日本のいちばん長い日(1967)のレビュー・感想・評価
全7件を表示
歴史的な1日を淡々と見せるが、それが実に面白く興味深い
岡本喜八監督による1967年製作の日本映画。配給は東宝。
庵野秀明監督が本作を気に入って何度も見ていると聞き視聴。脚本が橋本忍とは知らなかった。それだけ、スピード感や数多くの有名俳優の扱い等、岡本喜八監督の色が強いと感じた作品。原作は読んでおらず、史実自体が大変に興味深く面白く、それを手際良くきちんと示そうという演出姿勢には感心させられた。
主役は歴史という感じで、血気にはやる井田正孝中佐(軍務課員) 役の高橋悦史以外は殆ど記憶に残っていない。まあ天皇陛下が後ろ姿だけで、正面から映さないのは印象に残った。
沖縄陥落し更に原爆2個投下された後の終戦日直前においても、即ち客観的には局地戦含めて勝利の見込みが全く無い様に思えるにも関わらず、未だ本土決戦を主張する陸軍の人間達には呆れ果ててしまった。軍人以外の庶民の命を尊重する気持ちがあまりに乏しい。そして何より、玉音放送阻止に動いていて、天皇に直接的に反旗を翻しているのに驚かされた。文民統制以前というか、陸軍はどういう教育をしていたのか?先進国の軍隊ではありえない。天皇制のためでもなく、自分達だけのためだけのための本土決戦。中国にロシアに、そして米国に戦争で負けて当然と思ってしまった。
映画とは直接関係無いが、畑中健二少佐及び椎崎二郎中佐が自決したのに、彼らの上官竹下正彦中佐(クーデターの元となる兵力使用計画を起草、原作者のネタ元らしい)は自衛隊幹部として大出世(陸相)し、映画で「宮城事件」の首謀者に見えた井田正孝中佐が戰後も生き残り電通関連会社の常務として出世するのが、何とも日本的で悲しい。責任取らされるのはいつも下っ端管理職で、上はお咎め無しなのか。
製作藤本真澄、田中友幸、原作大宅壮一名義で出版されたた半藤一利の同名ノンフィクション、脚本橋本忍。
撮影村井博、照明西川鶴三、録音渡会伸、整音下永尚、美術阿久根巖、編集黒岩義民、音楽佐藤勝、監督助手山本迪夫、渡辺邦彦。
出演者
内閣: 鈴木貫太郎男爵(内閣総理大臣) - 笠智衆、東郷茂徳(外務大臣) - 宮口精二、米内光政(海軍大臣) - 山村聡(特別出演)、阿南惟幾(陸軍大臣) - 三船敏郎、岡田忠彦(厚生大臣) - 小杉義男、下村宏(情報局総裁) - 志村喬、石黒忠篤(農商務大臣) - 香川良介、
広瀬豊作(大蔵大臣) - 北沢彪、松阪広政(司法大臣) - 村上冬樹、豊田貞次郎(軍需大臣) - 飯田覚三、大臣 - 山田圭介、大臣 - 田中志幸。
官邸: 迫水久常(内閣書記官長) - 加藤武、木原通雄(内閣嘱託) - 川辺久造、佐藤信次郎(内閣官房総務課長) - 北村和夫、佐野小門太(内閣理事官) - 上田忠好、鈴木一(総理秘書官) - 笠徹、小林海軍軍医 - 武内亨、首相官邸警護の巡査 - 小川安三。
外務省: 松本俊一(外務次官) - 戸浦六宏、大江晃(電信課長) - 堤康久。
情報局: 川本信正(情報局総裁秘書官) - 江原達怡。
宮内省関係者: 石渡荘太郎(宮内大臣) - 竜岡晋、加藤進(総務局長) - 神山繁、筧素彦(庶務課長) - 浜村純、佐野恵作(総務課員) - 佐田豊。
陸軍関係者:
陸軍省 若松只一中将(陸軍次官) - 小瀬格、吉積正雄中将(軍務局長) - 大友伸、荒尾興功大佐(軍事課長) - 玉川伊佐男、井田正孝中佐(軍務課員) - 高橋悦史、椎崎二郎中佐(軍事課員) - 中丸忠雄、竹下正彦中佐(軍事課員) - 井上孝雄、畑中健二少佐(軍事課員) - 黒沢年男、小林四男治中佐(陸軍大臣副官) - 田中浩。
