「じゅんぷうまんぱん」砂の器 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
じゅんぷうまんぱん
中学生の頃、ハンセン病や社会派サスペンスの意味も知らずに映画館へ観に行った。丁度推理小説が面白くなってきた年頃でもあり、江戸川乱歩ファンから脱皮したかったこともあって大人向けの推理小説にチャレンジしたかったのです。その映画がデジタル・リマスター版として甦った。リピートといっても30年ぶりの鑑賞になるのです!
当時はまだ差別語として確立していなかったため、“ライ病”と堂々と言っており、同じ年に公開されたスティーヴ・マックィーン主演の『パピヨン』でもライ病と字幕に書かれていた。中学生にはその病気の重さが当然理解できるはずもなく、単にサスペンスとしての楽しみかたしかできなかったものです。しかも同級生は誰も観てない・・・
石川県の風景も登場するので、劇場内ではざわざわし始めました。「あれは山中温泉よ」などといった声も聞こえてくる。島根県の出雲亀嵩などは実際の地名なのに、石川県は上沼郡大畑村という架空の地名なのだ。車は白山方面へ進み、親子の故郷となる村に到着するのですが、多分岐阜県白川郷だろう。
大人になってから観ると、なぜこうも感動できるのでしょう。巡礼のような迫害された親子の旅。この旅のシーンが何の説明もなく、加藤剛が交響曲「宿命」を指揮するシーンとオーバーラップし、彼の生きた人生の苦悩と父への想いが音楽の中に溶け込んでくるのです。真っ赤な夕陽の背景を基調として、立ち寄る先でいじめられる親子。ノスタルジーを通り越して、美しい日本の風景の中でも弱者を虐げる心の醜さが浮き彫りにされる。そうした過酷な親子の前に現れる聖人のような男。この辺りで涙腺が緩みっぱなしへ・・・
そして体が震えるくらいに号泣させられたのは加藤嘉の演技。息子に会いたいけれども「知りません」と言うしかない心の葛藤と止めようのない慟哭。劇場でしか味わえない悲しみの空気を感じました。
残念なのは、丹波哲郎と森田健作。彼らの二人だけの会話はなぜか全てアフレコっぽい。一本調子の大霊界男と、声が裏返りそうな「吉川くん」男。そのままの録音だとかなり聞き取りにくいのでしょう。そして“順風満帆”だと思うけど“じゅんぷうまんぽ”とおっしゃった刑事。それでも、島田陽子の初々しいヌードのおかげで加点すると、満点になってしまいます。
2005.11 金沢コミュニティ映画祭にて
kossy氏🙇お疲れ様です😰
レビュー読んで、思い出した「パピヨン」…ハンセン病患者を隔離する島が出て来ましたね…本作同様、中学1年では、重すぎましたわ…今は軽くないけど、重くもなく観れる。…かな?…いや、嘉さんにまたも泣くかな?…