劇場公開日 1962年11月18日

「【人と人との確かなる絆を描いた作品。ロウアングルでの固定描写が品性ある趣を醸し出している作品。世界の多くの監督に多大なる影響を与えていると言われる小津監督の人間賛歌に溢れた作品である。】」秋刀魚の味(1962) NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【人と人との確かなる絆を描いた作品。ロウアングルでの固定描写が品性ある趣を醸し出している作品。世界の多くの監督に多大なる影響を与えていると言われる小津監督の人間賛歌に溢れた作品である。】

2023年3月26日
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鑑賞方法:VOD

泣ける

知的

幸せ

■平山(笠智衆)は、妻に先立たれてから一切の家事を美しき娘の路子(岩下志麻)に頼っていた。
 ある日、中学時代の同窓会に出席した平山は酩酊した恩師(東野英治郎)を送っていくことに。
 そこで零落した恩師の世話に追われて婚期を逃した娘(杉村春子)と出会う。
 それから平山は、路子の縁談について真剣に考えるようになる。

◆感想

・恥ずかしながらの初鑑賞である。小津安二郎監督の作品は、配信で数作鑑賞していたが、総て原節子さん出演作である。

・今作を観て思ったのは、人間関係の優しさに溢れた濃密さである。
 冒頭に描かれる中学時代の恩師”瓢箪”を囲む平山を含めた教え子の姿である。零落した恩師に酒を注ぎ、酔った恩師をキチンとタクシーで送る姿。勿論、その後恩師に対しての辛辣な言葉も出るが、基本的には彼らは恩師を慕っているのである。

・そして、恩師の娘の姿を見て平山は路子に頼り過ぎている自らの姿に気付くのである。

■それにしても、年代的に今作に出演している俳優さんの殆んどは亡き人である。だが、彼らは今作の中では活き活きと生きているのである。
 何だか、感慨深い想いに耽ってしまう・・。

・岩下志麻さんは、今でも驚異的なお美しさを誇っているが(羨ましくはないが、中尾彬さん、大切にするよーに。(上から目線)当時の圧倒的な美しさには圧倒される。(ホント、スイマセン・・。)

<今作が不惑を越え、娘、息子が結婚適齢期になった男に響くのは、笠智衆さん演じる平山が娘の幸せを考え、彼女の結婚を進めるシーンであろう。
 今ではこの考えは時代遅れと思われても仕方がない気がするが、自分の子供の幸せを望む姿は、矢張り心に響くのである。
 ”世界の小津”と今でも言われ、多くの海外の映画製作者たち(敢えて言えば、アキ・カウリスマキ監督、アッバス・キアロスミス監督、若手で言えばコゴナダ監督。)に多大なる影響を与えていると言われる監督の人間賛歌に溢れた作品である。>

NOBU