「東映を見直した力作」新幹線大爆破(1975) odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
東映を見直した力作
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キアヌ・リーブスの「スピード(1994)」のトリックの原点とも言われた、乗り物爆破のパニック・スリラーでは世界に誇れる傑作です。
鮫は泳いでいないと呼吸が出来ず死んでしまうと聞いたことがあるが世界最速を誇った新幹線に当てはめるとは皮肉ながら凄い発想、乗客の付和雷同ぶりも生々しいし、妊婦を絡めてハラハラさせるあたりは名作駅馬車以来の常套手段、主役が建さんと言うこともあり単純な極悪人には描かない、むしろ人命より犯人逮捕に躍起な無能の警察や役人気質丸出しの国鉄幹部の方に怒りの矛先が向けられるようなプロット。
黒澤明の「天国と地獄(1963)」以来、身代金の受け渡し方法が肝なのだが本作も工夫が伺われるが、柔道部登場は嘘っぽい、同様に喫茶店の火事騒ぎもとってつけたような違和感はありますね。
安全を誇る新幹線の爆破ものだから当然国鉄は猛反発、どうせヤクザ映画の東映が作るキワモノ映画だろうと軽くみられていたようだが公開されて汚名返上。元過激派の闘士・古賀役を断った原田芳雄は映画を観て後悔したそうだ。坂上順プロデューサーは建さん起用と決めていたが岡田社長がギャラが高いと揉めたそうだ、結局、脚本に魅せられた建さんが半額で承知したらしい。
昔、観ていた筈だし2時間半の長尺だが豪華俳優陣とテンポの良さもあり今観ても退屈しない力作でした。ただ、昨今の放火や電車テロ事件など身勝手な犯人の卑劣な犯行には微塵も同情の余地はなく、本作のような犯人像の描き方には異論も出よう。
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