劇場公開日 1968年2月17日

「こういう映画はもう作れないか。」黒部の太陽 talkieさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0こういう映画はもう作れないか。

2023年12月1日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

<映画のことば>
鹿島建設さん、(いまトンネル工事の障害になっている)破砕帯は必ず抜けますからね。(そのときのために当初に予算した)11億を使いきって、骨材を今のうちからドンドン作っといてください。
足りなければ、何億でも出します。

高度経済成長期の関西地方の電力需要を賄うため、関西電力が、その資本金の数倍の予算を注ぎ込んで取り組んだ「世紀の建設事業」―。それが、本作でのモチーフとなっている黒部第四ダム(本体工事、本作の主な題材となっているトンネル工事などの付帯工事)と承知しています。

作品自体も、これから高度成長期に突入しようとする日本経済の、いわば屋台骨を支えようとする大事業のその重厚感が半端なく、まるで画面から工事マンたちの気概が滲み出て来るように思われました。評論子には。

それだけに、高度成長を背景として、日本の「のびしろ」がたっぷりあったという当時と、経済のパイはそう大きくはならないことが眼に見えている令和の今とでは、時代背景がぜんせん違い、同じような素材を現代に求めることは、難しいようにも思われます。

そして、評論子が「こんな映画はもう作れない」というのは、別の言い方をすれば、CGやVFX全盛の令和の今に、こういうセット撮影や大道具・小道具の職人技でこれだけの臨場感ある作品を作る技術は、温存されいないのではないのだろうなぁ、という思いもあるからです。
(単なる評論子個人の慣れ親しんだ「古き良き時代」のノスタルジーであって、映画撮影の分野も含めて、技術が進歩することは当たり前のことで、古い技術が廃(すた)れることを、批判的に評価するものではありません。)

レンタル店の店頭でたまたま見かけて、それらのエピソードが脳裏に浮かび、「衝動買い」ならぬ「衝動借り」(笑)をしてしまった一本になります。
見終わってみたら、今度は、同じく「世紀の大事業」といわれた青函トンネルを題材とした、故・高倉健の出演作『海峡』が観たくなりました。
また映画を観る楽しみが広がり、嬉しくも思えた一本になりました。評論子には。

その意味では、充分に佳作と評することができる一本でした。評論子には。

(追記)
<映画のことば>
北川さん、土方に白い歯を見せたんじゃあ、トンネルは抜けませんぜ。
あんた達は「いつ崩れるか」「いつ崩れるか」…そんなことばっかり考えてっから、土方はへっぴり腰をしてやがるんですよ。
北川さん、土方ってやつはね、技師が大丈夫だと言やぁ、大丈夫なんですよ。
自信、自信ですよ、北川さん。

トンネルなどの工事現場は、実は歴とした身分制社会になります。「上命下服」・「上意下達」が絶対の世界ということです。
そして、その「身分」「地位」の違いが、ヘルメットの色やデザイン(ヘルメットに入る横線の幅や本数)の違いということになっている訳です。
トンネルなどの危険な現場では、指揮官(技術者)の指示に従って整然と作業が行われることが、その安全を確保するためには絶対に必要ですし、万一の退避の際も、指揮官(現場責任者)の命令下に整然と退避することが、無用な混乱を招かないということでは、もっとも迅速・安全な避難になるからです。
(自衛隊や警察、消防の階級章の星の数や横線の有無・幅や本数も同じこと)

何よりも経験がモノをいい、ヘルメットの色が違い、ヘルメットに入る横線の本数が違っても、学卒ほやほやの青二才の技術者は、百戦錬磨の職長(現場労務者の取り纏め役)に手玉にとられたりするような世界でもありますけれども。

上記の映画のことばは、職長が、異常出水で落ち込んでいる技師長(現場技師のトップ)にかけたことばになります。
身分(立場)の違いはあっても、危険な現場で働く者同士の人間模様を如実に浮き彫りにしていると思います。

そのことも、印象に残った一本になりました。評論子には。

talkie
talkieさんのコメント
2023年12月16日

満塁本塁打さん、いつもイイね&コメントありがとうございました。
いわゆる「石原プロ」として、映画もテレビ番組もたくさん作っていましたよね、彼は。歌手としても(そこそこ?)成功していたと記憶しています。マルチプレーヤーだったんですねぇ。
これからも、よろしくお願いします。

talkie
満塁本塁打さんのコメント
2023年12月7日

石原裕次郎さんが 渋い本格的重鎮俳優にグレードアップ と同時に 急速におっさん化した 作品でもありました。石原さんの容姿が気になって内容が入ってきませんでした。骨太 それは感じました。
他作へのイイねありがとうございました😊。【レンタルビデオ鑑賞です📼】

満塁本塁打