劇場公開日 1991年12月14日

「三谷脚本最高傑作の一つ!」12人の優しい日本人 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0三谷脚本最高傑作の一つ!

2015年11月3日
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鑑賞方法:DVD/BD

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ある殺人事件の有罪無罪を決める為集まった12人の陪審員。
今や現実となったが、もし日本に陪審員制度があったら…?
三谷幸喜脚本の1991年の作品で、三谷脚本最高傑作の一つ。
言うまでもなく元ネタは「十二人の怒れる男」。
単なるオマージュに留まらず、邦画における密室劇、会話劇、ミステリー・コメディ、裁判及び法廷モノでも非常に優れた一作。

シリアスで重厚だったオリジナルとは違い、三谷ならではのコミカル性。
タイトルにも反映されている日本人の持つ“優しい”人情。
それらが絶妙な味付けとなっている。

裁判シーンや事件の回想シーンは全く挿入されないが、陪審員たちの話し合いから事件の全貌がだんだん見えてくる巧みな語り口。
グイグイ引き込まれ、これはオリジナルと同じだが、また違った点も。
オリジナルは有罪→無罪だが、本作では無罪→有罪、そしてもう一回一捻り。
三谷の偉大な名作への挑戦にも感じた。

冷静な陪審員長を筆頭に、仕切ろうとしゃしゃり出る者、目立ちたがり、論理主義者、独善的な者、日和見主義、平和主義、ただ自分の言い分を主張したいだけの者、枠に入らないが頭のキレる者…。
一癖も二癖もあるユニークな登場人物たちはまるで社会の縮図。

やる気があるんだかないんだか分からなかった議論が、やがて白熱した議論に展開していく様は痛快で爽快でもある。
ラスト、豊川悦司が桐島一之にかけた言葉が一筋の哀しみも感じさせた。

もう何度も見てるほど特に好きな三谷作品。
こういうのを見せられると、やっぱり三谷は才ある脚本家だと思わずにはいられない。

近大