事件
劇場公開日:1978年6月3日
解説
姉妹で一人の青年を愛し奪い合ったことからおこった殺人事件を中心に、現代の不安な青春の姿を描く、大岡昇平原作の同名小説の映画化。脚本は「危険な関係(1978)」の新藤兼人、監督は「八つ墓村(1977)」の野村芳太郎、撮影は「夜が崩れた」の川又昂がそれぞれ担当。
1978年製作/138分/日本
原題または英題:The Incident
配給:松竹
劇場公開日:1978年6月3日
ストーリー
神奈川県の相模川沿いにある土田町の山林で、若い女性の刺殺死体が発見された。その女性はこの町の出身で、新宿でホステスをしていたが、一年程前から厚木の駅前でスナックを営んでいた坂井ハツ子であった。数日後、警察は十九歳の造船所工員・上田宏を犯人として逮捕する。宏はハツ子が殺害されたと推定される日の夕刻、現場付近の山道を自転車を押しながら下りてくるのを目撃されていた。警察の調べによると、宏はハツ子の妹、ヨシ子と恋仲であり、彼女はすでに妊娠三ヵ月であった。宏とヨシ子は家を出て横浜方面で暮らし、子供を産んで、二十歳になってから結婚しようと計画していた。しかし、ハツ子はこの秘密を知り、子供を中絶するようにと二人に迫った。ハツ子は宏を愛し、ヨシ子に嫉妬していた。その頃ハツ子には宮内というやくざのヒモがいた。彼女は宮内と別れて、宏と結婚し、自分を立ち直らせたいと思っていたのだった。ハツ子が親に言いつけると宏に迫った時、彼はとっさに登山ナイフをかまえて彼女を威嚇した。宏が一瞬の悪夢からさめ気がついた時、ハツ子は血まみれになって倒れていた。上田宏は逮捕され、検察側の殺人、死体遺棄の冒頭陳述から裁判が開始される。果たして本当に宏が殺人を犯したのかという疑問を含め、裁くもの裁かれるものすべてを赤裸々にあばきながら、青春そのものが断罪されていく。