天河伝説殺人事件のレビュー・感想・評価
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能の舞台で起きるミステリ作品
バブル期と伝統芸能の雰囲気を其々感じつつ、市川崑監督の映像に引き込まれて行く。
特に室内の陰影が印象的。
宗家の御屋敷で映し出される、金に烏の襖が綺麗で目を見張る美しさ。
浅見光彦を演じる榎木孝明さん、不思議な魅力を感じる方。
留置所での佇まいなど印象的。
何とも悲しいお話ですが、個性的な登場人物が面白かったです。
懐かしい題名を見かけて、YouTubeで鑑賞。
当時、主題歌は宣伝で耳にしたが、本編で流れること無く、歌番組で見たなぁ。
現代劇と市川崑の相性
脚本と撮影とキャスティング、結果面白かったか
私はただの量産型・低価格タイプの日本のおっさんなので、映画作りに批評を加えるような資格も知識もありませんが、劇場に入って観てただ圧倒・満足して出てくる(良い)洋画体験と比べるとどうしても邦画はタイトルの4点がよく気になって観てしまいます。
本作は、
脚本:◯ 凄いとか緻密な展開では全くなく、観ていてアラや抜けも定常的に表れていますが、ストーリーに意外な(若干飛ばしに近いが)速さと推進力があり、私が邦画にブツブツ言いたくなる時のグダグタ感やナンジャコレ展開は感じませんでした。
撮影:△ まあ偉そうに言えば巨匠・市川監督作でありながら後期に典型的な”抑えた”カット割の画で、映像刺激少なめながら観やすい感じです。私は「幸福」(1981年)が大好きなので同じ事件ものとしてあれくらいでも良かったですが(でも本作でそうしたらまんま”金田一映画様式美”に昔がえりしまいますのでやめたのでしょうか)。
ただ、さすが本作は通常シーンの暗部もそれなり奥行きが見える上手い撮影をしていて、私がまたよく文句を言いたくなる「いつも暗くて細部よく分からんくて出演者も不健康そうか脂っぽい顔かのどちらか」ではありませんでしたが、それでも進行や心象に関係ない事務所や喫茶店まで暗いのにはやはり閉口です。私が昔(洋画エコ贔屓の偏見で)あまり邦画を優先して観てこなかった理由の一つです。
キャスティング:× 重厚な俳優陣を、それまでの各位のイメージを保ちつつちょっとずつ役柄上の立場や性格を変えて配していたので、全体としては結構楽しめました。大滝秀治の神主さんの立場が金田一映画完全そのままでしたが、物語の下支え役なのでまあ良し。
ただ財前直見は、本人は美しく演技も頑張っていたようでしたが、能の宗家の跡取りにはどうしても見えないし演出的にも何が本当にしたいのか、させたいのか最終画面まで宙ぶらりんな感じでした。取ってつけたように俄かに主人公を好きになってその後もなくまま終わるし。
そして最大の難点は、最重要である犯人役が初見から「まさかこの人じゃないよな、あまりにそれっぽいし歴代の犯人だし」と思わざるを得ないところ結局極めてありがちな理由でそのまま犯人だったこと。正直お歳的にもあの役は厳しく見えたが、主人公はほぼ一目惚れしてたとのこと。主演初めこれら女優お二人や脇役女優の方々も演技が良かったように思えただけに、却ってこの若ヒロイン・熟ヒロインのキャスティングには残念感を覚えました。
そして、
面白かったか:△ 上述の2キャスティングにもっと自然さや斬新さの起用があったら、◯だったと思います。
0292 兵ちゃん、ゲスト出演で出てくれへんかな
1991年公開
市川崑監督やから、と思ったが平凡。
石坂金田一で燃え尽きているのでしょう。
わざわざシチュエーションを変える必要はなし。
ただタイトルバックは鈴を中心とした
めちゃくちゃ斬新な出来。
それと映像美は流石健在。
なぜか「二人静」は明菜ちゃんでは一番のお気に入り。
60点
初鑑賞 1991年4月27日 梅田ピカデリー2
パンフ購入
配給 角川映画/東映
浅見光彦シリーズ序章
金田一シリーズが品切れになったので今度は内田康夫で行くか!って感じ...
ひたすら市川崑タッチを楽しむ作品
画面が暗い
「女王蜂」、「病院坂の首縊りの家」での失敗のリベンジのように感じました
素晴らしい!市川崑監督の本気を感じました
そしてその本気のもの凄さを知りました
まずタイトルバックのスタイリッシュなこと!
