劇場公開日 1965年9月18日

「素晴らしさと危うさ」血と砂(1965) La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)

未評価 素晴らしさと危うさ

2025年8月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 三船敏郎演じる軍曹の指揮の下、音楽学校出の十代の軍楽隊少年たちが中国の前線で銃を取って戦う岡本喜八監督作です。そもそも、少年達が楽器を持って最前線でディキシーランド・ジャズを演奏しながら行進するなんて絶対にあり得ませんが、その軽みとぶっ飛び具合こそが岡本喜八流です。戦争映画でも決して暗くはならず、「そんなバカな」という笑いも振りまきながらお話は進みます。でも最後、激しい砲撃を受けながらも塹壕でジャズを演奏し続ける彼らの姿は哀切です。これも絶対にあり得ない事ですが、この姿こそ監督が描きたかったシーンなんだと胸に迫り来るものがありました。

 そして、上映後のトークゲスト深田晃司監督と村山章さんのお話が素晴らしかったのです。岡本作品の魅力に触れながらも、本作に登場する明るい朝鮮人慰安婦の描写に感じる危うさをしっかり取り上げ、映画表現の持つ保守性・過去から現在までの歴史性にまで及んだ解説は目が開かれる思いがしました。非常に有意義な時間となりました。

La Strada
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