日本の黒幕のレビュー・感想・評価
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昔はよかった。
1979年、降旗康男監督作品である。
この映画にはいわくがあって、当初大島渚監督で準備が進められていたのだが、何らかの理由で大島渚は降板。それでも企画はつぶれず、降旗康男監督が代役にたったのである。
その後、この映画は無事完成し、大島渚は「戦場のメリークリスマス」にとりかかるのである。
まず、僕はこの映画をヤクザものと勝手に思っていた。
それは全然違っていて、主人公の山岡(佐分利信)は文字通りフィクサーであり、ときの与党総裁を自由に操れる立場にいた。
要するに政争の話である。
また、高田宏治のオリジナルではあるが、よくよく観るとロッキード事件がモデルになっている。
航空機輸入にまつわるよろしくない金の動きと聞くと「不毛地帯」(山崎豊子原作)を思い浮かべてしまう。
山岡のところにひとりの少年が暗殺にやってくる。彼が映画としては肝になる存在だと思うが、演じた狩場勉がいまひとつで、このミスキャストはいたかった。
この映画を観たかった理由のひとつに田村正和の出演があった。若いときには大島渚の映画や木下惠介の映画(仲代達矢の息子役!)にも出ていて、たくさんの出演作がある。
きっちりと映画に貢献、役に奉仕している感じで好感が持てた。昔は、あのニヒルさがなんとも引っかかって好きじゃなかったのだが、伊達に長年役者をやっていない。
35年前の映画だが、いい役者がいっぱいいたのがわかる作品であった。
で、これは永遠の謎だが、佐分利信のあの声で映画俳優としてトップにいられた理由。確かに本作もよかった。でも、いまならかなり難しいのではないか。「華麗なる一族」(山本薩夫監督)や「事件」(野村芳太郎監督)を見直してみよう。
うっすらブロマンス
昭和の政財界フィクサー、児玉誉士夫が一応モデルとなっている。
彼と関係があったロッキード事件や田中角栄を匂わせる描写も出てくる。
が、実録風と言うには無理がある、トンデモな展開の本作。
フィクサーの邸宅に彼の命を狙うテロリスト(美少年)が忍びこむ。美少年は何故かフィクサーに心酔し、彼の親衛隊の一員となる…。
そんな不思議ストーリーを、佐分利信(フィクサー役。渋い。カッコ良すぎる70歳)・田村正和(そのボデイガード)・高橋悦史(フィクサーの部下)・狩場勉(美少年役)・有島一郎(フィクサーの昔の部下)といった面々が熱演。
任侠映画などには「男が男に惚れる」感じのシーンが出てくるけれど、本作はその範疇をこえた、何ともジットリした描写。
何故か美少年がヒマワリ畑で水浴びしている。
濡れる美少年。
それを物陰からジットリ見つめる佐分利信。
そして別の物陰からジットリ見つめる田村正和。
そんな佐分利・正和・美少年の不思議な三角関係の他にも、
突然、胸をはだける佐分利、その胸にむしゃぶりつく有島一郎。とか、
突然、正和を引き寄せ髪をまさぐる高橋悦史(ストーリー的には全然まさぐらなくても良いのだけど、執拗にまさぐる)。とか、
油断もスキもあったもんじゃなく、いたる所に、うっすらブロマンス(というか衆道?)を、ぶち込んでくる。
そんな不思議演出を、威風堂々受けて立つ佐分利信がひたすらカッコいい映画であった。
その他、ブロマンス以外の見所も満載。
火だるまになってフィクサー宅に突っ込むチンピラ小林稔侍とか、大仰な演技で壮大に狂っていく松尾嘉代(フィクサーの娘役)とか、詰め襟の制服が似合い過ぎる中尾彬とか、見せ場もなくヤル気ゼロな感じが清々しい梅宮辰夫とか、暑苦しい人が多い中ひとり涼しげな江波杏子とか、素敵な面々が脇を固めている。
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