太平洋の翼のレビュー・感想・評価
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大空に舞い 激戦に散る 精鋭部隊
太平洋シリーズ三部作第3作。
TELASAで鑑賞。
本土防空のため帝国海軍航空隊の精鋭が招集されました。特攻攻撃が戦法の趨勢を占めていく中、個性的なパイロットたちは大空を駆け、空戦の中で死ぬことを選んで戦い続けました。
絶望的な戦況において奮戦するも、次々にその数を減らしていく精鋭部隊。当時は誰もが“散る桜”…。なんて悲惨な時代だったのだろうかと心が痛くなりました。
渥美清などの陽性な雰囲気の俳優が演じている隊員たちが、戦艦大和の菊水特攻にたった4機の直掩機として同行し、激戦の中で散華したエピソードが壮絶でした。
円谷英二特技監督が演出したドッグファイトは、操演とは思えないスピーディーさで目を瞠りました。迫真の特撮シーンが松林宗恵監督の人間ドラマ演出と融合して悲惨さを浮き彫りにし、戦争への怒りを画面から滲ませているように感じました。
松山上空の大空中戦はもの凄いシーンです 円谷英二は元々飛行機に憧れて特撮に入ってきた人なのですから当然です!
特撮は円谷英二と誇らしくタイトルバックにでます
当然です
日本の特撮は戦争映画の特撮から始まったのですから
怪獣映画は1954年のゴジラに始まります
戦争映画の特撮は1942年の「ハワイマレー沖海戦」から同じ円谷英二の手によって始まったのですから、こちらの方こそ特撮の本流と言えるかもしれません
終戦までに円谷英二は「ハワイマレー沖海戦」を含めて3本を撮影しています
戦後はゴジラまでに戦争映画を2本撮っています
本編監督は戦後の2本のどちらも本多猪四郎です
つまりプレ・ゴジラであったのです
そしてゴジラの大ヒット以降、本多猪四郎監督は怪獣映画の方を担当していくことになります
戦争映画の方は本作の本編監督の松林宗恵が3本連続で担当することになった訳です
彼は戦時中は少尉として陸戦隊150名を指揮した海軍出身者であることから適任でした
戦争映画と怪獣映画、どちらも特撮は同じ円谷英二です
まるで表と裏の関係のようなものですが、ゴジラ以降はどうも戦争映画が裏のようになってしまいました
本作は軍事マニアには有名な343空の活躍を描きます
343空は実在して、1945年3月19日の松山上空大空中戦はことに有名で伝説となっています
映画のお話はかなりフィクションです
航空機畑の参謀の発案で、エースをかき集めて部隊を編成し、新鋭機の紫電改を揃えたこと
その空中戦で五十数機撃墜したこと
各隊が、それぞれ新撰組、天誅組、維新隊と名乗っていたこと
特攻を禁じたこと
これくらいはあってますがあとは映画の中だけのお話です
お話は前半は、独立愚連隊西への海軍版ぽい感じで343空が編成完了するまでの物語です
登場する潜水艦の艦長が「潜水艦イ57降伏せず」と同じく池部良というのが嬉しいです
本編監督は同じ松林宗恵監督なんです
艦番号は本作では分からないのですがイ57号でも時系列ではお話が繋がります
後半はいよいよ343空の活躍です
343空の千田司令のモデルは、源田実大佐で実在の人物です
この人は若い時は日本海軍にあって大艦巨砲主義を批判し、源田サーカスと呼ばれたアクロバット飛行を自ら披露して日本の航空戦力の黎明期を切り開いた人です
そして真珠湾攻撃、ミッドウェー攻撃には航空参謀として参加しています
つまり日本海軍の航空戦力の頭脳、企画者そのものになった人物なのです
だから343空を企画編成できたのです
しかもこの人、1940年になんと日本海軍士官として英国に行き、バトルオブブリテンの大航空戦を英国側で観戦しているのです!
