「 【フィルム・ノワール】の要素が強く、ノワールの元祖フランスで大ヒットした理由も納得ですね。」新幹線大爆破(1975) 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)
【フィルム・ノワール】の要素が強く、ノワールの元祖フランスで大ヒットした理由も納得ですね。
丸の内TOEIさんにて「没後10年 高倉 健 特集 銀幕での再会」(2024年11月7日~22日まで)19作品上映中。本日は『新幹線大爆破』(1975)、『ごろつき』(1968)の二本を鑑賞。
『新幹線大爆破』(1975)
劇場の大型スクリーンでの鑑賞は初体感。
「新幹線が走行速度80km/hを下回ると爆発する」という設定は今でも秀逸。
『スピード』(1994)がモチーフにしたくなるのも分かりますね。
公開当時『日本沈没』(1973)、『タワーリング・インフェルノ』(1974)などパニック映画が大ヒット、同作品もパニック映画にカテゴライズされることが多いのですが、改めて見直すと、犯人側の個々の素性にもきちんとスポットを当てた【フィルム・ノワール】の要素が強く、ノワールの元祖フランスで大ヒットした理由も納得ですね。
犯人側の沖田哲男(演:高倉健氏)、古賀勝(演:山本圭氏)、大城浩(演:織田あきら氏)たちはアメリカン・ニューシネマのような社会からドロップアウトしたアンチヒーローとして観客の共感を得られ、対峙する国鉄の運転指令長(演:宇津井健氏)、運転士(演:千葉真一氏)、警察庁刑事部長(演:丹波哲郎氏)、国鉄総裁(演:志村喬氏)などの登場人物がそれぞれのポジションで職務を全う、爆破回避を奔走する様が立体的でドラマティックでしたね。
現金の受け渡しも実にリアリティがあって犯罪映画としても白眉です。
パニック映画としては派手な爆破や破壊シーンは意外と少ないのですが「80km/h」という数値化された恐怖は『ジャガーノート』(1974)の「時限爆弾の赤か青か」同様、それだけで十分サスペンスフル。公開当時配収は予想を下回ったらしいですが確かに派手なシーンを期待した人は肩透かしだったでしょうが、半世紀近く経過した今となっては、ドラマ性に重きを置いた点は再評価されますね。