ジャンクフード JUNK FOODのレビュー・感想・評価
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ワカチコ!ワカチコ!
クロムハーツの関西弁と鬼丸が激闘を繰り広げるかと思いきや四人で海辺に爽やかな青春映画の如く、オムニバスというか群像劇とも疎かな裏の世界で生きる多国籍なリアル感、山本政志らしい演出描写に時代としてハマれるか、鬼丸率いるチーマー軍団の物語を全面にと単純な頭であれば期待してしまう、起こる事件がTVのニュースとしてその事実の一部が本作で描かれているのかも?
本物の不良を埼玉から引っ張り出した山本政志から豊田利晃に引き継がれ、鬼丸の活躍をもっとスクリーンで観たかった、大袈裟にも安藤昇以来のリアルな存在感を醸し出せる惜しい役者だった。
監督の作品が好きなら楽しめるのでは
1998年公開。舞台は横浜。
オムニバス形式の映画で、登場人物はチーマー、ジャンキーのOL、外国人女性レスラー、出稼ぎのパキスタン人、女好きのチンピラといった少しクセの強い人たちである。
いかにも山本監督らしい映画と言えるが、初めて監督の作品を観るという人には正直あまりオススメできない。
監督のファンなら楽しめると思うが、それぞれのストーリーが短く、また、オチがつかないままエンディングを迎える話もあるので、観終わった後は「これで終わり?」というモヤモヤとした気持ちが残るのは否めない。
オムバス形式ではあるが、それぞれのストーリーがとても興味を惹かれる話だったので、その後どうなったの?という不完全燃焼の感が強く残った。
また、出演者も素人(?)が多いので、人によってはドキュメンタリーを観ているような感覚に陥るかもしれない。
当時のサブカルチャーの一部を垣間見る、もしくはあの時代の雰囲気を楽しむ映画として割りきって観れば悪くないかも。
個人的にはジム・ジャームッシュの一連の映画が思い起こされた。
ちなみに、最初とエンディングに出てくる盲目の老婦人は山本監督の母親である。
地獄の手前のユートピア
目の見えない老婆、シャブ中、風俗嬢、反社の関西人、外人レスラー、パキスタン人、チーマー。真っ当な社会から零落した人々が横浜という特異点で出会ったり出会わなかったり。
横浜の街はある意味でユートピアだ。そこではあらゆる異邦性が解体され、誰もが等しく脆弱な一人の人間として取り扱われる。上に挙げた人々にとってはこの上ない場所だろう。横浜の無差別性は彼らの持つ身分的なしがらみを何もかも無効化してくれる。
しかしユートピアなどというものはしょせん体のいい幻想に過ぎない。老婆は夫に先立たれ、シャブ中は男に暴力を振るわれ、パキスタン人は最愛の女から「国に帰れ」と冷たくあしらわれる。横浜は、言ってしまえば最終最後のセーフティネットである。そして横浜より下にはおそらく死とか絶望とかいったもので溢れた地獄が待ち構えている。
地獄の一歩手前でワチャワチャと人生を送る人々。そこに外国人の姿が多いことは偶然ではない。日本人が精神的な鎖国をやめない限り、こうした状況はこれから先も続いていくことだろう。言わずもがな、弱者を包摂できない社会は私利私欲の追求の果てにやがて滅亡を迎えるだろう。日本はもうとっくに多民族国家なのだ。そのことを我々はもっと真正面から受け入れなければならない。
90年代後半といえば国内の文芸全体がセカイ系だのエヴァンゲリオンだのといった狭隘な自意識へと自閉していった時代だが、そうした状況下でもこのような問題意識に目を向け続けた山本政志の冷静さを評価したい。
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