1969年の英国映画「空軍大戦略」はその航空戦を描いていますが、そこで展開される迎撃の仕組みは、本作で描くものに似ているのです
戦後は航空自衛隊の創設期に加わり、最終的には航空幕僚長つまりトップに登りつめます
映画の不毛地帯で丹波哲郎が演じた空将補のモデルとおもわれます
エドワード空軍基地で新鋭超音速ジェット機のテスト飛行を行うのは映画では若手パイロットですが、当時55歳の空将の航空幕僚長自らやってのけています
そして本作公開の前年の1962年4月に定年まで1年を残して退官、7月に参議院議員に立候補して当選、以来議員を引退するまで24年務め、国防委員会など日本の安全保障に尽くされた方です
紫電改の強さは、ガンダムで例えると
ゼロ戦はザク、紫電改はゲルググに相当します
ミニチュアのモデルは実に正確に特徴を捉えています
塗装、マーキングも正確です
米軍戦闘機のコルセア、ムスタングもよく出来ています
これらはガンダムに例えるとジムです
松山上空の大空中戦はもの凄いシーンです
怪獣映画での航空自衛隊の飛行シーンを想像してはなりません
遥かに優れた本気を出した繰演、特撮です
数十機の戦闘機が縦横無尽に飛び交う空中戦は観たことないものです
「空軍大戦略」のバトルオブブリテンよりも迫力があります
戦闘機の旋回する挙動は軍事マニアも納得の出来映えです
円谷英二は元々飛行機に憧れて特撮に入ってきた人なのですから当然です!
戦艦大和もでてきますが、1981年の映画「連合艦隊」のミニチュアよりも出来が良いと思います
そちらは円谷英二の弟子の中野昭慶の手になるのですが、実在感、重量感は師匠の方が上です
特撮マニアなら本作を観ないことにはお話になりません
キングコング対ゴジラは1962年8月公開
そして本作が1963年1月公開
マタンゴは本作と同じ1963年の7月、海底軍艦は12月の公開です
本作で唯一登場する女性は、翌1964年公開のモスラ対ゴジラ、三大怪獣 地球最大の決戦でヒロインを務める星由里子です
円谷特撮の最高潮の時代の作品を観ないでおくことはできないはずです!
最後に
紫電改のタカというちばてつやの漫画がありますが、少年マガジンに連載開始されたのが1963年の7月です
本作は同年の1月3日の公開ですから、本作がかなり話題になって連載が企画されたもののようです
内容も似通っています
ファントム無頼でのコールサイン新撰組は343空の新撰組の由来だと思います
特技監督、円谷英二の戦闘機映画
太平洋戦争末期の日本が暗澹たる時期を迎えていた時の話にしては、重苦しさはあまり感じられず、戦地からパイロットにスカウトされた3人の大尉を中心とする、戦時下の青春群像劇のような感じでしたが、「あと、5000機しか軍用機はなく、それらすべてを特攻にして敵に向かうしかない」と司令部で決定されても、「人間は爆弾ではない」と、決して最後まで挽回を諦めない三船俊郎の強い心意気には、そうだそうだと応援したくなるものがありました。
滝大尉が機体の重量を減らすため、瀕死の状態の兵士やすでに亡くなった仲間を、機体から放棄するシーンが痛々しかったです。
三船俊郎、西村晃、加山雄三、夏木陽介、渥美清、佐藤允……立派な俳優陣で男気がすごかったです。佐藤允という人のキャラが印象的で、なんか、すごくかっこよかった!
最初のテロップで、
特技監督:円谷英二、と出たので、びっくりました。
円谷英二と言えば、怪獣映画専門だと思っていました。あとでwikiで調べたら、多くの戦争ものにも携わっており、操縦士を夢見て飛行学校へ行った過去もあったそうで、映画界に多大な功績を残した、偉大な人だったのだと改めて知らされました。
終戦記念日に見たのですが、戦争から続いて平和があるのだなと思ったと同時に、いろいろ勉強になりました。紫電改、松山343航空隊など、実在のものですが、その存在すら知りませんでした。
合掌
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