「最後の盛り上げ方は、さすがビリー・ワイルダーだと思った」アパートの鍵貸します ジョニーデブさんの映画レビュー(感想・評価)
最後の盛り上げ方は、さすがビリー・ワイルダーだと思った
監督は「昼下りの情事」や「麗しのサブリナ」のビリー・ワイルダーで、やはり最後の盛り上げ方が実にうまい。
コメディタッチの展開でテンポよく進み、それなりに楽しんで見ていたが、結局はジャック・レモンとシャーリー・マクレーンは一緒になるんだろうなと思っていた。ちょっと平凡すぎるがそれも悪くはないと。
ところがラストに二転三転するところがこの映画を名作にした所以ではないかと思う。
部長が妻と離婚して、彼女と一緒になろうとする(一転)。これで終わっても悪くないと思った。ジャック・レモンのほうは寂しく一人アパートを出て行くラストシーンとか。
部長と彼女のクリスマスパーティーのシーンでの会話で、ジャック・レモンが彼女だけはアパートに泊めたくないと断り、それが原因で会社を辞めた事がわかって、彼女はジャック・レモンのほうに恋心が移る(二転)。この展開は時々あるパターン。
ところが、彼女が彼のアパートに行った時に銃声のような音を聞いて、てっきり彼が自殺したのではないかと彼女は思った(私も)。この悲劇のエンディングもある意味面白いかなとも思った(三転)。チャップリンの「ライムライト」のように、喜劇の体裁をして悲劇を描いたのではないかと。
しかし銃ではなく、シャンパンの栓を抜く音だったことがわかり、二人はトランプの続きをやり、本当のハッピーエンドとなる(結果的に四転)。
一転目、三転目で終わっていたとしても、工夫次第で名作になっていたと思う。
あと、私だけの感想かもしれないが、妻と離婚して彼女と(本気で?)結婚しようとした部長は、結局一人ぼっちになってしまってちょっとかわいそう。この映画のラストのように主人公2人の幸せの影に、寂しい思いをする人がいるという映画が時々あり、私はその人のことが気になってしまうのである。例えば、「麗しのサブリナ」のウィリアム・ホールデン、「君に届け」の桐谷美玲、「あと1センチの恋」のべサニーや、「きみに読む物語」でアリーと再会するまでノアの家に通っていた未亡人等。