劇場公開日 2005年6月18日

「殺人を犯してまで隠したい過去」砂の器 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0殺人を犯してまで隠したい過去

2025年1月8日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

1974年作品。
原作・松本清張。
監督・野村芳太郎。脚本・橋本忍と山田洋次。
社会派ミステリーの傑作です。

ピアニストの和賀(加藤剛)の殺人の動機・・・それは生い立ちにあった。
父親(加藤嘉)が、ハンセン病の患者だった過去。
今では感染しないと証明されていますが当時は忌み嫌われた病でした。
父親と幼い和賀は巡礼の汚れた白装束に身を包み、
放浪の日々、物乞いをする乞食のようにして生きてきた。
父は衰えた腕を杖に頼り、幼ない和賀はいつも腹を減らしていた。
そして成人してピロアニス・作曲家として有名になり、
良家の娘を婚約をしていた。

《ストーリー》
ある日、見知らぬ男から、懐かしい、成功されて嬉しいとの電話が来る。
その男は人の良い刑事だった。
和賀は過去を知るその男の存在を、受け入れることは不可能で、
ただただ抹殺したい・・・それしか考え付かなかった。
そして彼は用意周到な完全犯罪を目論むのです。
過去や隠したい秘密・・・松本清張の小説では、隠したいことが、
殺人の動機になります。
「ゼロの焦点」も「波の塔」も「点と線」もそうです。
過去は変えられないから、消すしかない?
殺人者は思い込みます。

ラストでは、和賀のキャリアの絶頂期と言えるピアノ協奏曲「運命」を、
和賀が自らピアノ演奏する姿に、
父と息子が海辺を放浪する巡礼のシーン、
過去の回想シーンが、オーケストラとピアノ演奏の美しさと対照して
それに被さる親子のみすぼらしさ、哀れさが、
津波のように覆いかさぶってくるのです。
鮮烈で心揺さぶられます。
主演の加藤剛(日本人の良心のような人の犯罪者役、)
父親役の加藤嘉(惨めさを演じたら、右に出る人はいない、)
ペテラン刑事の丹波哲郎、新米刑事の森田健作。

原作・監督・脚本・俳優
全てが最高の役割を果たした傑作です。
またジャケット写真の美しさは比類ない。

琥珀糖
Mr.C.B.2さんのコメント
2025年1月9日

原作からピアノ協奏曲「運命」に変えたのが良かったですね。
すいません、新米刑事は森田健作ですね。

Mr.C.B.2
みかずきさんのコメント
2025年1月8日

本年も宜しくお願いします

共感ありがとうございます。
本作、マイベスト1です。
毎年、
本作を超える作品が現れることを期待して映画生活を続けています。

では、また共感作で

ー以上ー

みかずき
ぷにゃぷにゃさんのコメント
2025年1月8日

お父さんがくしゃくしゃの顔で「知らない」と言うシーンは、ボロボロ泣けます。
思い出しても泣けます(ToT)

ぷにゃぷにゃ
talismanさんのコメント
2025年1月8日

音楽、編集、過去の悲しさ、とてもいい映画

talisman