「超特急棺桶化⋯スリル炸裂パニック巨編!」新幹線大爆破(1975) しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
超特急棺桶化⋯スリル炸裂パニック巨編!
DVDで鑑賞。
東海道新幹線「ひかり109号」に爆弾が仕掛けられた。爆弾はスピードが時速80キロを下回ると爆発する仕掛けになっており⋯
キアヌ・リーブス主演のアクション映画「スピード」の元ネタになったとも言われている、和製パニック・ムービーの金字塔である。
不穏な雰囲気漂う夕張のシーンから始まる。犯人グループの紹介と新幹線運行システムの解説、新幹線に乗り合わせた乗客たちの様子を短時間で畳み掛け、犯人からの電話を受けた鉄道公安部長の「ひかり109号に爆弾を仕掛けた!?」と云うセリフから、タイトルがバーン! と出るまで、ひたすらイカす導入部によって一気に引き込まれた。
高倉健、千葉真一、宇津井健など、オールスターキャストが豪華共演。カメオ出演の面子にも「そんな端役にもったいない」と感じるほどに、贅沢なキャスティングが成されている。
上映時間が、2時間32分と云う大ボリュームだが、ご安心あれ。最後の瞬間まで全くダレる瞬間が無いのだ。ずっと最高のテンションを持続させており、素晴らしい限りである。
理不尽な社会への怒りから、国家に挑戦する決意を固めた犯人グループ。華麗な犯行計画に翻弄されながらも必死の捜査で犯人に肉薄する警察。乗客乗員の命を守るため、打開策を模索する国鉄。未曾有のテロ事件にパニックに陥る乗客たち。それぞれの視点が交互に配置され、どの描写もおざなりにならず、パワフル且つリアリティに溢れていた。
息詰まる緊迫感を維持しながら、ダレることなく怒涛の勢いで突き進むストーリーが面白い。ハリウッドのパニック映画ブームに便乗してつくられたとは言え、後にハリウッドでプロットが模倣されている。本作の評価が海外で特に高いと云うことは、そのクォリティが世界水準であることの証だ。
犯人グループの犯行に至るまでの背景がきちんと描かれていて、単なるエンターテインメントに留まっていないのが本作の大きな特徴だろう。そこから浮かび上がって来るのは、戦後の日本が猪突猛進して来た高度経済成長の光と影である。
犯人たちの人生を賭けた挑戦が胸に迫る。ラストもやるせなくて悲しくて、後味は良くない。まるでアメリカン・ニューシネマみたいな結末である。理不尽に対し、彼らはいったいどうすれば良かったのだろうか。現代にも通じるテーマだ。
[追悼]
佐藤純彌監督が死去したと云うニュースを受け、3年程前に鑑賞した本作を思い出しレビューすることにした。代表作は日本映画が誇る大作ばかりで、中にはとんでもない作品もあるが、そのどれもが有名である。心よりご冥福をお祈りします。
[鑑賞記録]
2016/09/10:DVD
2020/05/10:Hulu
2021/01/24:Blu-ray
2022/08/02:DVD(フランス語版)
2025/04/06:Blu-ray
2025/05/24:DVD(英語版)
*リライト(2020/05/09)
*修正(2025/11/24)
破格のスケール感を演出し、豪華なキャストを捌き切る手腕に敬服します。最近も何本か映画を手掛けられていたので、凄まじきバイタリティだと思います。
“ミスター超大作”が遺した作品たちを、これからも大切に観続けていきたいです!
『北○○人』なんて珍怪作もありましたが、
『人間の証明』『植村直己物語』『敦煌』『男たちの大和 YAMATO』など見応えある作品ばかりで、邦画屈指の大作の名匠で、好きな監督の一人でした。
『新幹線大爆破』は何度見たでしょう。
同じく、名匠のご冥福をお祈り致します。

