「幸福とは、とときには立ち止まって考えねば」幸福(1981) Chuck Finleyさんの映画レビュー(感想・評価)
幸福とは、とときには立ち止まって考えねば
市川風、銀残しの画面のとおり、全編渋く、静かで、悲しい。私の中では忘れられない邦画の名作。
若い北刑事(永島敏行)の、最愛の人を喪ったと知った嗚咽のシーンは、40年経った今も夢のように覚えてます。
1982年か83年、シネマート新宿の前身の名画座で同級生と鑑賞。併映はたしか「トロン」(1982)と「アモーレの鐘」(1981)。当時若者たちの間で話題となった世界初の”コンピューター”映画をロードショーでは(料金が惜しくて)見逃し、最後のチャンスと銘打った名画座公開を見に行きました。
当時は洋画話題作のメインと、別の併映セットから小品を持ってきて2作品3作品上映する名画座が各地にあり、邦画2作品には全く期待していませんでした。「アモーレの鐘」の方は城戸真亜子が呆然と立っているシーン(何故かそれは覚えている)と腹立たしくつまらなかった印象のみでしたが、本作は結局トロンよりも衝撃を受け、若造のくせに泣いた記憶さえあります。
それが多作上映名画座の副次的な醍醐味(もちろん第一はコスパ)でしたが、1日がかりで挑む5作品上映館もあった浅草の映画街消滅を筆頭に、二十世紀の行きつけは殆どなくなってしまいました。
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