劇場公開日 1964年2月15日

砂の女のレビュー・感想・評価

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3.5砂の穴の中で暮らす女、何ともシュールな世界観だ。 女の家に泊めても...

2025年4月19日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

砂の穴の中で暮らす女、何ともシュールな世界観だ。
女の家に泊めてもらった男が「抜け出せなくなっていく」というから、てっきり女の魅力に取りつかれて精神的に抜け出せなくなるのかと思っていた。
ところが物理的に抜け出せない状態で、そっちかい!とのけ反ってしまう。
部落の人間もなぜあんな家が埋まらないように尽力する必要があるのかさっぱり分からない。
男も教師をしているというが、かなり感情の起伏が激しく、頭も悪そう。
男の馬鹿さ加減にはイライラするが、作品としてはおもしろい。

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省二

4.0毛細管現象?!〜武満徹の音楽との相性も素晴らしく。

2025年4月17日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

笑える

怖い

1964年公開、配給・東宝。

【監督】:勅使河原宏
【脚本・原作】:安部公房
【音楽】:武満徹

主な配役
【休暇を利用し昆虫採集する教師】:岡田英次
【砂の女】:岸田今日子

1.安部公房に挑戦する気概を称賛したい

高校生〜大学生のころ、数多くの安部公房作品を読んだ。
まさに「読んだ」という言葉がピッタリで、共感したり、批評するレベルになかった。
安部公房や中井英夫を読んでいると自分が賢くなった錯覚に陥ることができた。

安部公房の作品は難解だと思う。
本作前半の男女の「砂の湿度」に関するやりとり。
観ているうちに、どちらが正しいかわからなくなってくる。

本作は、武満徹の音楽との相性も素晴らしく、
見応えある作品になっている。
ちなみに、
『箱男』も観たが、レビュー不能だった。

2.美醜、笑い、官能の理不尽劇

全編トリッキーな脚本だ。
耳の裏が痒いと騒いだり、
ラジオのノイズのようなジリジリ音(砂を表現している?)とともに唐突に部分ドアップが流れたり、
次は何だ?となる。

官能といっても、ダイレクトなそれではない。
夜通しの砂かき作業に疲れ切った女が
全裸で横たわって眠っている。

そしてそのカラダの上にも、砂が降り積もる。

3.砂まみれのラブシーン

静岡県の浜岡砂丘がロケ地とのこと。
後半まで観ていくと、こちらまで砂をかぶっている気がしてくる。

岡田英次 44歳
岸田今日子 34歳

砂まみれのラブシーンはなかなかの迫力だ。

スコップの持ち方の指南されるくだりは笑える。

4.まとめ

毛細管現象から物語は大団円?を迎えることになる。
とにかく、すべてが不条理すぎる!
☆4.0

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Haihai

3.5マットな艶

2025年4月10日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

怖い

斬新

 昆虫採集のため砂丘地帯に来た教師。帰りのバスが無くなったため、村人の案内で、大きな穴の底で砂に埋もれそうな民家へ泊めてもらう。家には一人の女がいて、砂をかき出していた。翌朝、彼はその穴から出られないと知り。
 原作は、30年以上前に読みました。状況から「ミザリー」を、ラストは「惑星ソラリス」を思い出しました。しかし原作も映画化も、それらより前です。
 乾いた砂とは裏腹に、ジメジメと湿度を感じます。そして岸田今日子にも、マットな感じでありながら、艶も感じました。後の岸田今日子しか知らなかったので、新鮮。

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sironabe

4.0ものすごい閉塞感

2024年11月25日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

何十年も前にテレビの深夜枠で放映されていたのを観て、かなりのインパクトを受けていましたが、レンタルビデオも出ておらず、セルビデオを購入するまでもなく、そのまま記憶の奥に沈んでいました。
今回、たまたまyoutubeで再見する機会がありましたが、相変わらずの閉塞感と不快感に圧倒されました。
まず、岸田今日子の絶妙な不細工感が秀逸です。
これが、誰でも認める程の美人だったら、あの家は楽園になって脱出したいとは思わなかったでしょうが、そうではないだけに、逃れたい一心になったのだと思います。
日常でも、何とも思っていないちょっと不細工な異性から間接的な好意を寄せられ、困る事があると思います。性格も良いし別に嫌いではないが好きでもない、相手を尊重しつつも距離を保っている人間関係があると思います。
そんな相手と狭い空間に閉じ込められ、一生そのままかもと思う絶望感は半端ないと思います。
この作品はその感覚を上手く描いていると感じました。
また、最後の逆説的な行動も、諦めなのか余裕なのか、納得なのか、考えさせるものがありました。

