女優(1956)

劇場公開日:

解説

新派の世界を赤裸々に綴った森赫子の“女優”の映画化。脚色・監督は「流離の岸」の新藤兼人、撮影は「ある夜ふたたび」の宮島義勇が担当する近代映画協会作品。主な出演者は「新・己が罪」の乙羽信子、「われは海の子」の宇野重吉、「壁あつき部屋」の小沢栄、「裸足の青春」の東野英治郎、「新・平家物語 静と義経」の千田是也、「海の百万石」の日高澄子、他に永田靖、御橋公、内藤武敏、殿山泰司、細川ちか子など。

1956年製作/104分/日本
配給:新東宝
劇場公開日:1956年11月27日

ストーリー

毛利格子が、母月子のすすめで明治座で初舞台を踏んだのは二十歳のとき。月子は楽屋中に愛想をふりまいて歩き、花形スターになるためには幹部俳優や作者の先生方の御機嫌取りが大切と娘に教えた。初日、サクラの声援でノボセ上った格子は幹部の藤枝太郎に怒鳴りつけられてしまう。娘に代って謝まる母の月子。ママのため女優にされたんだ、と格子は当り散らすが、月子は、誰でも怒られ叩かれして芸の道に入るのだと諭す。月子の歩んだ道もそうだった。次第に女優らしさを備えてきた格子は、ある日、舞台の袖で藤枝の強引な接吻を受け、その夜とある待合で肉体関係を結んだ。しかし彼には妻があった。藤枝は一座の中心、頼むから彼に従ってくれと主事の山下は願う。やがて皆は座長北林の傘下を離れ、藤枝を中心に明星新派を設立。旗挙げ興行は大成功、相手役の格子も一躍人気スターとなり、藤枝と組んで映画「残菊物語」にも主演。しかし夢心地の格子も、山下から“劇団統制のため藤枝と手を切ってくれ”と、事務的に切り出される。傷心の格子は、“女優は芸が夫”という母にも我慢ならず、周囲の反対を押し切って本格的な女優修業のため独立した。再出発の時、相談相手になってくれた文芸部の里宮明夫と結婚。しかし山下は、格子脱退の責で明夫をクビにした。程なく念願叶い、彼女等の劇団“木の実座”は誕生。処が第一回公演の舞台で格子は視力の衰えを感じる。医師の診断もハッキリせず、花形を失った一座は解散し、失意の底で産んだ女児は真喜子と名づけ、明夫の実家にあずけられる。追いつめられた生活の果て明夫も去り、遂に母のすすめと山下の温情で格子は新派に復帰。だが劇団の空気は冷たかった。大阪公演の際には、数年で完全に失明との冷たい宣告。しかし格子は田畑青年の励ましで“浪花女”の舞台を最後に、暗黒の中にも新しい人生の道を歩み出した。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画レビュー

5.0乙羽信子素晴らしい。感動した。

2022年5月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

新派の舞台で活躍した女優・森赫子の自伝を映画化。母の勧めで女優になった毛利格子は、妻子ある幹部俳優と恋に落ちる。劇団側から彼と別れるように言われた格子は、独立を決意するが、やがて格子は失明の危機に襲われる…。波乱に満ちた女優の半生を描く。

新藤監督がよく語る女性の悲劇。溝口監督もそれを描く巨匠であるが、新藤監督の作品も素晴らしい。ほぼ実話に基づくストーリー展開のようであるが、女優・森赫子を乙羽信子が演じ、その半生を演じ切っている。男に裏切られ、利用され、しかしながら強く生き続ける女性。

和服姿で決して屈しない女性。立ち振る舞い、表情、特に終盤の演技は本当にしびれる。
歌や三味線などなど、昔の女優は本物である。素晴らしい。

(広島市映像文化ライブラリーにて)

コメントする (0件)
共感した! 0件)
M.Joe