「人形には負ける」近松物語 きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
人形には負ける
当代きっての俳優たちに濡れ場を演じさせないその抑制が、失敗の原因だと感じた。
主、大経師が、女中お玉にも後妻おさんにも手を出し放題であったことを、女中の寝間で今少しあからさまにしなければ、物語の何が発端であるかの導入が欠如しているというものだ。
井原も近松も、庶民の心情を爆発させた作家。
お上の「掟」を、大経師には“仕置き”としてその結末に快哉を叫び、同じ決まりごとで裁かれるおさんたちについては、掟の無情さへの抵抗という矛盾を合わせ持つ庶民。
そこが面白いのだ。
しかし大経師の悪役ぶりが描ききれていないゆえに、コントラストがボケた。
原作と原原作を知っているなら、実写化の表現の不足を頭中で補完して、映画の二人に感情移入も出来ようが、
いまの時代にはそれは無理というもの。
この102分で観客の涙をしぼるのはたいへん難しい。
人形ならば、もっと激しい情念と愛欲の迫りを観客にイメージさせて、客席を動悸の渦に巻き込んだはずだ。
長谷川と香川の道行きや、痛めた足への抱擁、そして舟の幕、
いずれも人形の動きを俳優の動作に写して演出しているが、いかんせんそこで音声が邪魔をした。
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星のナターシャnovaさんのコメント
2021年8月28日
コメントありがとうございます。
あのひょいと担ぐ感じ、私は女ですが小柄な同僚で
一度、試してみたいです。
人形の方が~と言うのはを何度も観ておられるのでしょうね。
機会があれば人形浄瑠璃、観てみたいです。