参謀本部 梅津美治郎大将(参謀総長) - 吉頂寺晃。
第一総軍 杉山元元帥(司令官) - 岩谷壮、第二総軍 畑俊六元帥(司令官) - 今福正雄、白石通教中佐(参謀兼司令官副官) - 勝部演之。
東部軍 田中静壱大将(司令官) - 石山健二郎、高嶋辰彦少将(参謀長) - 森幹太、不破博大佐(高級参謀) - 土屋嘉男、稲留勝彦大佐(参謀) - 宮部昭夫、板垣徹中佐(参謀) - 伊吹徹、神野敏夫少佐(参謀) - 関田裕、塚本清少佐(司令官副官) - 滝恵一。
近衛師団 森赳中将(第一師団長) - 島田正吾、水谷一生大佐(参謀長) - 若宮忠三郎、渡辺多粮大佐(歩兵第一連隊長) - 田島義文、芳賀豊次郎大佐(歩兵第二連隊長) - 藤田進、古賀秀正少佐(参謀) - 佐藤允、石原貞吉少佐(参謀) - 久保明、大隊長 - 久野征四郎、宮城衛兵司令所の伍長 - 山本廉、徳川侍従を殴る師団兵 - 荒木保夫、師団兵 - 桐野洋雄、師団兵 - 中山豊。
児玉基地(陸海混成第27飛行集団) 野中俊雄大佐(飛行団長) - 伊藤雄之助、児玉基地副長 - 長谷川弘、少年飛行兵 - 大沢健三郎※、
横浜警備隊 佐々木武雄大尉(隊長) - 天本英世
航空士官学校 黒田大尉[注釈 5] - 中谷一郎
憲兵隊 東京放送会館警備の憲兵中尉 - 井川比佐志。
海軍関係者:
軍令部 豊田副武大将(軍令部総長) - 山田晴生、大西瀧治郎中将(軍令部次長) - 二本柳寛。
海軍省 保科善四郎中将(軍務局長) - 高田稔。
厚木基地(第三〇二海軍航空隊) 小園安名大佐(司令) - 田崎潤、菅原英雄中佐(副長) - 平田昭彦、飛行整備科長 - 堺左千夫。
宮城関係者:
重臣 木戸幸一(内大臣) - 中村伸郎、平沼騏一郎(枢密院議長) - 明石潮、
侍従 蓮沼蕃大将(侍従武官長) - 北竜二、中村俊久中将(侍従武官) - 野村明司、清家武夫中佐(侍従武官) - 藤木悠、藤田尚徳(侍従長) - 青野平義、徳川義寛(侍従) - 小林桂樹
三井安弥(侍従) - 浜田寅彦、入江相政(侍従) - 袋正、戸田康英(侍従) - 児玉清、岡部長章(侍従) - 関口銀三。
日本放送協会関係者:
大橋八郎(日本放送協会会長) - 森野五郎、矢部謙次郎(国内局長) - 加東大介、荒川大太郎(技術局長) - 石田茂樹、高橋武治(報道部長) - 須田準之助、館野守男(放送員) - 加山雄三、和田信賢(放送員) - 小泉博、長友俊一(技師) - 草川直也、技師 - 今井和雄、技師 - 加藤茂雄。
その他:
原百合子(鈴木首相私邸女中) - 新珠三千代、政治部記者 - 三井弘次、佐々木大尉の後輩・横浜工高生(横浜必勝学生連盟) - 阿知波信介、ビラを拾う街の男 - 夏木順平、ビラを拾う街の浮浪児・兄 - 頭師佳孝、ビラを拾う街の浮浪児・弟 - 雷門ケン坊、枢密院会議の重臣 - 秋月正夫、枢密院会議の重臣 - 野村清一郎、起田志郎。
ナレーター - 仲代達矢
特別出演
昭和天皇 - 松本幸四郎(八代目)。
「軍隊は命令で動くものだ」
物心ついて、燻し銀の演技力をみせつけていた素晴らしい俳優達の、未だ自分が生まれる前の脂が乗っている時代に堂々たる活躍をスクリーン一杯に披露していた作品である。
主にポツダム宣言を受容れるまでのアバンタイトルの長さに驚き、確かに長い話になりそうな雰囲気である。そして玉音放送までの詔書作成と、宮城事件、鈴木首相宅焼き討ち、厚木航空隊事件、児玉航空基地での特攻隊出撃シーン等を絡めつつ8月14日から15日正午までの短時間を大変濃縮した空間として描いた構成である。