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だるちゃ

5.0未亡人役の岸田今日子氏の段々と女に目覚めていく過程は白眉、彼女の代表作ですね。

2024年11月11日
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鑑賞方法:映画館

興奮

知的

新文芸坐さんに「安部公房生誕100年 超越する芸術・勅使河原宏との仕事」と題した特集上映。初期代表作『砂の女』(1964)『他人の顔』(1966)を鑑賞。

『砂の女』(1964)
ある高校教師(演:岡田英次氏)が昆虫採集の途中、村人(演:三井弘次氏)に出会い宿を紹介されるが、蟻地獄のような砂地の宿から逃げることができず、宿に住む女(演:岸田今日子氏)と反目し合うが、やがて惹かれ合う話。プロットとしてはスティーヴン・キングの『ミザリー』(1990)に近いかと思いきやさにあらず。

男は何度も砂地からの脱出を試みるが、井戸水が毛細管現象で手に入ることを発見したり、女との間に子どもを授かったりするなかで、ストックホルム症候群なのか、新たな自分の居場所を見つけたのか脱出に成功しても砂場に戻ってしまう。

脚本も阿部公房氏が担当しており男と女の心境の変化、失踪三部作の第1弾として現代人の心の病巣をしっかりと描かれていましたね。
監督の勅使河原宏氏は流石、東京藝術大学日本画学科、洋画科卒業だけあって、どのシーンも美麗。特にもうひとつの主役である砂丘の風紋や崩れ落ちるシーンは白黒映画ならではの陰影、カラーでは再現できませんね。二人の体にこびりつく砂粒もリアルで砂場の生活の過酷さを見事表現していました。

岡田英次氏の演技も素晴らしいですが、未亡人役の岸田今日子氏の段々と女に目覚めていく過程は白眉、彼女の代表作ですね。
また村人役の三井弘次氏のいかにも訳ありで底意地が悪そうな感じも良かったです。

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矢萩久登

2.5本当に真摯な映画化作品

2024年6月7日
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石井岳龍による『箱男』が製作されていることもあってか、新文芸坐で本作がかかっていたので鑑賞。

率直に、真摯な映画化作品だったと感じた。原作の閉塞感やテクスチャが上手い具合に映像に落とし込まれている。高低差のある砂の崖をちゃんと用意したり、家屋の内部まで砂を敷き詰めたりと、原作にあった砂の鬱陶しさをきちんと再現していたのが偉い。

特に感心したのは、原作同様に隣家の様子を一切描かなかったことだ。原作は隣家の存在を示唆しつつもそれを一切描かないことによって寓話としての浮遊性を獲得していた。本作もまたそこに無駄な差し引きをしておらず、寓話としての原作の強度を継承できていた。

また脚本にも過不足がなく、数年前に読んだ原作の内容をはっきりと思い出すことができた。万物が機能に還元されてしまう砂の集落に放り込まれた男の苦悩を通じて、現実世界もまた曖昧な社会システムによってかろうじて個人なるフィクションが担保されているだけの虚構世界であることを喝破してみせた安部公房の文学的手捌きにただただ圧倒される。

とはいえ本作は「真摯な映画化作品」であっても映画としてはそこまで傑出していない。昆虫や肉体を接写することで生物の持つグロテスクな側面を誇張するような映像表現は半世紀以上前にルイス・ブニュエルが散々試みていたことだし、意味があるとは思えないところで手持ちカメラを使っているのも興を削ぐ。覗かれた穴側からのフレーミングや太鼓の鼓動による焦燥感の表現なども言いたかないけど凡庸だ。

勅使河原宏の映画を観るのは本作が初だが、どうにもセンスだけで撮っているような感が否めない。無論、上記のような諸演出を思いつくことができるのは彼の卓越したセンスゆえだとは思うが、百余年を数える映画史の前で臆面もなくそれを誇示できるのはいささか傲慢なのではないか。

