「世界が認めた長野の姥捨山伝説の映画化」楢山節考 eichanさんの映画レビュー(感想・評価)
世界が認めた長野の姥捨山伝説の映画化
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長野県の姥捨山伝説の原作小説を基に今村昌平監督が標高1000Mの廃村で三年の歳月をかけて撮影した大作で、1982年のカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した作品である。舞台の農村では厳しい自然環境と食糧事情を背景に、村の掟による極度の人口統制がとられていて、老人は70歳になるとお山に捨てられ、次男以下の男子には婚姻はおろか性交すらも許されていない。人々は信仰と慣習と掟の中にだけ生き、ひたすら食べ、ひたすら交じり合う。そして時に食糧盗難の制裁の下に、或る家族の根絶やしの為に、村民の男衆皆で生き埋め殺人までもする。しかしそんな中でも、村民達は明るくどこか滑稽で、それを見つめる監督の眼差しは温かい。この作品は人間讃歌であり、生命讃歌である。思えば極端化されてはいるが、明治維新前の日本中の農村は多かれ少なかれ、この村のような環境下にあったのだろう。いわば日本の農村の典型で、我々のルーツである。現代の我々日本人の飽食と繁栄と自由の謳歌とはまるで異なる。しかし男女の愛情と親子の心情は今も昔も少しも変わらない。俳優陣の名演もあって、人類の普遍性の描写に極めて成功している。日本の長野県の伝説を映画化した作品を、外国人が理解し評価した点からも、それは伺えるのである。やはり傑作だと思った。
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