動脈列島のレビュー・感想・評価
全7件を表示
国の動脈を止めぬため、民の心臓が止まる
Amazon Prime Videoで鑑賞(レンタル)。
原作は未読。
当時社会問題となっていた新幹線騒音公害を題材に、新幹線破壊計画を実行しようと企む青年と、計画を阻止するべく奮闘する警察や国鉄との戦いを描いた社会派サスペンス作品。
1977年に起こった実際の訴訟は、80年に地方裁、85年に最高裁で判決が下された。国鉄側が騒音公害を訴える沿線住民に慰謝料を払うこととする内容だが、肝心の騒音に関しては、地方裁も最高裁も差し止めを認めなかった(86年に和解が成立し、公害悪化防止措置を盛り込んだ協定が結ばれた)。
健康被害を齎す騒音について、一旦現状のままとされたことに憤りを覚えた。その理由とは、経済を停滞させんがため。大勢のため小を犠牲にする形が、一時的ではあるが取られたことになる。だが経済を止めるわけにはいかぬと云う理由は断罪出来ないから厄介だ。高度経済成長の闇を感じる出来事である。
冒頭の老婆の死のシーンによって、近藤正臣扮する義憤に駆られた青年に否応無しに感情移入させられてしまった。
国の経済活動を支える動脈を止めないために、無辜の民の心臓が止まる。そんなことが許されていいのだろうか、と…
動脈列島と云うタイトルは、その点を皮肉ってつけられたのではないか、と感じさせる導入から一気に引き込まれた。
類似作品である「新幹線大爆破」との比較を避けることは出来ない。サスペンスとしては「新幹線大爆破」が上だろう。
犯人が追い詰められている印象が終始薄い。国鉄総裁の家に簡単に行けてしまったのもなんだか不思議な展開である。
クライマックスのブルドーザーを利用した作戦も、秋山の頭脳ならば二段構えの作戦に出来ただろうに。違和感が残る。
田宮二郎扮する捜査指揮官も、キレ者の雰囲気は醸し出すものの、本当に雰囲気だけで言動が勘頼りなのが残念だった。
[余談]
秋山を取り巻くふたりの女に扮した、関根(現・高橋)惠子と梶芽衣子が名演だなと思った。恋人と行きずりの女だが、このふたりの愛無くしては秋山は犯罪を実行出来なかった。
逮捕の際、秋山は恋人の胸で落涙する。東京に帰らせた梶芽衣子が不憫。しかしながら、どこか影を感じさせる女を演らせたら梶芽衣子の右に出るものはいないような気がした。
~新幹線開業60周年の日に観て~
社会派サスペンス
ほぼ50年前の作品。久しぶりにDVDで鑑賞。近藤正臣、今で言うイケメンか…。梶芽衣子、関根恵子も綺麗です。田宮二郎が渋い。当時は、中学生で名古屋に住んでいた。他にも公害問題が騒がれていた時代。映画でも描かれているが、名古屋市南区の一部の地域は、新幹線の振動、騒音に悩まされていた。訴訟も始まった時期でもあり、旧国鉄が騒音、振動、住民の移転対策に本腰を入れ始めた。また、住民に同調した組合(国労、動労)所属の一部の運転手さんたちが、南区の一部の区間の走行スピードを実際に減速したことがあった。同時期に東映の「新幹線大爆破」があるが、「動脈列島」は、社会問題に一石を投じた映画でもある。原作は、清水一行。
0096 原作はめちゃくちゃ面白い
1975年公開
清水一行の原作では犯人は近藤正臣似と書いてる。
巻頭に新幹線建設予定の図があるが
50年経っても完成していない。
あっという間と思ったが。
田宮二郎が犯人を追い詰めていく。
関根恵子と梶芽衣子がおっとこまえ近藤正臣に絡む。
犯人の動機は当時としてはなかなかすさまじい。
新幹線を脱線させる?脱線したらどうなるの?
満員と仮定したら1600人ですね。
いや死者数は?
例外はありません。皆様お陀仏です。
原作は犯人は計画を遂行するが国鉄側が運行を
止めてしまい大惨事にはならなかったが。
70点
48年ぶりに鑑賞、やはり傑作!
本作は、生まれて初めての試写会(1975年8月)が初見で、会場入り口で映画チラシを貰って喜んだ。「まさか、こんな宣伝素材まで貰えて、映画をタダで鑑賞できるなんて…」ということで…(笑)
その直後、公開された劇場にも観に行ってパンフを買った懐かしく、思い入れのある1本。
本日は購入DVDで48年ぶりの鑑賞だったが、久しぶりに観て、いろんな事に気付かされた。
初見の動機(試写会応募の動機)は、「清水一行の原作を読んだので、映画はどんなものかな?」というものだった。
本作は、ほぼ原作どおりの脚本。
新幹線映画では、本作以外に『新幹線大爆破』が有名だが、ほぼ同記事に公開されたこれら2本は『新幹線大爆破』が娯楽作で本作は「新幹線の騒音問題を根底に持つ社会派映画」である。
本作をドラマ展開の面から言えばゴジの『太陽を盗んだ男』だし、物語展開の面から言えば『ジャッカルの日』である。
それでも、さすが増村保造監督による映画なので、犯人役の近藤正臣の恋人役=関根恵子や犯人と知っていて惚れる女=梶芽衣子が綺麗に撮られている。
1975年の映画であるから、増村保造監督が若尾文子主演で数々の傑作を撮った後の映画なので「女性目線での素晴らしいショット」がある。そして、増村監督はこの後さらに『大地の子守唄』へと傑作を連発するノリノリの時期であったと思う。
本作、あらためて観て、ホントに面白く、何と言っても社会派映画というだけでなく、サスペンス要素が強烈で楽しい。
犯人(近藤正臣)vs警察(田宮二郎)の対決構図も見事!
生涯忘れられない作品であり、傑作!
(※)初めて貰った映画チラシは宝物。映画パンフも。
<映倫No.18338>
手に汗握る
新幹線公害が動機となって展開してゆくサスペンス映画です。列車妨害のあの手この手が鉄道好きにはたまらない感じです。ほぼ同時期の「新幹線大爆破」と好対照な映画です。どっちもよくできてますね。新幹線を動脈と比喩するあたりも随分センスあると思いますが、これは原作者の貢献ですね(笑)。
田宮二郎VS近藤正臣の気障男対決
田宮二郎VS近藤正臣の新旧気障男対決はかなりの見応え充分で、これに関根恵子(現高橋恵子)と梶芽衣子に愛される熱血正義感近藤正臣の伊達男振りの真骨頂。
それにしても安全第一新幹線はちょっとした事で直ぐに止まってしまうんですね…かなり勉強になりました。
当時の新幹線公害に対する世間の感覚は第三者からは確かに他人事でしたが、当事者から見たら殺人兵器に見えていたかもしれませんね。
娯楽性があってかなり面白かったのですが、所々で警察の捜査が曖昧だったのが残念ですね。特に指名手配されている犯人が地元の製材所や犯行現場になる場所を自由に行き来出来るのはちょっと…と言った所でした。
頭脳戦。
初鑑賞。
増村保造作品にしてはやや深みに欠けているような。
新幹線の騒音公害に憤りを覚え犯行におよぶ青年医師と、犯罪心理学を学んだ警察庁エリートの頭脳戦なんだけど、推理から捜査への流れが今一つ躍動感に欠けて面白さを感じませんでした。
キャストは揃ってると思うんですけどね。
全7件を表示