「第1期ゴジラシリーズのフィナーレ」怪獣総進撃 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
第1期ゴジラシリーズのフィナーレ
1968年8月公開
監督は前作の福田純から本多猪四郎に戻ります
特技監督は有川貞昌で変わらずです
1968年は特撮界にとってどんな年であったのでしょうか?
正月は前年末に公開のゴジラの息子です
大コケでした
福田純と有川貞正のコンビは失敗に終わりました
春は3月にガメラ対バイラスが公開、併映の妖怪百物語と合わせて好調な入り
そこに黒船が海外から2隻突如あらわれたのです!
それは2001年宇宙の旅と猿の惑星です
前者は圧倒的な内容、特撮技術、美術、科学考証
何もかも逆立ちしても勝てません
というか同じ映像すら撮れない
モーションコントロールカメラ技術は日本には無く当時どうやって撮ったのかも謎だったのです
映画全体の意味すら、何がどうすごいのかも、正しく評価すら出来なかったのです
後者は特殊メイクという新技術が衝撃でした
日本にはチープなお化け屋敷レベルの特殊メイクの技術しかなかったのですから
正に幕末の黒船です
この海外からの新しい特撮の流れに日本の特撮界になす術は無かったのです
10年前は世界一の特撮技術を誇っていたのに、怪獣映画の大ヒットの連続で酔っぱらって、海外で始まっていた特撮の技術革新に無関心であり、新技術の獲得を怠り、10年前の技術を維持し高めるだけの「特撮道」になっていたのです
まるで日本の電機メーカーのデジタル化に乗り遅れ、ガラパゴス化した運命を先取りしているかのような話です
さらに駄目押しでサンダーバード6号が本作にぶつけて公開されたのでした
さて本作です
普通ならゴジラは1年間隔なので次作は12月の予定です
通常なら8月は別の特撮ものの公開になるはずです
なぜゴジラ映画のスケジュールが繰り上がったのでしょうか?
それは前作が大コケ過ぎだったからです
怪獣ブームに陰りがハッキリでてきたのだから、製作予算がかかる怪獣映画の製作は打ち切るべしとの方針が東宝でうちだされたのです
夏にゴジラ映画を公開してそれをもって有終の美を飾る
よって最後のゴジラ映画は本多猪四郎監督が撮るべきとなったのだと思います
特技監督が有川貞正のままなのは、円谷英二がウルトラセブンの対応で多忙だったからでしょう
内容は怪獣達のお別れ公演になったのも当然です
そこに黒船到来です
手も足もでず、やれることをやるしかないのです
さすが本多猪四郎監督です
なかなか面白く楽しめました
怪獣ランドは日活の大巨獣ガッパからのアイデア拝借です
というか後年のジュラシックパークの元ネタかも知れません
東宝特撮の強み、特色とは何か?
それは宇宙SFの要素を持った怪獣映画である
そう監督は考えたようです
キアラク星人の物語はX星人と同じ位置付けです
三大怪獣地上最大の決戦の拡大版リメイクと言って良いぐらいです
ロケットムーンライトSY-3号は格好いいです!
サンダーバードの強い影響を受けているのが伺えます
しかしサンダーバードにはある機能や性能や原理を類推させるデザインでは無いのです
これが東宝特撮の限界の本質なのだと思います
特撮はおろか、美術においても2001年宇宙の旅には全く及びません
宇宙服、特に宇宙帽のチープさは泣きたくなる程です
彼我の差は歴然としています
予算規模は確かに雲泥の差が有ったと思います
しかしセンス自体が無いのです
前年3月に公開されたギララの宇宙服のほうが遥かに優れている位です
地上で活劇する為に敢えてこうした宇宙服ぽさを減らしたのだと思いますが、これではまるで消防服です
特撮は都市破壊シーンもあり楽しめます
しかしランドマークを完全再現して破壊するのは
国連ビルや凱旋門やクレムリン宮殿がチラリと写る程度です
日本の臨海部や街並みはどこかのようで適当な臨海部と街並みです
取材して完全再現したものには見えません
最強宇宙怪獣キングギドラを地球の怪獣軍団が力を合わせてやっつけます
最後はカーテンコール宜しく怪獣達のお別れシーンです
これをもって東宝は怪獣映画をお仕舞いにする筈だったのです
ウルトラセブンも1ヵ月後の9月に最終回となります
怪獣映画の季節は終わりを迎えた筈でした
しかし本作はゴジラの息子を興行収入を上回ります
僅かな望みが残りました
それが実るのは翌年1969年の12月でした
次回作ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃が作られたのです
ただこの作品の内容はフィナーレに続くエピローグというべきものでした
それ以降も何作とゴジラ映画はつくられますが
それらは一旦リブートしたものというべきだと思います
過分なお言葉を頂きありがとうございます
何かの弾みで映画の話題になった時に、言いたいことを思い出すための自分の為の備忘録のつもりで書いています
読み返すとヌケモレが多くて、まだまだです
そんな駄文でも喜んで頂けたなら嬉しい限りです
ぼちぼち80年代以降の特撮映画にも取りかかっていこうと思っています
これからも懲りずにお読み頂けたら幸いです
もう素晴らしかったです。土曜日午後をすべて費やして、あき240さんの、「怪獣映画の歴史」とでも言えそうな、怪獣映画レビューを、すべて読んでました。いやあ、すごい!! 自分の人生を振り返る楽しさもあり、それ以上に凄かったのが、各社怪獣映画の時系列での盛衰、そして洋画SF映画との関係。ホントにすごい数々のレビューを、ありがとうございました!!!!