白い巨塔(1966)

劇場公開日:1966年10月15日

解説

昭和三十八年から山崎豊子が「サンデー毎日」に連載した同名小説を、「大菩薩峠(1966)」の橋本忍が脚色、「氷点」の山本薩夫が監督した。撮影は「雁(1966)」の宗川信夫。

1966年製作/149分/日本
原題または英題:The Great White Tower/The Ivory Tower
配給:大映
劇場公開日:1966年10月15日

あらすじ

浪速大学医学部では、明年定年退官となる東教授の後任をめぐって、色々な前工作が行なわれていた。東の教え子財前五郎は最有力候補と目されていたが、東は五郎の傲慢不遜な人柄を嫌っていた。貧しい家庭に生まれた五郎は人一倍名誉欲が強く、苦学して医学部を卒業した後、裕福な開業医財前又一の婿養子となり、その財力を利用して、助教授の地位を手にしたのである。最も五郎は食道外科に関しては若いながら権威者であり、癌の手術をさせると見事な腕前を示した。五郎は日頃から教授と助教授の間には大きな差があることを実感していたから、教授候補者として入念な事前工作を進めていた。その中で、医学部長鵜飼に高価な絵を贈って味方にしたことは成功だった。一方、東は自分の派閥を拡張したいという含みで、東の出身校東都大学系列である金沢大学医学部の菊川教授を、後任教授に推薦した。その上娘の佐枝子と結婚させて、退官後の地位を確保しようという思惑もあった。こうして、教授選の日までに、財前、菊川、それに、基礎医学グループや整形外科の野坂教授の推す葛西という三人の候補者が推薦された。そんなある日、五郎は、同期生である里見助教授の依頼で胃癌患者佐々木庸平を手術した。しかし、五郎は、術後に庸平が苦しむ原因を探ろうともしなかった。教授選に気をとられていたのである。庸平は間もなく死んだ。やがて教授選の日、様々な思惑をもって投票が行なわれたが、結局、五郎と菊川が日を改めて決選投票を行うことになった。そうなると、財前又一の金力を背景にもつ五郎が断然有利である。買収、脅迫、あらゆる手段を用いて五郎は教授の地位を手にしたのだった。ところが、間もなく、佐々木庸平の遺族が、五郎に対して誤診の訴訟を起した。これはマスコミの注目するところとなったが、医学界の権威を守ろうとする大学側の証人は、五郎を無罪にしてしまった。そして純粋に医学上の立場から五郎に不利な証言をした里見は、大学を去らねばならなかった。今や、財前五郎の前に敵はなく、白い巨塔の中を自信たっぷりに闊歩している。

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映画レビュー

4.5 リメイクするとしたら…

2025年10月28日
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鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

難しい

1966年公開、配給・大映。149分。

【監督】:山本薩夫
【脚本】:橋本忍
【原作】:山崎豊子〜『白い巨塔』

主な配役
【財前五郎】:田宮二郎
【里見脩二】:田村高廣
【東貞蔵】:東野英治郎
【鵜飼雅行】:小沢栄太郎
【大河内清作】:加藤嘉
【船尾厳】:滝沢修
ほかに船越英二、小川真由美、加藤武、藤村志保、石山健二郎

◆大学病院の暗部・深層

山崎豊子の原作が素晴らしい。

映画は本作だけだが、
6回(うち1回は韓国)もテレビドラマ化されている。
原作の素晴らしさを物語っている。

国立大学医学部教授の座を巡る虚々実々の駆け引き。
実弾(現金)、ポストが票を買収するために飛び交う。

・権力を得るためなら何でもする
・権力争いを嫌い公正中立を決め込む
・日和見で勝ち馬に乗ろうとする

当たり前だが、医者である前に人間。
好き嫌いや損得で票が動く。
陣営ごとの作戦会議や多数派工作、票読みを
丁寧に描いている。

このあたりのシーンは、
観る人によっては冗長に感じる人がいたとしても
驚きはない。
ただ、この部分を端折ると『白い巨塔』原作から、遠く離れるおそれはある。

意見が分かれる箇所かもしれない。

◆キャスティング

これは抜群に素晴らしい。
田宮二郎、田村正広はもちろんだが、
バイプレーヤーたちが皆、
この上なくハマっていて怖いくらいだ。

印象的なのは、
加藤嘉、滝沢修のお二方。
民事裁判において証言するシーンはしびれる。

特に船尾教授を演じた滝沢修。
本作のクライマックスと言えるだろう。

反財前派の船尾教授だが、
最後の最後に財前五郎を救う言葉で証言を締めくくる。

・斯界の第一人者としてのプライド、
・空想までは踏み出さない頑ななまでの職人気質、
・大学病院という世界を護る大局観、

それらをギュッと詰め込んだ名シーンだった。

◆リメイクするとしたら

ところで、
いま、同じ脚本でリメイクするとしたら、財前五郎は誰になるだろう。
財前五郎役は、過去に田宮二郎のほか、
村上弘明、唐沢寿明、岡田准一が演じている。

リメイク版、これから撮るなら、
山本耕史 or 玉木宏 or 柳楽優弥
いかがでしょうか?(笑)

◆衝撃映像

冒頭のオペシーンは、
患者さんの許可を得て実際の手術を撮影したらしい。
後半の解剖シーンも、内臓のホンモノ感がヤバい。

モノクロ作品であるが、
グロいものはグロい。。。

公開当時は、みなドン引きしたのではなかろうか。

◆まとめ
1978〜79年のテレビドラマ(田宮二郎主演)は、
再放送含め何度も繰り返し観た。

『白い巨塔』の田宮二郎、
『非情のライセンス』の天知茂、

2人は私のダークヒーローだ。

話を本作に戻すと、これは、
純然たる社会派ドラマといえる。

ミステリー、ホラー、アクション、ラブロマンス、コメディ、ファンタジー、空想科学…
そういう要素は、カケラもない。

真面目で重たい作品なのだ。
☆4.5

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共感した! 7件)
Haihai

1.0 財前五郎は悪人か?

2025年5月17日
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jin-inu

4.0 タイトルなし(ネタバレ)

2025年3月5日
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まゆう

5.0 日本における医療ドラマの原点

2025年2月27日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 子供の頃にTV版白い巨塔を見てからというもの、大学病院や大きな病院にかかりたくなくなった記憶がある。実際にプロパーとして医療業界に携わったことのあるので、大学病院内にある実情には今も昔も変わらない体質があることにリアルさを感じる。教授と助教授には金銭的にも名誉的にも雲泥の差があることは事実であるし、教授選挙の裏で蠢く陰湿な部分もリアルに描いてあると思われる。TV版の再放送時にはある病院の医局で医者とともに鑑賞したが、レントゲン写真にはリアルさを欠いていたらしい。

 後半の誤診に関する訴訟問題については、充分な検査をしなかったという点も取りざたされているが、医療保険でどこまでの検査ができるのかという社会問題もテーマに取り上げられれば最高の作品になったであろう。

【2004年ケーブルテレビにて】

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kossy