人生劇場 青春・愛欲・残侠篇
劇場公開日:1972年7月15日
解説
かつて、幾度も映画化され、数々の名作を生んだ、尾崎士郎原作『人生劇場』のこれは十三度目の映画化。任侠の道ひと筋に生きる男たちと、彼らをめぐる多感な女たち。それぞれ一途な情熱で各自の人生をたどる姿を描く大河ドラマ。脚本は「初笑い びっくり武士道」の野村芳太郎と三村晴彦、監督は脚本も執筆している「昭和おんな博徒」の加藤泰、撮影は「喜劇 新婚大混線」の丸山恵司がそれぞれ抵当。
1972年製作/167分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1972年7月15日
ストーリー
大正五年--。隣家のやくざ杉原を殺し、服役していた吉良常が十年ぶりに、三州横須賀に帰って来た。しかし、吉良常が主人とたのむ今は没落した肥料問屋辰巳屋の当主瓢太郎は、その夜、ピストル自殺をとげた。「立派な男となるまで墓を建つるに不及」という遺書を一人息子瓢吉に残して。東京で文士をめざし勉強していた瓢吉は同棲中のお袖を残し、急ぎ帰郷した。葬式の日、吉良常は、仇討ちを狙う杉原の身内に連れ出されるが、父親ゆずりの激しい気性の瓢吉が駆け付け、事なきを得る。数日後、二人は上京した。大正八年--。東京・深川で男を売る小金一家は、新興やくざ丈徳の目に余る増長に業をにやし殴り込みをかけ、子分宮川、客人飛車角などの活躍により大勝利となった。その頃、飛車角が女郎屋から足抜きさせ匿っていた愛人おとよが、飛車角の兄弟分奈良平の裏切りにより女郎屋に連れ戻された。怒った飛車角は、奈良平を刺殺し、巡査に追われる身となったが、偶然、瓢吉の家に飛び込む。そこで吉良常と意気投合した飛車角は、吉良常のすすめもあり自首する事にした。瓢吉は、懸賞小説に当選、また作家山岸照代と関係がつづいていたが、かつて別れ、今は女給となっているお袖と再会した。そして、瓢吉は文学と愛情の間をのたうつのであった。大正十一年--。宮川は、女郎屋に毎日のように通っていた。飛車角の愛人とも知らずに、おとよと愛し合っていたのである。やがて、そうと知った富川は運命の悪戯に愕然とるのだった。折りも折、丈徳一家の生き残り、でか虎が小金一家に殴り込み、小金を惨殺してしまった。大正十二年--。出版社の援助で中国大陸に渡った瓢吉は、上海で吉良常と会う。吉良常は、大旦那の墓を建ててくれと稼いだ金を差し出すのだった。昭和二年--。飛車角が出所した。迎えは吉良常ひとりだった。吉良常の家で待っていた宮川は、おとよのことを飛車角に詫びた。「俺たらの渡世には女より、生命より大事なものがあるんじゃねえのか」飛車角はおとよへの愛を必死に耐えるのだった。その日、三人は、でか虎一家に殴り込み、見事親分の仇を討つ。しかし、その代償は大きかった。宮川が、殺されたのである。宮川を抱き上げた飛車角はいつまでも泣きじゃくるのだった。瓢吉が、吉良常危篤の報を受けたのは、彼の盛大な出版記念会の席上だった。瓢吉が三州宮崎海岸に駆けつけると驚いたことに、飛車角の他に、おとよ、お袖の姿も見えたのである。おとよは土地の芸者をしており、お袖は辰己屋あとの料亭吉良屋の女将におさまっていたのである。かかわりの深い人たらに看とられ、吉良常は浪花節をうなりつつ息絶えた。古い任侠の世界に生きた男の死だった。