充分有名な作品であり、ちょくちょくラジオのパーソナリティのネタのきっかけにもなる作品だったので、きちんと観てみようと思った次第である。
この手の内容に常に思うことは、軍人という種類の人間の馬鹿馬鹿しさである。始終四白眼で演技していた将校の鬼気迫るシーンを目の当たりにするだけでなく、期限が設定された途端、右往左往する軍人達の愚かさを表現しているにつけ、本当に戦争の愚かさを改めて身に沁みてくる。そして憤怒の想いで、こんな連中に国を舵取りさせていたのかとやるせなさと無力感に苛まれる。結局エリートなんてものは国の事を考えずに自分本位が本音でありその組織の保守のためならばどんな犠牲も厭わない悪魔なのだということでしかない。そして何の力も持ち得ていない下々は常にそんな連中の都合に振り回され、命を奪われる。
この作品中の陸軍大臣の潔さに称賛を送っている悪魔達もいるだろうが、決して美しいモノではないことを肝に銘じて欲しい。この作品にでてくる総ての役は市囲の人ではない。その才能を自分だけの利益のために使っているだけの悪魔である。リアリティ演出としての天皇の顔を恣意的に隠す演出等、視覚効果も優れた、反戦映画としての高い評価を自分は送りたい。
そして、また世界中のどこかで常に戦争は続き、死ぬべき人間が生きて、生きるべき人間が死んで行く・・・
すごい映画
玉音放送が流れるまでに何があったのか。
歴史を知れる。
陸軍は玉音放送を止めようとそれを奪おうとする。
陸軍にとっては負けを認めることになるから。
これまで死んでいったものに申し訳がたたないと、ただ広島、長崎に原爆が落とされ天皇の意思は固い。
日本は8月15日に全面降伏した。
ポツダム宣言の受諾である。
8月14日に何があったのか語られる。
鈴木貫太郎はすごい人と思った。
日本帝国のお葬式という言葉が残ってる。
昭和の時代に切腹自殺?
この映画のタイトルは昔から知っていましたが、なかなか見る機会がなくて、やっと鑑賞できました。白黒で堅苦しい映画なのか?と最初不安でしたが、特撮もCGもない当時の映画技術はどんなものか知りたかったし・・・。昔から太平洋戦争の負けた原因は海軍と陸軍の衝突にあると言われていますが、ことごとく意見が対立している状況は戦争映画で少なからず描かれていますね、米内海軍大臣と阿南陸軍大臣。陸軍大臣といえば東條英機が余りにも有名ですが、阿南陸軍のことは知らない情報でした。しかし・・・・この映画の中で将校は皆 軍刀を差しています、もちろん戦場で戦うために使うものだと思ってましたが、大臣が割腹自殺するというシーンは 映画の脚本かと思いきや 事実だったのですね。「こんな奴は叩き斬ってしまえ!」という台詞がありますが、昭和の時代なのにまるで戦国時代の武士のような生き様なのが驚きました。
武士が割腹自殺するのは、責任を取る ということだと思いますが阿南陸軍大臣はこの世にいる最後として酒を飲んで酔っ払った状態での自決は部下の謀反に対しての事なのか、あまりにも凄まじいシーンで正視に堪えなかったです。強烈なシーンが延々と続く
映画では語られていませんが、
阿南陸軍大臣は、その割腹自殺の臨終の際に・・・・米内を斬れ! と言ったそうですが相当海軍大臣を嫌っていたものと思います。ただ米内海軍大臣は割腹自殺した阿南を焼香に駆けつけていたことから 阿南ほど嫌っていなかったのでは?
この映画の主役でもある、玉音盤を放送の時間まで宮内庁が預かり金庫の中にしまい、更に大量の書類の束のなかに隠すシーン。後から来た反乱軍が必死に探し回るなか、とうとう見つかってしまうのか?
