サンダカン八番娼館 望郷

劇場公開日:

解説

かつて、“からゆきさん”として遥か南海に愛と青春を没していった日本の少女たちの秘話を描く。原作は山崎朋子著『サンダカン八番娼館』。脚本は広沢栄、監督は脚本も執筆している「朝やけの詩」の熊井啓、撮影は「ザ・ゴキブリ」の金宇満司がそれぞれ担当。

1974年製作/121分/日本
原題または英題:Sandakan No.8
配給:東宝
劇場公開日:1974年11月2日

ストーリー

女性史研究家・三谷圭子は、今、ボルネオの北端にあるサンダカン市の近代的な街に感慨を込めて佇んでいる。ここは、その昔、からゆきさんが住んでいた娼館の跡であり、サキが現在もそこにいるような錯覚すら覚えるのだった……。圭子とサキの出会いは三年程前になる。からゆきさんの実態を調べていた圭子は、天草を訪ねた時、身なりの貧しい小柄な老婆と偶然めぐりあった。それがサキであった。圭子は、サキがからゆきさんであった、との確信を強め、また、サキの優しい人柄にひきつけられ、波瀾に富んだであろう過去を聞き出すために、サキとの共同生活を始めた。やがて、サキはその重い口を徐々に開いて、その過去を語り出した……。サキの父は彼女が四歳の時に世を去り、母は父の兄と再婚した。サキが十二歳の時、サンダカンで娼館を経営する太郎造はサキに外国行きをすすめ、前金三百円を渡した。サキはその金を兄・矢須吉に送金し、人手に渡った畑を買い戻して幸福な生活をするように願い、村の仲間、ハナ、ユキヨと共にサンダカンへと発った。当時のサンダカンは、英領北ボルネオにおける最大の港町で、日本人の経営する娼館が九軒あり、一番館、二番館と名づけられており、太郎造の店は八番館であった。八番館に着いて一年後、サキは客を取るように言い渡された。借金はいつの間にか二千円にふくれあがり、十三歳のサキにその借金の重みがズッシリとのしかかり、地獄のような生活が始った。だが、そんな生活の中にもサキは、ゴム園で働いている竹内秀夫との間に芽生えた愛を大切に育てていった。そしてある日、太郎造が急死し、女将のモトはサキたち四人を余三郎に売り渡した。余三郎はサキたちをプノンペンへ連れて行こうとするが、新しく八番館の主人となったおキクの尽力で、サキとフミだけはサンダカンにとどまることになった。おキクが主人となってからは、八番館は今までと違って天国のようだった。そして秀夫との愛に酔いしれたサキだったが、ある日突然、秀夫はゴム園の娘との結婚を告げ、サキに別れを告げた。サキの初恋は砂上の楼閣のように、もろくも崩れ去った。数年を経て、おキクはひょっこり現われた余三郎との口論の最中倒れた。おキクはサンダカンで死んだ日本人を弔うために共同墓地を作っていた。おキクを葬ったサキは帰国したが、母は既に死に、兄の矢須吉もサキが外国帰りということで外聞を気にして避けるようになっていた。天草はサキにとって、もはや故郷ではなくなっていた。その後渡満したサキは結婚、男の子を生んだ。だが戦争は夫も財産も奪った。やがて帰国したサキは、息子と京都で暮すが、彼が二十歳を過ぎた頃、サキ一人で天草へ帰された。結婚するにはからゆきさんの母親が邪魔になるのだろう……。圭子とサキの生活は三週間続いた。だが、村人は二人への疑惑を燃え上がらせた。圭子がサキの実態を書けば村の醜聞が知れ渡るからだ。圭子は取材を断念するとともに、自らの素姓を明かしてサキに詫びた。だが、サキは圭子を慰め、温い愛情で勇気づけるのだった……。そして今、圭子はジャングルの中でおキクや秀夫の墓を発見した。望郷にかりたてられて死んでいった日本人たち。だが、それらの墓は、祖国・日本に背を向けて立てられていた……。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第48回 アカデミー賞(1976年)

ノミネート

外国語映画賞  

第25回 ベルリン国際映画祭(1975年)

受賞

銀熊賞(最優秀女優賞) 田中絹代
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映画レビュー

4.5『むぞなげぇ』ファンタジーフィクション。こうならなけりゃ良か

2024年9月20日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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共感した! 2件)
マサシ

5.0島原の乱に遡る「からゆきさん」の歴史

2024年9月11日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

女性史研究者山崎朋子氏の著作サンダカン八番娼館(1972)により世間に広く知られるようになったからゆきさん。
証言者おサキさんへのアプローチは現在では厳しい裁断を下されるものかもしれないが、腐った畳にムカデが巣食うあばら家で衣食を共にすることから始める山崎朋子氏の直観力とジャーナリスト根性は間違ってないと思う。だからこそ、出版の許諾を得ることが出来たに違いない。最後に礼金は固辞するが、「手拭い」を置いて行ってほしいとおサキさんに言われる。喋りたくない隠し事(取材目的)があるなら、喋らくてもいいんだよと言うおサキさん。騙され、親族からも忌避されてきた人生の中で彼女がたどり着いた心境と本当に欲しかったものが表出するシーンだ。母親(岩崎加根子)が織った着物に綿入れした布団もしかり。

1974年の熊井啓監督作品。1977年に67歳で亡くなる日本映画に人生を捧げたと言ってもよい田中絹代の人生。
このあと舞台を活動の主体にしてゆく栗原小巻や小説家に転向した高橋洋子の代表作品としても貴重。
女郎出身の女領事と言われたおキクさん役、水の江瀧子の堂々とした貫禄。
私財でサンダカンに日本人共同墓地を建てたおキクさん。日本には帰らない決意。偉い人だと思うけど、うんと悲しい。
おキクもおサキさんも天草出身だった。
島原の乱に始まる貧国日本の裏史。
胸が痛くて仕方ない。

サキ(高橋洋子)に童貞を捧げる長野の貧農出身の青年竹内秀夫役の田中健。映画初出演。このあと、青春の門で主演(共演:大竹しのぶ)
熊井啓監督は長野安曇野出身。
この役どころは山崎朋子氏の原作にはない気がするんですけど😎

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共感した! 6件)
カールⅢ世

4.5母に教わった映画のひとつ。

2024年8月7日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

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共感した! 5件)
tabotyoko

5.0多くの唐行きさんに謝りながら、恥ずべき歴史を知るべき

2024年6月11日
iPhoneアプリから投稿

田中絹代さんが圧倒的。
演技してる感じがしない。

髙橋洋子さんも素晴らしい。

目が覚めるような作品でした。

水の江瀧子さんの存在感も良かった。

これまで無知で申し訳ありませんでした。

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共感した! 3件)
だいず人

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