劇場公開日 1953年11月3日

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「日本映画初の英国映画協会の選ぶ世界第一位作品」東京物語 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0日本映画初の英国映画協会の選ぶ世界第一位作品

2013年12月13日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

難しい

総合75点 ( ストーリー:70点|キャスト:80点|演出:70点|ビジュアル:55点|音楽:60点 )

 小津監督作品をいくつか観たが、舞台劇のように科白がかぶらないように順番を守りながら交互に言い合う不自然な演出が好きになれなくて、自分には合わないと思ってそれ以降は避けてきた。しかし「東京物語」に影響を受けたというロバート・デ・ニーロ主演の「みんな元気」がなかなか良かったので、再び小津監督作品に挑戦してみる気になった。本作品が世界第一位に日本の映画として初めて選ばれたというのも後押しになった。この作品でもやはり科白は交互に言い合うのだが、ゆったりとした雰囲気に加えて、この時代の家族の持つ距離感や礼儀というのもあってか、それは思ったほど気にならなかった。

 多くのひどい家族関係を直接・間接に見聞きしている自分としては、この作品の中に大きな展開は見いだせなかった。作品中に悪人は一人も登場していないと思う。むしろある程度年齢を重ねた大人にとって、この程度のことはありきたりのことではないだろうか。それぞれが自分の生活を築き上げて今を生きれば、立場も変わるしいつまでも昔と同じではいられないのは当然。だから話に引き込まれたというほどではない。
 しかし家族関係が変化しそれまであったであろう絆も微妙な関係になっていく姿を捉えてまとめあげた小津監督の巧みさはあった。そのような様子を演じる善良な老夫婦・それぞれの立場のある子供たち・優しさを見せる未亡人は存在感を見せた。映像は古い白黒なうえに建物内での撮影が多くてたいしたことはないが、そこにある見えない人間関係をうまく表現してあったように思う。家族はこうあるべきと思って上を見ればきりがないし、理想と現実は違うのだ。

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Cape God