劇場公開日 1961年10月29日

「まるで絵画を観ているような完璧な構図」小早川家の秋 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0まるで絵画を観ているような完璧な構図

2024年6月15日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

幸せ

午前十時の映画祭14。
先週の『宗方姉妹』(1950)に続き、小津安二郎監督『小早川家の秋』(1961)鑑賞。

東宝さんの熱烈オファーに松竹専属の小津監督が快諾し単身乗り込んだ本作品。
新珠三千代さん、宝田明さん、小林桂樹さん、団令子さん、森繁久彌さん、白川由美さん、藤木悠さん、加東大介さんと当時の東宝映画のスターがオールスター出演してましたね。

原節子さん、司葉子さん、新珠三千代さんの3義姉妹もお美しく、スクリーン映えして超豪華なのですが、本作品の主役は中村鴈治郎(2代目)さんでしたね。
放蕩者の老舗造り酒屋のご隠居を、愛嬌たっぷり演じてましたね。やはり上方歌舞伎で立役から女形まで演じていたので、細かい所作、身のこなしが上品で良いですね。

撮影は黒澤明監督作品を担当した中井朝一さん、照明は成瀬巳喜男監督作品『浮雲』(1955)を手がけた石井長四郎さん、美術は大映で小津監督とタッグを組んだ下河原友雄さん。
小津組に負けまいと、食卓のビール瓶、コップ、お猪口や、墓石、店前の樽、自転車に至るまで画面に映るすべての小道具がミリ単位まで配置され、とにかく調和が取れて絵画を観ているようで美しかったですね。
今のYouTubeなどは「とにかく映っていれば良い」だけなので、こういった小道具を配置して奥行きを出すだけでもクオリティはあがりそうですね。

何気ない日常の一コマを103分間飽きさせない力量はさすが小津監督でした。

矢萩久登
トミーさんのコメント
2024年6月21日

ひんぱんに団扇や扇子を遣う、白玉を連呼する、庭にはケイトウ、夏それも蒸し暑い京都の夏の表現さすがでしたね。

トミー