「本当の「美」」アメリカン・ビューティー 鮫瓦卍丸さんの映画レビュー(感想・評価)
本当の「美」
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この映画には様々な登場人物が出てくる。
奴隷さながらの仕事を14年続け、家庭では虐げられている男。不動産屋として働くが全く業績が上がらず、ひたすら自分の感情を押し殺す女。不仲の両親にうだつが上がらず、本当はもっと注目してほしいのに素直になれない反抗期の娘。軍人として自分や周りにも厳しすぎる男。半ば痴呆症のようになってしまった女などなど…
彼らに共通しているのは「自己抑圧」である。
この映画のテーマはそんな抑圧的なことが模範的な美であるとされている世間に対して反対意見を提示する、いわば本当の「美」を通した人間賛歌なのだ。
上記の抑圧的な人々とは対照的に現れるのが、主人公の隣人のゲイカップル。ヤクの売人をして金を稼ぎ、美しいものをビデオに収める変態高校生。
彼らの行いは非常識なのかもしれない。しかし彼らはとても幸せそうなのだ。そこにこの映画の「皮肉」が混じっている。
抑圧的だった人々も次第にタガが外れていく。不倫や違法薬物に手をつけるが、彼らはやはり幸せそうなのだ。
また自分の中の「美」を見つけることによって、「美」に寄り添うことができる。
主人公のレスターは自らを囲んでいた「美」の存在に気付き、感謝の念を抱いて死んでいく。しかしまだ本当の「美」を見つけきれずにいる者たちに対して「いつか理解できる」と言葉を残していくのだ。
さらに劇中では「美」のメタファーとして、バラや赤色が用いられている。これが意味するところが、どのような「美」なのか。考えてみるのも面白いかもしれない。
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