劇場公開日 2014年6月7日

「怖いけど面白かったぁ……」ゴジラ(1954) NandSさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5怖いけど面白かったぁ……

2023年11月4日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

怖い

難しい

前提として
・本多猪四郎監督の他作品は未視聴。
・香山滋の作品は未読。
・『シン・ゴジラ』は視聴済。

めっちゃ面白い。
いつ観ても色あせない、恐怖と重さと面白さがある。

まずは恐怖。
船の沈没事故、謎の台風被害、放射濃度の高い足跡……と徐々に謎の生物の存在を想起させていき、ついにゴジラ登場。東京に上陸して踏みつぶし、噛み砕き、熱線で焼き尽くす。
建造物が破壊される様子は、ただ特撮としての良さが描かれている。怖いのは、その中に人が居るということ。原爆も同じ。街が崩壊して放射線が残るのが怖いんじゃない。そこに人がいて、死だけじゃ済まない恐怖と傷が残るから怖いのだ。
家屋が踏みつぶされて家族が下敷きになる。人の乗った電車がゴジラにぶつかって横転する。電波塔が倒れてそこにいる報道陣が落下する。そして火の海と化した東京を歩く姿は、まさに恐怖。

次に重さ。
車や船など、ミニチュアなのが妙にリアルで地震を思い出す。戦争を経験していなくても、自然災害によるトラウマが頭をよぎる。それも人が中にいるというシーンをいくつも描いた賜物だ。
ゴジラを目の前にして、「やっとお父さんのところに行けるよ」と子供と心中めいたことをしようとする母親。逆に母親だけ死んでしまった幼い子供。避難所で被ばくが確認される人々。戦争と原爆の生傷が垣間見える。

そして面白さ。
何よりもこの作品は、人がゴジラという災害に出くわしたときにどうするのか、何をするのかにカメラが向いている。これが面白さに大きく影響している。
特に山根博士と芹沢博士。
前者はゴジラを進化した生物、人間にとっての福音と捉えて生かしたまま研究するべきだと主張する。しかしそんなことを言ってられないほどにゴジラは暴れまわり、世間とは真逆の主張として追い込まれていく。彼の最後のセリフに注目。
後者はゴジラとのシンパシーがある人物。しかし核兵器を超えた大量殺戮兵器を生み出してしまう。ビジュアルのかっこよさと深い影、そして葛藤する姿が魅力的。
他にも、報道に命を懸けるテレビスタッフ、「また疎開なんて嫌だな」とぼやく人、(東京上陸前の)ゴジラという存在を隠蔽しようとする国会議員……この映画の主役は人なのだ。
あと、下手に恋愛の話を強調しなかったのも好印象。

ゴジラのデザインも誇張しすぎず、特徴も残しつつで良い。人型の中でも、かなりシンプルな部類なんじゃないだろうか。でもそれが美しい。背びれとか好きだけど、印象に残るのは眼。クレイアニメ調でどこを見ているのか分からない、生気のないやつ。もし真上にいたら全力で逃げたくなる。そういった怖さも持ち合わせている。

音楽も名曲ぞろい。後年にわたって何度も使われる説得力がある。テーマの後ろから聞こえてくるゴジラの叫び声も秀逸。

反核怪獣映画として何度もリメイクされてはいるが、第一作の時点でほぼ完成されている。原点にして頂点。これをリメイクするのが簡単じゃないのは間違いなく、『シン・ゴジラ』がかなり忠実なうえにすべてがパワーアップしているトンデモない作品であることも実感できた。

ミサイル一発も当たってないやんけ問題やら、もう少し外国の横やりが見たかった欲張りやら、ゴジラ抹殺の地味さなどはあるものの、怪獣映画の傑作として間違いない。そんな作品。
特撮、(プロレスしない)怪獣映画、『シン・ゴジラ』、戦争映画が好きな人におすすめ。
これはハマる。

NandS
かせさんさんのコメント
2024年5月5日

テーマ曲他を新たに収録したにも関わらず、シン・ゴジラではこの旧作の録音をそのまま使ってましたね。
いやあの迫力はすごかった。

かせさん