「不倫の恐怖を知れ」死の棘 Takehiroさんの映画レビュー(感想・評価)
不倫の恐怖を知れ
主人公は愛人に別れを告げる時にはトラブルにもならず終えたようだ。しかし奥さんのほうが不倫された嫉妬から精神に異常をきたした行為、自傷や夫への強烈な罵声などをし続ける。主人公はどれだけ奥さんが罵詈雑言を与えたり異常な行為をしても、主人公は奥さんと別れようとしない。
奥さんが問い詰めないと最初は主人公は噓をつく。問い詰めてから本当に近づける。これは不倫したような人達の共通点だと思われる。松坂慶子の怖さも凄いが、岸部一徳の耐えるというのか、風情も不気味でさえある。途中で主人公のほうも、謝ったのにこれ以上どうするんだ。と怒鳴り返すが、今そうやって落ち込んでいる状態が地獄というのだ。なにを寝ぼけているんだというように奥さんが返す。それでも主人公も耐えきれなくなって線路にのぼろうとすると奥さんは、死なないで私が悪かったと涙するが、その後も奥さんの怒りや狂気はぶり返してしまう。帰り道、主人公が泣き叫びながら歩く横で奥さんが泣かなくていいのよ。と慰める。ここら辺が、愛人と別れられて、奥さんと別れない分岐点なのか?そして二人の幼い兄妹は一体どうこの両親をみていたのだろうか。
夫婦間の平和が訪れたかと思うと、駅のホームで愛人をみかけたと絶叫してしまう奥さん。どうして愛した人を捨てられるんですか。と問う奥さんに対して、主人も怒りだす。夫婦で上半身裸状態になって向かい合ったところ、主人公が縊死をしようとするのを奥さんが必死で止めるシーンは迫力がある。(こういうヌードシーンは複雑な見せ方である)ところが奥さんが腹痛で倒れると縊死しようとした主人公はそれを辞めて、どうしたと心配する。狂気の連続である。松坂慶子の38歳の時の映画だと思うが、肉体女優だったわけでは無く、地味な女も演じられるし表情も上手い。元愛人が夫婦の所に用事で会いに来てしまい、狂ってしまった奥さんが主人公の前で元愛人に掴みかかるシーンは、不倫はこんなに危険な事が起きるという恐怖映画さながらのシーンであり、教育映画ではないだろうか。