野火(1959)

劇場公開日:2025年8月1日

解説・あらすじ

小説家・大岡昇平が自身のフィリピンでの戦争体験をもとに執筆した傑作戦争文学を、巨匠・市川崑監督と脚本家・和田夏十のコンビが映画化。第2次世界大戦下のフィリピン・レイテ島を舞台に、肺病におかされた中年兵士が飢餓と孤独に苦しんだ末に目の当たりにする、陰惨な戦場を描き出す。

第2次世界大戦末期のレイテ島。日本の敗戦が濃厚となるなか、肺病を患った一等兵・田村は部隊から追い出され、病院でも食糧不足を理由に入院を断られてしまう。病院の前で、田村は同じく厄介者として見放された若い兵士・永松や、足を負傷し歩けなくなった中年兵・安田と出会う。飢えに駆り立てられるように熱帯のジャングルをさまよう田村は、道中で出会った別の部隊と行動を共にするが、米軍の一斉砲撃により他の兵士が全滅してしまい……。

船越英二が主演を務め、極限状態に追い込まれた兵士役を熱演。1961年・第14回ロカルノ国際映画祭でグランプリに輝いたほか、国内外で数々の映画賞を受賞した。2025年、終戦80年企画として4K版でリバイバル公開。

1959年製作/105分/日本
配給:KADOKAWA
劇場公開日:2025年8月1日

その他の公開日:1959年11月3日(日本初公開)

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

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(C)KADOKAWA 1959

映画レビュー

4.5 主人公の精神状態に一層近づく高精細化

2025年8月17日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

怖い

1959年公開の名作を、最新の映像技術でレストア、4K化してリバイバル上映。良い企画だ。見通しがよくなり人物の表情に肉薄する映像で、船越英二演じる主人公・田村一等兵の精神状態がリアルに伝わってくる。映像の迫力によって否応なく田村に同化させられる、と言ってもいい。

1945年2月、日本は敗色濃厚。フィリピン・レイテ島で日本兵たちは飢えに苦しみながら、撤退のためジャングルを移動する。山間のぬかるんだ道を力なくふらふらと進む兵士たち。そこに機上から機銃掃射、全員一様に地面に身を伏せるが、数人かに銃弾が命中し、そのまま起き上がらない。敵機が去ると、被弾しなかった兵たちは何事もなかったかのように立ち上がってまた歩き始める。たった今撃たれて絶命した仲間には目もくれずに。極限状態の心理を表す印象的なシーンだ。

そして終盤、いよいよ「人肉食」のテーマが前面に出てくる。田村が“肉”を口にしたときの顛末は、市川崑監督によれば観客に配慮し大岡昇平の原作小説から変更したという。極限の飢餓状態で人肉を食べるか否か、という心理をリアルに描いた映画としては、アンデス山中で乗員乗客45人を乗せたチャーター機が墜落・遭難し、厳寒の山中で70日以上を耐え抜き16人が生還した実話に基づくイーサン・ホーク主演作「生きてこそ」の衝撃がいまだに忘れられない。「野火」も「生きてこそ」も、普通の暮らしを送っていては決して知り得ない極限の飢餓と人間心理を疑似体験させてくれる傑作だ。

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高森郁哉

4.0 戦後がこれからもずっと続きますように

2025年8月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

終戦80年企画として、角川シネマ有楽町にて上映。
製作は1959年。終戦から14年後ということで、作る側も見る側もまだ記憶に生々しい時。
当時この映画を観た人たちはどのように受け止めたのだろう……と考えてしまう。

それから65年の歳月が流れ、今、同じスクリーンを見ている人たちはおそらく戦場を誰も知らないはず。
なんの演出もなく戦争の現場を映し出す映像から、しっかりとリアリティを感じることができるほどの知識も経験もなくて、受け止め方が難しい。

関ヶ原の戦いのあと、徳川綱吉が将軍となったのがちょうど80年後。
戦いに明け暮れた時代の余韻が消え去り、日本史上でも特別に華麗な文化が花開く時代が訪れた。
そして、次に幕末の戦乱の世が訪れるまで150年近く平和は続いた。

一方で、今、私たちが生きている時代も、終戦から80年。
しかし、残念なことに、至るところできな臭い匂いが立ち込め始めている。

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livest!

4.0 過酷

2025年8月23日
iPhoneアプリから投稿

ちょっと前までこんな過酷な経験した人たちが同じ時代に暮らしていたなんて。すごくリアルに悲壮な撤退の様子を映し出す。

この映画が公開されたころはたくさんの経験者がいたし、スタッフにもいただろう。こんな経験したあとサラリーマンとかやって普通に生活してたわけ?!と驚く。

簡単にたくさんの人が死んでいく。簡単に殺すこともある。人の命が軽い。

なんだかすっとぼけた風な主人公と、人間味のある兵隊たち。フィリピンの人たち。日本は恨まれている。決してフィリピンの解放などではなかった。

映画館を出て平和な世の中に安心し、心からありがたいと思った。どうか皆さんの魂が安らかでありますように。

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hyvaayota26

4.0 タイトルなし(ネタバレ)

2025年8月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
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りゃんひさ