ただ、繰り返すようだが映像の完成度と原作の再現性という点においては本作は非常に優れている。映画史とかどうでもいいよ!という方には普通に自信を持って勧められる一作だ。

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因果

4.0人間の個としての独立 人間社会の個の封じ込めと個の埋没 その不条理 それでは陳腐かもしれません でもそうとしか表現出来ません

2023年1月17日
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鑑賞方法:VOD

人間は犬じゃない
鎖をつなぐわけにはいかないよ

1964年公開、白黒作品
原作は安部公房の1962年の小説
川端康成の次に日本人でノーベル文学賞をとるのは彼であろうと目された作家でした

作風は本当に難解
本作と同じく何が何だか皆目わからない
本作はその原作が難解そのまま映像となっていて、その難解さを忠実に映画化したと言えます

なぜなのか訳もわからず蟻地獄のようなところに閉じ込められ生活することを強要される物語
逃げようとするのだがどう足掻いても逃げられない

家庭生活というものはそんなものだ
文字通り砂を噛むような単調な毎日
そこから逃げて出そうとしてもどうにもならない
いつしかあきらめてそこに安住している自分を発見する
単にそのような底の浅い物語のようにも思える
しかし、その程度の幼稚な内容ではないし、そんなものを書くような原作者ではないともわかっている

ところで
プリズナーNo.6というイギリスのテレビドラマをあなたはご存知でしょうか?
伝説のカルト作品です
日本では最初1969年にNHKで放送されました
以後民放などアチコチで再放送されました
放映当時まだ子供でしたが、訳も分からないくせに何かしらとても惹きつけられて夜遅い時間帯なのに夢中で毎回視ていました
本作はそれと似ています

あるいはジョージ・オーウェル「1984年」にも似ているかも知れない

その「プリズナーNo.6」は一見、スパイもの
辞表を上司に叩きつけたばかりの元イギリス情報局員が拉致されて、外界から隔離された不思議な村に閉じ込められ何故辞めたのかをしきりに問われるが主人公は絶対に口を割らず、毎回隙を見て村からの脱出を試みるという物語

これも東西冷戦を背景にした共産圏の管理社会の当てこすりのようで、そんな程度のそこの浅いものではなかったのです

人間の個としての独立
人間社会の個の封じ込めと個の埋没
その不条理

簡単に言えばそんなところなのでしょうか?
それでは陳腐かもしれません
でもそうとしか表現出来ません

プリズナ-No.6はそこに安住するならば快適な村
砂の女の家は、絶えず不快な砂まみれ
表裏一体です

本作もそういう作品なのだと思います

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あき240

3.0海辺の貧しい村の住民に捕らわれた昆虫学者の運命とは⁉

2022年11月4日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

これは私の母国(日本)の映画だが、あまり好きではない。砂の世界を長時間さまようという映像体験は、見ていて不愉快です。そもそも安部公房の原作はそれほど良いものではないが、海外では高く評価されている。とはいえ、この映画もいいところがないわけではない。ただ、不要な砂地獄の映像体験が、果たして、同じシュルレアリスム映画「イレイザーヘッド」と比較した場合、同質のものであるかは疑問である。とはいえ、自国の映画が高く評価されるのは嬉しいことだ。

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茂輝

4.0人間の根源的な生命力を特殊な環境で描き切った日本映画の力作、その驚嘆と圧倒

2022年7月13日
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鑑賞方法:映画館

観念的で幻想的で閉塞的で脅迫的で実に興味深い映画の力作。突然遭遇した特異な環境で、あらゆる生命力を発する人間のしぶとさと美しさと醜さ。原作の寓話の世界を見事に映像化している。このような映画は世界の他の国では作られないであろうし、作られていても日本公開されないであろう。正に唯一無二の存在感。蟻地獄のような世界観で物語が語られる特殊さに唖然としながら圧倒されてしまった。殆ど主演ふたりだけの登場人物で、岸田今日子の不思議な魅力と個性が主人公に適格すぎて、これも高評価の要因に挙げられる。

  1976年 6月26日  フィルムセンター

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Gustav

4.0甘美な監禁。

2021年4月17日
iPhoneアプリから投稿

気持ち悪さと美しさの割合が丁度良い岸田今日子が見たければこれ。
閉所というユートピアでの甘美な監禁。
原作を再読したい。

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きねまっきい