これぞ市川崑監督です
カメラも照明も美意識の塊です
色彩の鮮やかさも溜め息がでるほど
薄暗く、薄ぼんやりしたシーンも計算の上での演出です
人呼んでコン・タッチという独特のカット繋ぎも多用されています
まるで50年代、60年代の市川崑監督の全盛期の味わいが濃厚にあるのです
音楽の使い方も現代的で見事でした
大変に満足しました
全く違う物語でありながら、市川崑監督がまるで1977年の「悪魔の手毬唄」を本当ならこう撮りたかったというスタイルではなかったかと思わせます
「女王蜂」、「病院坂の首縊りの家」での失敗のリベンジのように感じました
財前直見25歳の美しさったら!
一瞬誰か判らなかったほど
彼女は本作でブレイクしたのです
その後のドラマでの大活躍はご存知の通り
彼女が10年早く生まれていれば、「女王蜂」の主演にぴったりだったのに!
もしかしたら、彼女の為に市川崑監督は本作を撮ったのかも知れないとまで思いました
薪能の幽玄のシーンは圧倒的な美しさでした
奈良県吉野郡天川村
霊峰大峯山の登山口で実在の村です
大昔、天川村に行って劇中の宿のような所に泊まったことがあります
当時はふもとの鉄道の駅からバスで4時間はかかりました
峠をいくつもいくつも登っては下りを繰り返していくのです
それもバスが対向もできないような細いヘアピンカーブばかりの山道です
正に冗談抜きの秘境です
空気からして違います
霊気というようなものがあるのです
ですから、当然ながら天川村でロケはとてもできず、伊豆修善寺などの全く違うロケしやすい場所で撮影されています
近鉄吉野駅だけは実際に撮影されて登場します
いまでは道が大変に整備されて、1 時間も掛からないようです
天河神社も実在します
正式には天河大辨財天社というそうです
神楽殿という能舞台もあります
音楽の神、芸能の神と称えられています
但し、神様に呼ばれないと辿り着けない神社という伝説があります
観光化されていない本物の日本の秘境はまだそこにあります
ぜひ映画の舞台としてロケして欲しいところです
原作もつまらなきゃ映画もつまらない
あんま話が入ってこない。
フリーライターの浅見光彦(榎木孝明)が、事件に巻き込まれる金田一方式。山奥の村、能舞台、お面の裏に毒薬、鐘落ちる、腹違いの息子。浅見の兄に石坂浩二、加藤武の刑事「分かった!」、岸恵子の案の定な犯人設定。シーンのけつが食いぎみに切られる演出に驚いたが意図がわからなかった。
名探偵・浅見光彦、妖気の地を駆ける!
角川映画15周年記念作品第2弾。
DVDで鑑賞。
原作は既読です。
予告編やポスターのキャッチコピーにも書いてあった通り、金田一耕助シリーズの再来を目指したのでしょうが、非常にテンポが悪く、非常に退屈な物語になってしまっていました。油断すると寝てしまいそうになりました。
露骨に金田一耕助シリーズを意識し過ぎたせいもあるんじゃないでしょうか? 加藤武の役柄なんか、そのまんまですもんねぇ…。「第2弾製作決定!」のアナウンスが流れたものの、角川春樹の逮捕や配給収入の不良が重なって、立ち消えになってしまうと云う不運にも見舞われました。
しかし、天川村に漂う妖気と云うか、空気感や雰囲気を収めることには成功しているなと感じました。吉野地方のどことなく神秘的な部分と、日本の伝統芸能である能の持つ独特な存在感が、まさに"ディスカバリー・ジャパン"にぴったりの題材だな、と…。市川崑監督の卓越した映像センスが充分に楽しめたので、そこは大変観応えがありました。
東京と云う大都会と世間から隔絶されている秘境とを結ぶ、悲しき連続殺人を解き明かす浅見光彦の推理はとてもドラマティックで、金田一にも負けていないなと思いました。
しかし、榎木孝明のメイクが白過ぎて、めちゃくちゃ不気味なのがいただけませんでした。市川監督が得意とする、光と影の演出の一環だと云うことはなんとなく分かるのですが、あまりにも白いので、まるで死人みたいでした。
「悪魔の手毬唄」でも強烈な印象を残した岸恵子が本作にも出演していました。コケティッシュな魅力は相変わらずで、穏やかさの中から溢れ出す情念を表現するのが本当に上手い女優さんだなと、改めて思いました。
※鑑賞記録
2019/? ?/? ?:DVD
2021/09/21:Amazonプライム・ビデオ
※修正(2021/09/12)
ぶつ切りのカットと冴えない演出
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