劇場公開日 1980年8月2日

「兵士の悲惨な戦いと将軍の苦悩」二百三高地 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5兵士の悲惨な戦いと将軍の苦悩

2013年3月16日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波、CS/BS/ケーブル

悲しい

難しい

総合:85点
ストーリー: 85
キャスト: 80
演出: 85
ビジュアル: 75
音楽: 75

 戦場における一人一人の兵士たちの苦しみや心身の傷だけでなく、戦争に来る前のそれぞれの事情。そのようなことが丁寧に描かれている部分が、戦争の生臭さや残酷さをうまく表現している。風景も本当に寒そうで厳しそう。例え戦争などしていなくても、死ぬかもしれない戦いを前に厳しい寒さに耐えている兵士を見るだけで、十分にその辛さが伝わってくるというもの。さだまさしの悲しい歌がそれを盛り上げる。

 さて、乃木神社というのが軍神として乃木希典将軍を祭った神社だというのを知ったのは、物心ついたころ。神社にまでなるのだからたいそう立派な将軍だったのだろうと、なんとなく昔は思っていた。彼は清廉な人格者だと言われる。
 しかし将軍としては、この映画のように準備万端の鉄壁の敵要塞に、正面からただ貧弱な武装の無力な歩兵を突撃させ続けるという、要塞攻略戦において最もやってはいけない作戦を採用した。そして多くの将兵をひたすら無駄に死においやったという、とてつもない愚鈍な駄目将軍。まさに一将功成りて万骨枯るである。近年は彼の軍功や能力について疑問を投げかける評価の再考の動きがあるようだが、それも自然なことであろう。
 そんなことがあるから、どうも乃木将軍が綺麗に描かれすぎているなと、見ていて少し感じるのである。結局児玉源太郎が要塞攻略用に28センチ砲を本土から搬入して、目標を要塞攻略から二百三高地占領に変えたからこの戦いはうまくいったのではないか。現実には失敗し続けても結局乃木将軍続投となるのだが、映画でも乃木ありきで設定されすぎているように感じた。最後の奏上の場面でも、将兵を失った辛さはわかるのだが、誰のせいでそうなったのかと思ってしまう。
 歴史の解釈は色々なのでどれが正しいとは言えない。本来ならば歴史は歴史、映画は映画で別物。おそらく乃木将軍も自分の能力以上の責任を背負わされた、被害者の一人だったのかもしれない。彼が苦悩したであろうことはとてもよくわかる。児玉も敵を吹き飛ばすために味方ごと砲撃するような決断をしている。戦争の勝利の影で、良いか悪いかとか有能か無能かとかを別にして、簡単に失われていく兵士の命と同時に、そのような将軍の苦しみも描きたかったのだろう。だがどうも彼の役柄の設定の良さが自分の考えとは異なってあまり好きになれず、捉え方の違いでこの部分は少しだけ気になった。

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Cape God