純愛物語

劇場公開日:

解説

十二年前、広島に投下された原爆のため、病に冒され、死んで行った少女の純愛を通して非情な現実社会にメスを入れた問題作。「あらくれ(1957)」の水木洋子が原作を書き自ら脚色、「米」の今井正が監督した。撮影は「米」で今井正と組んだ中尾駿一郎。主演は「船頭姉妹」の江原真二郎と「抜打ち浪人」の中原ひとみ。そのほか「血まみれの決闘」の岡田英次、「殺人者を逃すな」の木村功、さらに東野英治郎、宮口精二、加藤嘉、藤里まゆみ、岸輝子など。色彩はイーストマン東映カラー。

1957年製作/133分/日本
原題または英題:The Story of Pure Love
配給:東映
劇場公開日:1957年10月15日

ストーリー

戦すんで十年、平和が訪れたとはいえ、ここ上野の山には今なお不幸な孤児たちが虚しい日日を過している。今しも、スリ仲間から足を洗おうとする孤児のミツ子を不良たちがリンチを加えようとしていた。その中の一人、貫太郎は、余りの残酷さを見てミツ子をかばいその難を救った。二人は孤児という共通の境遇から仄な慕情を感じ合い、更生を誓うが社会の風は厳しかった。遂に二人は悪いとは知りながらデパートでスリを始めた。が、忽ち刑事に捕り、ミツ子は聖愛学園へ、貫太郎は少年院へ送られた。貫太郎は一度は脱出したが再び捕り、それ以後は少年院の下山教官の補導で更生の道に励むようになった。一方ミツ子は優しく気を配ってくれる小島教官にさえ反抗するような荒んだ気持になっていたが、間もなく顔が蒼白となり油汗がにじむという異常な病気に冒され始めた。その病状は彼女が十年前、広島でうけた原爆症にほかならなかった。が、それとは知らぬミツ子は学園から逃走、放浪生活に入った。その頃、貴太郎は仮退院を許され近くの工場に務めていた。彼はソバ屋の出前持ちになっているミツ子を探し出し、明るく励ました。体に斑点ができるまでに病状の悪化していたミツ子も貫太郎の励ましで遂に病院を訪ねた。そこでミツ子は貧血症と診断を下され、金もないままにドヤ街へ身を移した。貫太郎は、そんなミツ子を励まそうと一日、ピクニックへと連れ出すが、それ以後ミツ子は病床に伏したままの身となった。衰弱し切った彼女を小島教官が探しだし病院に収容した時は死の寸前にあった。瀕死のミツ子の願いで貫太郎が駈けつけたが、病室にはもはや虚なベッドが残っているのみ。ミツ子が純愛こめて風邪気味の彼に作ってくれたマスクをはめた貫太郎は、流れ出る涙も拭わず夕暮の雑踏の中へと姿を消した。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第8回 ベルリン国際映画祭(1958年)

受賞

銀熊賞(最優秀監督賞) 今井正
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映画レビュー

4.0懸命に生きて行こうとする二人

2016年8月2日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しく、つらく、その中にあって、相手を思い焦がれる二人。まっとうに生きようとしながらも、現実は過酷。二人の最初で最後のデートの中原ひとみの笑顔がとても愛らしい。

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M.Joe