太平洋の翼

劇場公開日:

解説

「吼えろ脱獄囚」の須崎勝弥が脚本を執筆、「新・狐と狸」の松林宗恵が監督した戦争もの。撮影もコンビの鈴木斌。

1963年製作/101分/日本
原題:Attack Squadron!
配給:東宝
劇場公開日:1963年1月3日

ストーリー

昭和十九年六月、無敵を誇った零式艦上戦闘機も敵新鋭機の前に衰えをみせ、制空権を失った日本海軍の前途は暗澹たるものがあった。大本営では特攻攻撃以外にすべはないという意見が圧倒的だったが、一人千田航空参謀は新鋭機“紫電改”の完成とともに精鋭をすぐって制空権を奪い返し、それを突破口として戦局を打開すべきであると主張した。意見は容れられ優秀な三人の搭乗員、安宅大尉矢野大尉、滝大尉を四国松山基地へ集結させるよう太平洋各地へ打電された。すでに敵の艦隊に取り巻かれてぃる硫黄島から、安宅は魚雷艇の追跡をかわしながら命からがら味方の潜水艦に救助された。続いてラバウルにある矢野は、もって生れた機智と度胸で米軍の魚雷艇をぶんどって。比島の滝は燃料も少ない丸腰の輸送機を駆って帰遷した。はためく幟に大書した第三四三航空隊。紫電改七二機を背に三飛行隊各二四名が勢揃いした。司令千田は、最後まで生き抜いて戦うこそ戦闘であると特攻を許さなかった。昭和二十年三月十八日、敵は四国九州地区へ向け艦載機の大群を放った。七二機の一斉離陸。紫電改は雲間をついて一挙に狼狽する敵機に襲いかかった。落下炎上する敵機の数は紫電改の数倍に及び、三四三航空隊の勇名はとどろいた。軍令部は直に受持区域の拡大を強制してきた。可動機数が減少している今、それは無謀だった。三本の矢も一本になったら--。豪放に出発していった矢野は劣勢をかって遂に散った。時を同じくして、片道燃料だけで戦艦大和出撃の報が伝わった。大和に限りない愛着をもつ安宅らは千田の命令をも無視して、大和護衛のため沖縄へと向った。そして大和と共に永久に姿を消した。唯一人生き残った滝は、何かに憑かれたかのようにB29二百機の編隊めがけてまっしぐらに突き進んでいた。その頃、基地では、千田司令が滝に帰還命令をだしていた。そして、美也子も彼の生還を祈っていた。だが、滝は無線電話を引きちぎり、B29へ体当り攻撃をかけていった。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

映画レビュー

4.0大空に舞い 激戦に散る 精鋭部隊

2021年5月5日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

興奮

ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 1件)
しゅうへい

4.0松山上空の大空中戦はもの凄いシーンです 円谷英二は元々飛行機に憧れて特撮に入ってきた人なのですから当然です!

2020年9月3日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

特撮は円谷英二と誇らしくタイトルバックにでます
当然です
日本の特撮は戦争映画の特撮から始まったのですから
怪獣映画は1954年のゴジラに始まります
戦争映画の特撮は1942年の「ハワイマレー沖海戦」から同じ円谷英二の手によって始まったのですから、こちらの方こそ特撮の本流と言えるかもしれません

終戦までに円谷英二は「ハワイマレー沖海戦」を含めて3本を撮影しています

戦後はゴジラまでに戦争映画を2本撮っています
本編監督は戦後の2本のどちらも本多猪四郎です
つまりプレ・ゴジラであったのです

そしてゴジラの大ヒット以降、本多猪四郎監督は怪獣映画の方を担当していくことになります
戦争映画の方は本作の本編監督の松林宗恵が3本連続で担当することになった訳です
彼は戦時中は少尉として陸戦隊150名を指揮した海軍出身者であることから適任でした

戦争映画と怪獣映画、どちらも特撮は同じ円谷英二です
まるで表と裏の関係のようなものですが、ゴジラ以降はどうも戦争映画が裏のようになってしまいました

本作は軍事マニアには有名な343空の活躍を描きます
343空は実在して、1945年3月19日の松山上空大空中戦はことに有名で伝説となっています
映画のお話はかなりフィクションです
航空機畑の参謀の発案で、エースをかき集めて部隊を編成し、新鋭機の紫電改を揃えたこと
その空中戦で五十数機撃墜したこと
各隊が、それぞれ新撰組、天誅組、維新隊と名乗っていたこと
特攻を禁じたこと
これくらいはあってますがあとは映画の中だけのお話です

お話は前半は、独立愚連隊西への海軍版ぽい感じで343空が編成完了するまでの物語です
登場する潜水艦の艦長が「潜水艦イ57降伏せず」と同じく池部良というのが嬉しいです
本編監督は同じ松林宗恵監督なんです
艦番号は本作では分からないのですがイ57号でも時系列ではお話が繋がります

