監督の
「ラストナイト・イン・ソーホー」でも
明らかにこの作品の影響であろうと
感じられる鏡映しの描写がありました
思い描いている理想の自分と
現実の自分を鏡の向こうで分ける
今にしてみると当たり前な表現に
感じますがこの映画がストレートに
初めて表現したんじゃないかなと
思うとこはあります
26年経ったところで
今観てみると一番思うのは
昨今の作品で見られる
「わからない人向け」の配慮が
一切無く
柄の悪いアイドルのファンなどの
実在してしまうものをアッサリ
表現している点については
この作品どんだけ視点が
新しかったんだと驚くばかり
倒錯したファンが暴走する
というテーマの映画だと
ロバート・デ・ニーロ主演の
「ザ・ファン」が思い出されますが
この作品は本作の1年前の1996年の作品
タイムリーな話題をいかに抑えていたのか
と思わされるばかり
今敏氏はもしご存命であれば
ジブリや新海誠氏などのように
次世代のジャパニメーションを担う存在
として存在したのであろうと思いつつ
この作品に影響を受けた人々が必ずや
発信し続けるのであろうという
期待も願ってやみません
追記
この映画に関わられた方と
縁あってお友達なのですが
今回観に行きましたと
お伝えしたら
この作品当時は興行が
振るわず今敏監督と気になって
封切り日に新宿へ観に行ったら
あまりにガラガラで
帰りにゴールデン街でヤケ酒した
というお話を聞きました(笑)
いや時代が早過ぎたんだよなぁ…