幸福号出帆
劇場公開日:1980年11月15日
解説
オペラ歌手が相続した十億円の遺産をめぐって、オペラ歌手を目ざす娘、元歌手の母、伯母、兄の家族を中心に密輸団の女ボスなどが暗躍する三島由紀夫の同名の小説の映画化。脚本は「竜馬暗殺」の清水邦夫、監督は「幸せを世界の友へ」の斎藤耕一、撮影は「不良少年(1980)」の兼松煕太郎がそれぞれ担当。
1980年製作/112分/日本
配給:東映セントラルフィルム
劇場公開日:1980年11月15日
ストーリー
デパートのネクタイ売り場に勤める山路三津子は、元オペラ歌手だった母・正代と、何をして生活しているのか分らない兄の敏夫、オールドミスの伯母ゆめ子と暮らしている。母と同じくオペラ歌手志望の三津子には税関吏の富田というボーイフレンドがいる。しかし、三津子にとって、兄、敏夫の方が富田以上に親しみが持てた。その日も、富田とのデートを早々に切り上げ、兄と会った。敏夫は混血らしいのびやかな体をもった男で、レストラン・イタリア亭のマダム房子という愛人がいて、兄妹は房子の店で食事をした。食事が終ると、敏夫は房子と戯れあい、三津子はひとり家に帰った。家では、ゆめ子の伴奏で、正代が声をはり上げて歌っている。「うるせえ!家賃もろくに払わねえくせに」と突如怒声が。一家は大家に追いたてをくっていた。翌朝、新聞に「ソプラノ歌手、コルレオーニ歌子さん、亡夫の遺産十億円を承く」と出ている。コルレオーニ氏とは敏夫の父で、歌子と正代は恋敵だったのだ。一方、敏夫は密輸のブツを横流ししたことが、姿も知れないボスにバレて、金を弁償するか遂げるか迫られていた。そして、一家四人は、遺産の一部を貰おうと、歌子の家へ向かった。四人は、“ゆすり”という言葉を決して使わなかったが、その言葉に心を熱くしていた。ところが、話はおかしな方向に進み、一四人は歌子邸に同居することになった。他の歌手の同居人を混え、鬼気迫る晩餐の連夜。そして、遺産の一部を資金に武道館で大オペラを開催することになる。ある夜、血まみれの敏夫が房子の部屋に転がり込み、優しい手当てを受けていた。実は、房子は密輸組織のボスで、敏夫は自分を襲った連中のボスが彼女であることも知らなかった。数日後、兄妹は歌子の部屋から一千万円の札束を盗み、脱出を企でた。何故かゆめ子もついて来た。埋立地を走る三人。ロックグループの群れ。いつの間にかゆめ子の姿は消えていた。二人は持ち出した金で船を入手、それを「幸福号」と名付けた。三津子は富田から房子の実体を知らされる。幸福号の二人は密輸に賭けることにした。霧の中を進む幸福号。水上警察のランチも霧の中へ消えていく。税関では富田がイタリア亭に電話をしている。朝。ひろがる海と空。その溶けあったあたりを一そうの船がいく。白い船。それは、はたして幸福号か……。