というドキドキのシーンでした。見事な脚本だと思う
実際 玉音盤で放送されたのは歴史的事実だから 盗まれる訳がないという思いでしたが、まさか盗まれるのか??というハラハラした。
また昭和天皇を正面から映さず、後からとか椅子の陰とかからとかやはり当時の恐れ多くも目も合わせられない存在である という描き方でした。
日本の命運が決した二十四時間
東宝8・15シリーズ第1作。
DVDで2回目の鑑賞。
原作は未読。
岡本喜八監督の手腕が冴え渡っている。ドキュメンタリーみたいにリアルであり、タイムリミット・サスペンスならではなハラハラ・ドキドキをも感じさせる演出が巧みだ。
三船敏郎他東宝所属俳優たちが軒並み出演しオールスターの貫禄を放っていて、彼らの重厚で情感たっぷりな演技が本作のリアリティーを底上げしており、心揺さぶられた。
場所や人物名などのテロップ、会議シーンを映し出すアングルなど、「シン・ゴジラ」で模倣されていた部分を確認出来たことが、特撮ファンとしては大変嬉しかった。
初めて鑑賞したのは2、3年前のことだが、その時まで本作で描かれている出来事があったことを全く知らなかった。
国の命運が決しようとしているその裏で幾人もの想いが交錯し、狂騒の中で血が流されていたのかと強い衝撃を受けた。
よくよく考えれば、すぐに受け止められないのも当然だとも思った。これまでの体制が崩れ去ってしまうのだから。
無条件降伏を良しとしない陸軍青年将校たちの暴発。宮城占拠及び玉音盤の奪取と云う暴挙。最後の足掻きとばかりに暴走する彼らの姿が痛々しく、そしてとても物悲しかった。
敗北は火を見るよりも明らか。本土決戦に持ち込んだところで状況が好転するとは思えない。竹槍でB‐29が落とせるわけが無いし、精神論で敵の軍勢と火力に敵うはずも無い。
日露戦争でロシア帝国に勝利した国と同じ国とは信じられない為体だ。陸軍は政治に走り過ぎてしまって、外に目が向かなくなってしまっていたと云うことなのかもしれない。
ラストに示される犠牲者の数と、惨状を記録した写真。我々が享受する今日の平和は尊い犠牲の元に成り立っていることを決して忘れてはならないと云う想いを新たにした。
悲劇を繰り返してはならない。その一念だけは揺らいではならない。痛ましい経験をした民族だからこそ訴えられることがあるはずだと、胸に刻んでおかねばならないと思う。
[余談]
畑中少佐役の黒沢年男が名演だ。彼から迸る熱情と狂気。目をガッとかっ開いて、汗まみれになりながら決起を促す姿が鬼気迫っていて、めちゃくちゃ圧倒された。
全てを食う勢いがあり、本作が名作たる一助となっているのは間違いない。宮城に向かってピストル自殺する時の表情と死に様も壮絶。凄まじい余韻が漂った。
[以降の鑑賞記録]
2020/08/14:Blu-ray
2023/08/16:Blu-ray
2024/08/14:Blu-ray
※修正(2024/08/14)
日本人が忘れてはいけない日
この映画のすごさは、この歴史のページを息をつかせぬ緊張感で描いていること。しっかりと背景も説明して、どうして8月15日か、というのも納得させる。
冒頭にそういったふりもあるので、切迫感が伝わってくる。
やっぱり三船は凄い。それだけでも観る価値ある映画だけど、本音では日本人なら一度は見てほしいと思っています。
岡本喜八監督の一番作品と思っている。白黒映画で緊張感を持続させているのかもしれない。ポスターはカラー写真だったけど。
俳優陣が魅力的
リメイク版を見てからオリジナルをみてみたら、
印象がかなり違い驚きました
クーデター側の切羽詰まった感じや
つっぱしり具合がオリジナルの方が抜群だし、
内容もわかりやすい
見てるうちに息がつまりそうになりました
70年前にこんなことが起こっていたなんて
信じられないけど、
陸軍将校たちの勢いは今のテロリズムを感じたりもしていろいろ考えさせられた
全7件を表示