「正直なところ、宇崎竜童という俳優は主演ではあまり輝かないのです脇役でこそ光り輝く人であったということです」TATTOO<刺青>あり あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
正直なところ、宇崎竜童という俳優は主演ではあまり輝かないのです脇役でこそ光り輝く人であったということです
見応えがありました
大いに満足しました
1982年公開
宇崎竜童は本作前年の1981年「駅 STATION」で日本アカデミー賞助演男優賞を受賞したばかり、本作で満を持しての初主演です
しかし正直なところ、宇崎竜童という俳優は主演ではあまり輝かないのです
脇役でこそ光り輝く人であったということです
関根恵子は美しく、演技力も高く良い仕事ぶりです
「うち、男をあかんようにする女なんかな」
「うち、ほんまもんの男が好きや」
この二つの台詞は心に残ります
高橋伴明監督と彼女は、本作が縁で結婚するのはご存知の通り
特に圧倒的なのは母親役の渡辺美佐子の存在感です
三菱銀行北畠支店人質事件は1979年1月26日に実際に起きた事件
その犯人の梅川昭美が主人公ですが、事件そのものは描かれません
突入寸前のシーンと篭城中のほんのワンカット程度です
主人公の名前は竹田明夫となっています
冒頭は警察に撃たれ警察病院に運び込まれ、医師から竹田にはタトゥーがあるというシーンからはじまります
最後は母親か、遺骨箱の上に、竹田が変装用にとっさに使った帽子を乗せて夜の地方鉄道の駅に降り立つところで終わります
では事件がクライマックスでなければ、何かそうなのかというと、鳴海清の登場です
竹田が鳴海と暮らしている三千代を訪ねて、竹田と鳴海の二人が会話するシーンこそがクライマックスだと思います
劇中でも鳴海と名乗ります
但し下の名前は、劇中の新聞では清でなく、不詳として某となっています
彼は1978年7月11日京都三条のクラブベラミで起きた山口組組長田岡一雄銃撃事件の犯人がモデルです
彼もまた実在の男です
銃撃事件の2ヵ月後六甲山中に壮絶なリンチの末に腐乱死体となって発見されます
山路和弘が演じますが強烈な印象を残します
そして鳴海が交際していた16歳の愛人の美容学校の少女が、鳴海の死後に三菱銀行人質事件の梅川の愛人になっていたという世にも不思議な実話をモチーフにしていることです
但し、関根恵子が演じる三千代は27歳くらいに設定され、竹田と鳴海はオーバーラップして交際していることになっています
16歳の少女は、麻雀屋で知り合う少女に置き換えられているようです
袋ラーメンを食べようとする三千代を「栄養が無い!」と食べるなと殴るシーンは、人質事件の時に犯人が警察の差し入れたカップラーメンを「栄養がない」とサンドイッチを追加で差し入れさせた実話からの由来
また冒頭の医師が、竹田を診て「タトゥーあり」というのは、警察が鳴海の腐乱死体の刺青を赤外線で読み取って本人と特定した実話からの由来だと思います
助監督に若き日の周防正行の名前があるのが目を引きました
主題歌は、宇崎竜童「ハッシャバイ・シーガル」
素晴らしい楽曲で本編にマッチしています
ただし映画の中での音響がよくなく、あまりクリアーに聞こえないのは大変残念
でも当時の映画はみんなこんな音響だったのも確か
40年昔の大阪
少しも変わっていないところと、様変わりしているところもあります
そこも見所です
音響もまたしかりなのでしょう