県警対組織暴力のレビュー・感想・評価
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【「仁義なき戦い」制作出演陣による警察ノンキャリア組とヤクザとの蜜月の崩壊を描いた物凄い熱気の作品。現代では、こういう作品はもう作れないよなあ。白石和彌監督位かなあ、作れそうなのは・・。】
■昭和30年代後半。倉島市での大原組と川手組の小競り合いの中、倉島署のベテラン刑事・久能(菅原文太)と、大原組の若衆頭・広谷(松方弘樹)は且つて殺しをした広谷の姿を見て久能が逃がした事から固い絆で結ばれていた。
そこへ、倉島署に県警のエリート警部補・海田(梅宮辰夫)が赴任してくる。海田はヤクザとの私的交際を禁じ、久能を捜査班から遠ざけようとする。
が、そんな状況の変化に気付いた広谷は、建屋に立てこもる事件を引き起こす。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・1992年の暴対法の施行後に、ヤクザが急速に勢いを失って行った事は、「ヤクザと家族 the family」でも描かれている通りである。
今作は、暴対法と言う言葉すらなかった時代に、警察組織がヤクザとの癒着関係を一切廃絶していく中で、その流れに取り残されたノンキャリアの警察とヤクザの哀れな終わりを物凄い熱量で描いた作品である。
・今作を観ると、全て物故者である菅原文太、松方弘樹、梅宮辰夫、と言う役者たちが発する熱量の凄さに驚くのである。
又、端役ながら川谷拓三なども、強烈なインパクトを残す作品でもある。
<今作の最終盤は、可なりほろ苦い。広谷を説得して手錠を掛けて外に連れ出す久能。だが、最早久能への信頼を失くしていた広谷は、咄嗟に銃を奪い海田を盾にするのだが、そんな彼を久能は銃で撃ち広谷は絶命するのである。
そして、海田は警察を辞め、大手企業に入り出世する一方で、久能は派出所勤務となり、雨の中、”誰かか指示した”暴走トラックに検問中に撥ねられて死亡するのである。
今作は、警察ノンキャリア組とヤクザとの蜜月の崩壊を描いた物凄い熱気の作品なのである。現代では、こういう作品はもう作れないよなあ・・。>
これは鋭くエグったね
この映画にはある意味 叙述トリックが使われている 警察と片方のヤクザとの関係だけが つぶさに描かれていて もう片方のグループとの関係があまり描かれていない これがもしも 推理小説 だったら どうしてだろうと そこんところを深く考えるのであるが ・・・警察と強い絆で結ばれているヤクザの話をうまく挿入されて思考回路が停止してしまうのである。 そして クライマックスが終わった後のシーンを見て 「やられた」と悔しがるのである
ヤクザ映画の歴史で言うと まず戦後間もないころに作られた 黒澤明の「酔いどれ天使」がある。その中で警察が機能しておらず 町の秩序 をヤクザが作っているということが 端的に描かれている。 それから 仁義なき戦いがあって 最初のうちは貧乏だった 警察に だんだん力がついててくると立場が強くなり、 やがて二者の関係が馴れ合い縺あいになる・・ というところが この映画の中で描かれている。 我々はこれらの映画を見てるので そこにまんまとはまるのである そしてこの映画ではその時代の終わりを描いている
ネタバレ注意
ここで 黒幕として動いているのはおそらく ゼネコンと深い関係にあるヤクザであろう。一部の ヤクザ組織が小さなヤクザからは想像できないほどデカくなり 今までヤクザの歴史になかったような行動を起こすようになった。 それが主人公たちには読めず、 翻弄されるという話だった。主人公のヤクザ・警察 サイドで描かれていて長い付き合いの中で絡み合っている主人公たちの心情がとてもよく伝わってきた。 そして最後にエグられる・・ 深作ヤクザ映画の集大成ともいえる作品だった。
癒着の果てに
DVDで鑑賞。
キャスト・スタッフへの絶大な信頼感がすごい。監督・深作欣二、脚本・笠原和夫、主演・菅原文太…まさに実録黄金トリオ。この3人が寄れば面白くないわけが無いのだ。
実際の事件たちをベースに、警察とやくざの爛れた癒着の実態を浮き彫りにしただけでなく、組織の中で生きる者が直面する不条理までも炙り出すと云う秀逸過ぎる名作だった。
組織に翻弄される菅原文太と松方弘樹の姿と彼らを取り巻く人間模様は、さながら社会の縮図である。警察もやくざも根本でやっていることはあまり変わらない。
権謀術数。抗えない階級社会。組織のセオリーにもがき苦しむ男たちのドラマが熱い。本作のタイトルには、えげつない皮肉がこめられているのではないかと思う。
やくざと癒着する刑事は悪いし、刑事を利用するやくざもまたしかり。それは分かっているのに、久能たちが追い詰められていく様は、観ていてめちゃくちゃ辛かった。
固い結束で結ばれたふたりに待っていた結末は、とても破滅的でエモーショナル。積み重ねられた絆の分、その悲しみは重みを増し、様々な感情が溢れ出して来た。
勝者となるのは状況を見抜いて上手く立ち働いた者、そしてそのおこぼれにちゃっかり預かった者と相場が決まっているだなんて。嗚呼、やるせない世の中だよ全く。
[以降の鑑賞記録]
2021/02/23:DVD
2024/10/09:Amazon Prime Video(東映オンデマンド)
※修正(2024/10/09)
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