後半はいよいよ343空の活躍です
343空の千田司令のモデルは、源田実大佐で実在の人物です

この人は若い時は日本海軍にあって大艦巨砲主義を批判し、源田サーカスと呼ばれたアクロバット飛行を自ら披露して日本の航空戦力の黎明期を切り開いた人です

そして真珠湾攻撃、ミッドウェー攻撃には航空参謀として参加しています
つまり日本海軍の航空戦力の頭脳、企画者そのものになった人物なのです
だから343空を企画編成できたのです

しかもこの人、1940年になんと日本海軍士官として英国に行き、バトルオブブリテンの大航空戦を英国側で観戦しているのです!
1969年の英国映画「空軍大戦略」はその航空戦を描いていますが、そこで展開される迎撃の仕組みは、本作で描くものに似ているのです

戦後は航空自衛隊の創設期に加わり、最終的には航空幕僚長つまりトップに登りつめます
映画の不毛地帯で丹波哲郎が演じた空将補のモデルとおもわれます
エドワード空軍基地で新鋭超音速ジェット機のテスト飛行を行うのは映画では若手パイロットですが、当時55歳の空将の航空幕僚長自らやってのけています

そして本作公開の前年の1962年4月に定年まで1年を残して退官、7月に参議院議員に立候補して当選、以来議員を引退するまで24年務め、国防委員会など日本の安全保障に尽くされた方です

紫電改の強さは、ガンダムで例えると
ゼロ戦はザク、紫電改はゲルググに相当します

ミニチュアのモデルは実に正確に特徴を捉えています
塗装、マーキングも正確です
米軍戦闘機のコルセア、ムスタングもよく出来ています
これらはガンダムに例えるとジムです

松山上空の大空中戦はもの凄いシーンです
怪獣映画での航空自衛隊の飛行シーンを想像してはなりません
遥かに優れた本気を出した繰演、特撮です
数十機の戦闘機が縦横無尽に飛び交う空中戦は観たことないものです
「空軍大戦略」のバトルオブブリテンよりも迫力があります
戦闘機の旋回する挙動は軍事マニアも納得の出来映えです
円谷英二は元々飛行機に憧れて特撮に入ってきた人なのですから当然です!

戦艦大和もでてきますが、1981年の映画「連合艦隊」のミニチュアよりも出来が良いと思います
そちらは円谷英二の弟子の中野昭慶の手になるのですが、実在感、重量感は師匠の方が上です

特撮マニアなら本作を観ないことにはお話になりません
キングコング対ゴジラは1962年8月公開
そして本作が1963年1月公開
マタンゴは本作と同じ1963年の7月、海底軍艦は12月の公開です
本作で唯一登場する女性は、翌1964年公開のモスラ対ゴジラ、三大怪獣 地球最大の決戦でヒロインを務める星由里子です

円谷特撮の最高潮の時代の作品を観ないでおくことはできないはずです!

最後に
紫電改のタカというちばてつやの漫画がありますが、少年マガジンに連載開始されたのが1963年の7月です
本作は同年の1月3日の公開ですから、本作がかなり話題になって連載が企画されたもののようです
内容も似通っています
ファントム無頼でのコールサイン新撰組は343空の新撰組の由来だと思います

コメントする (0件)
共感した! 1件)
あき240

3.5特技監督、円谷英二の戦闘機映画

2019年8月16日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

太平洋戦争末期の日本が暗澹たる時期を迎えていた時の話にしては、重苦しさはあまり感じられず、戦地からパイロットにスカウトされた3人の大尉を中心とする、戦時下の青春群像劇のような感じでしたが、「あと、5000機しか軍用機はなく、それらすべてを特攻にして敵に向かうしかない」と司令部で決定されても、「人間は爆弾ではない」と、決して最後まで挽回を諦めない三船俊郎の強い心意気には、そうだそうだと応援したくなるものがありました。

滝大尉が機体の重量を減らすため、瀕死の状態の兵士やすでに亡くなった仲間を、機体から放棄するシーンが痛々しかったです。

三船俊郎、西村晃、加山雄三、夏木陽介、渥美清、佐藤允……立派な俳優陣で男気がすごかったです。佐藤允という人のキャラが印象的で、なんか、すごくかっこよかった!

最初のテロップで、
特技監督:円谷英二、と出たので、びっくりました。
円谷英二と言えば、怪獣映画専門だと思っていました。あとでwikiで調べたら、多くの戦争ものにも携わっており、操縦士を夢見て飛行学校へ行った過去もあったそうで、映画界に多大な功績を残した、偉大な人だったのだと改めて知らされました。

終戦記念日に見たのですが、戦争から続いて平和があるのだなと思ったと同時に、いろいろ勉強になりました。紫電改、松山343航空隊など、実在のものですが、その存在すら知りませんでした。

合掌

コメントする (0件)
共感した! 3件)
mitty
関連DVD・ブルーレイ情報をもっと見る