てなもんやコネクション

劇場公開日:

解説

大阪、東京、香港を股にかけて巨大企業相手に戦いを挑む一家とそれに携わる人々の姿をパワフルに描く。脚本・監督は「ロビンソンの庭」の山本政士。共同脚本は宇野イサム。撮影監督はCF出身の玉井正誠がそれぞれ担当。日本=香港合作。

1990年製作/119分/日本・香港合作
劇場公開日:1990年9月15日

ストーリー

九扇は生粋の香港っ子。クイズに当たって日本旅行に来たものの、迎えに来たのは片言の広東語しかできないクミ。おまけにとんでもないドケチ・ツアーだった。そんなツアーの途中、何者かに荷物を盗まれてしまった九扇とクミは、占い師のお告げで九扇の服を着込んだ犯人茜に出くわす。茜にうまくはぐらかされ、どういう訳か三人で、憧れの「東京ディズニーランド」に、と思ったが手違いで「浅草花やしき」に行ってしまう。だが、そこで思わず“香港旅行ご招待”が当たった九扇はクミや茜と共に無事香港に帰国。クミと茜は九扇の家に住み着き一家のインチキ商売の片捧を担ぎ始めるが、そんな時、変な日本人が一家を訪ねて来た。それは世界の資本を動かすほどの大企業で、最新ビル建設のために一家の土地を地上げに来たのだった。こうして一家は巨大な組織と対決するハメになった。そんなある日、オヤジとの喧嘩の末、村から出て行った茜は、組織の男矢崎に連れられ日本領事館で豪華な食事を御馳走になり、矢崎は茜に「契約書に一家のサインを貰ってきて欲しい」と協力を依頼するのだった。茜はサインひとつで何でも買い物できる組織のクレジットカードをもらうことで引き受けるが、ふとしたことから、そのカードが偽造できることを知る。そして苦心の末、2000枚のカードを偽造した茜は、それをあちこちにバラまき、その利用額が全世界で2000億円を越してしまうのだった。こうして地上げ計画は中止となり、一家に平和が戻ってきたのだった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.5子供ギャング

2023年3月6日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

楽しい

単純

難しい

香港が中国に返還される意味を知る由もない子供がカード偽造、凄腕ハッカーとして全ての事を治めるのは幼き子供たち、大人は滑稽な姿ではしゃいでいるだけ、まるで香港版『シティ・オブ・ゴッド』みたいで大阪の釜ヶ崎をリアルに映し出す西成の日雇労働者と比べても不甲斐なく思える大人たち。 そんな西成区を代表するような役柄の茜が汚くて見るに堪えない奇想天外で室田日出男に様変わり、端折る物語展開がテンポ良く真面目に観る気も失せてしまう適当さと難解に思える山本政志の頭の中、これ観ちゃうとニューヨークで撮った『リムジンドライブ』が本作の劣化版にしか思えない。 フザけて馬鹿げた世界観が楽しくも勝ち取る為の戦いに挑む勇ましい物語でもある筈デ!?

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万年 東一

4.5ソープランド・自由の女神

2022年4月1日
iPhoneアプリから投稿

ひょんなことから日本旅行にやってきた香港人の九扇と彼をガイドする自称旅行会社職員のクミ。しかし行き先は西成だの浅草だのといった貧乏臭い下町ばかり。特に西成の描写はこれでもかというくらいたっぷりで、カメラに追い回される被写体も演者などではなくホンモノの西成区民だ。 「撮らんといてーや」と恥ずかしそうに笑うオッサン、昼から酒をかっ喰らうオッサン、手を叩いて陽気に歌い出すオッサン、西成労働福祉センターに長蛇の列を作るオッサン。幻想的に誇張されたジャポニズムと下町的リアリズムがカオスに入り混じり、水と湯を交互にぶっかけられているかのようなトランス感覚に陥る。 そうかと思えば今度はクミが香港に渡る。クミはしばら水上の無法地帯に浮かぶ九扇のバラックハウスで悠々自適の生活を送るが、日本人実業家の矢崎という男がやってきて彼らに立退を要求する。 水道もガスも止められたバラックハウスが少しずつ朽ちていくシーンはとても印象的だ。映し出される家具や道具をよく見てみると、ナショナルとかディズニーとかいった先進諸国の刻印が記されている。しかしそれらは今や腐り落ち、廃液を垂れ流している。ふだんは問題なく使えていたはずの先進諸国の諸製品が、本当の危機にあってはまったく役に立っていない。 九扇一家をめぐるこうした状況は、そのまま西成や浅草を取り巻く状況とも符合する。西成も浅草も巨大資本による区画開発でダンボールハウスや旧来の露店が追い払われかけている。ふだんあれだけ大きな顔をして街を席巻するマクドナルドやディズニーランドは、こうした状況に対してはダンマリを決め込んでいる。 言わずもがな、九扇一家は歴史に翻弄される香港そのものだ。大国に奪われ、そうかと思えば譲渡され、常に主導権を持つことを封じられてきた香港。つまり本作において西成(浅草)と香港は被虐者という共通項を得て密接に結ばれ合うわけだ。 西成や浅草を経たうえで香港へと平行移動する迂回的なストーリー構成はかなり巧いと思う。というのも本作が邦画である以上、香港という遠く隔たれた国の現況について直接的に連帯することは難しいからだ。そこで、西成や浅草といったナショナルな問題圏を経由したうえで香港へ到達する。そうすることで我々は香港をめぐる情勢をアクチュアルな自分ごととして捉えることができる。 いっときは自宅を売却しかける九扇一家だったが、心機一転してどうにか矢崎から自宅を守り抜こうと奮闘を開始する。不条理を不条理で跳ね返せるのがフィクションの醍醐味だと言わんばかりに妙策・妙案が飛び交い、その結果矢崎は九扇一家の土地から身を引かざるを得なくなった。5歳くらいのガキが矢崎たちの口座をコンピューターハックするあたりのくだりは本当に笑えた。 とはい物語は完全に荒唐無稽な夢物語に終わらない。終盤の矢崎とその付き人の龍さんのやりとりはかなり深刻だ。飼っていた鳥を空へと放ったと言う矢崎。しかし龍さんは、長らく人の手で飼われていた鳥は野生で生きていくことができないのだと言う。2022年、香港は今なお危機的状況にある。中国の香港国家安全保護法に反対する人々が銃で撃たれたり逮捕されたりしている。二人の何気ない会話はこうして現実の歴史に暗い影を落としているのだ。 自由の女神と摩天楼が聳え立つニューヨークのイラストの上が下品なネオンサインまみれの大阪チックな落書きが施されるラストショットはまさに完璧としか言いようがなかった。こういう映画はそうそう拝めるものではない。 ファッキンアメリカ。俺たちはここにいる。

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因果