「【”我々は敵ではなく友人だ。”白人至上主義だった兄が刑務所生活3年で愚かしき思想を払拭した訳。今作は人種差別の愚かしさ、恐ろしさ、哀しさを描いたヒューマンドラマの逸品である。】」アメリカン・ヒストリーX NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”我々は敵ではなく友人だ。”白人至上主義だった兄が刑務所生活3年で愚かしき思想を払拭した訳。今作は人種差別の愚かしさ、恐ろしさ、哀しさを描いたヒューマンドラマの逸品である。】
■白人至上主義を掲げるネオナチのメンバーであるデレク(エドワード・ノートン)は、黒人に殺された消防士だった父が愛した車を盗もうとした黒人を殺して投獄される。
同じ選択係のユニークな黒人の囚人と触れ合い、彼が刑務所内で黒人たちから自分を守っていた事に気付いたデレクは、それまでの考えを完全に捨て、3年の刑期を終え実家へ戻る。
そして、弟ダニー(エドワード・ファーロング)と久しぶりに再会するが、彼はかつてのデレクに感化されて白人至上主義にのめり込んでいた。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・エドワード・ノートン演じるデレクの刑務所内に入る前のモノクロで描かれる狂的な白人至上主義の男と、刑務所を出てからのカラーで描かれる白人至上主義を捨て去り常人になった変化が凄すぎる。正にエドワード・ノートンが演技派として花開いた作品である。
■刑務所内で、それまでの敵なしだったデレクが、黒人たちに怯えて暮らす姿。そして、彼と共に洗濯係として働く黒人囚人ラモントから言われた事。”刑務所内では、黒人の方が勢力があるんだぜ。”
そして、”何をしたんだ?”と聞くデレクにラモントが答えた事。”TVを窃盗したんだよ、警官の前でな。その時にTVが警官の脚に当たって、刑期6年だよ。”
それを聞いて、”黒人を殺した自分が刑期3年で、窃盗で捕まったラモントが刑期6年”という矛盾に気付いて行くデレク。
更には、黒人囚人たちから憎しみの目で見られながらも、何ら問題なく過ごしていたが、白人の囚人たちとも交流を持たなくなったデレクをシャワー室で襲ったのは、白人6人だった。医務室で泣き崩れるデレク。
そして出所日。デレクはラモントの所に行き、言うのである。”謎が解けたぞ。お前が俺を守っていたんだな・・。”そして、笑顔で別れる二人。見事なるストーリーテリングである。デレクが白人至上主義思想を捨てた理由が、矛盾なく分かるからである。
・そして、デレクは且つての自分に憧れていたダニーの白人至上主義思想を徐々に無くしていくシーンと、二人で壁に貼られていたナチスのハーケンクロイツが刻まれたポスターを次々に剥ぎ取って行くシーンは、沁みる。
<そして、デレクはネクタイを締めて且つての仲間であるキャメロンとセスが襲われた事で、刑事に説得され且つての仲間達に話を付けに行くのだが・・。だが途中で別れたダニーは学校に行くのである・・。
今作は、人種差別の愚かしさ、恐ろしさ、哀しさを描いたヒューマンドラマの逸品なのである。>